たれ耳、立ち耳
俗に、たれ耳の犬のほうが、立ち耳の犬に比べて、耳のトラブルが多いと言われます。たれている耳が、ちょうど「ふた」のように覆いかぶさっているため、耳の中が蒸れやすいというわけですね。
けれども、立ち耳、半立ちの犬も油断はできません。通気性が良いとは言え、体の免疫反応や、持って生まれた体質、また、菌が繁殖してしまうのには様々な要因があります。
耳掃除を嫌がらない犬
耳掃除を嫌がる理由を見る前に、それを嫌がらない犬もいるのはなぜなのか。これを知る必要があります。それは、耳に触れられた際に、痛いとか、怖い思いをしたことがないからです。
幼いころから耳そのものに触れられることに抵抗のない犬は、飼い主さんがこまめに外耳の様子をチェックすることができます。そうすると、耳の中で起きているトラブルを早期に発見することができ、すぐに対処できるので、大事にならなくて済みます。
また、ご家庭での正しい耳掃除の仕方に合わせ、動物病院やトリミングサロンでの耳掃除や処置の方法に対して犬が怖い思いをしなければ、耳を触られることを極端に嫌がることもなく、耳のコンディションを良好に保つことができるでしょう。
耳掃除を嫌がる理由3つ
耳掃除に抵抗のある犬、ちょっと嫌がる犬、全力で拒否する犬、耳を触るだけで咬みついてしまうぐらい嫌がる犬。反応はそれぞれですが、いずれの場合も、原因は大きく分けて3つあります。
1. 無理矢理
これは飼い主さんの技術の問題です。「うちの子、耳掃除が本当に嫌で」という前に、耳掃除のやり方を見直してみましょう。耳掃除の際、こんなやり方をしていませんか?
- 逃げる犬を追いかけて捕まえる
- 二人かがりで押さえつける
- 耳を引っ張りながらする
- 恐々しながらする
- きちんと耳の中を確認せず、勢いでやる
- グリグリと、とにかくしつこくやる
- 叱りながらやる
こうした無理やりな方法では、犬が耳掃除を嫌がっても仕方がありません。
2. 痛い
耳の中に炎症がある場合は、耳掃除に使用する洗浄液がしみるために、痛さを感じることがあります。また、耳の中のトラブルにより赤く腫れていたり、痒さのために犬が掻き傷を作ってしまった、というときには、耳掃除の前の、耳に触られる段階で、すでに痛みを感じてしまいます。
こうした場合は、ご家庭の耳掃除で治癒できるものではないことがほとんどです。動物病院を受診し、検査が必要です。腫れや痛みの原因を特定してもらい、それに最適な内服薬や外用薬を処方してもらいましょう。
3. 自己流
耳掃除の仕方については、雑誌やネット記事などで手軽に知ることができます。よく目にするのは、こうした方法ではないでしょうか。
「はじめに、耳の中の毛を抜き、次に耳の奥に市販の耳洗浄液(イヤークリーナー)を入れ、耳の根元を外側からぐちゅぐちゅとモミます。そうすると、耳の奥から汚れ成分が出てきますから、これをふき取ります」
しかしこのやり方は、動物病院やトリミングサロンなどで行われる、いわばプロの技術であり、経験を積んだ玄人向けのものと捉えていただいた方がいいかもしれません。
耳の中の毛を抜く場合は、一回に抜く毛量の見極め、皮膚を傷付けない技術がマストです。さらに現在では、これまでのセオリーであった「耳の中の毛を抜く」ことに対して、「耳の毛を抜くことで生じるリスクもあるので、抜かない方がいいケースもある」といった考えを持つ獣医師もいます。
ご家庭でのケアは、かかりつけの獣医師に相談をするのが大事です。どの洗浄液を使って、どの程度まで行うのか。やり方をしっかり聞いたうえで行うのがベストと言えます。
まとめ
耳掃除と言っても、ケアと治療は違います。ご家庭でできる耳掃除の基本はケアにあたりますから、毎日の習慣として、まずは耳にさわることに抵抗を持つことのないよう、スキンシップを念入りにしましょう。
体をなでるように耳もなでる、めくる、においを嗅ぐ、観察する。こんなことをセットで行っていくと、いつもと違う耳のトラブルをいち早くキャッチできて、早期治癒につながりますよ。