あなただけではない
この記事を読まれている方の多くは、成犬になってもウンチを食べてしまう犬の飼い主さではないでしょうか。「子犬ならわかる。シニア犬なら仕方がない。でも、成犬真っ盛りなのに、どうしてやめてくれないの!?」と、お嘆きの声が聞こえてくるようです。
はじめに申し上げておきたいのは、食糞で悩んでいる方は、あなただけではありません。他にも同じお悩みをお持ちの方がたくさんいる、ということです。
わたくしが訓練の世界に入り、もうすぐ30年が経とうとしています。その間、様々な犬の悩みに直面してきましたが、成犬になっても食糞が直らないというのは、ここ十数年くらいの間に増えてきた悩みです。
それには、飼い方、運動、ドッグフードの品質、生体販売の方法など、犬たちを取り巻く環境が様変わりしたことが関係していると思います。食糞をする飼い主さんとしては、どうしてうちの犬だけ…と、ショックを受けたり、人知れず胸を痛めていることでしょう。
でも、あなただけではありません。人には恥ずかしくて言えないけど、うちも食糞します。と、お悩みの方が他にもいらっしゃいます。
食糞の心理3つ
ここからは、成犬になっても食糞をしてしまう犬の心理について、3つのパターンをお送りします。
1. 叱られたくない
子犬時代に食糞をしてしまう理由は、好奇心から、というケースがほとんどではないでしょうか。子犬は食べ物とそうでない物の見分けがつきにくいですし、なんでも口にしたいという欲求があります。
この時期にきつく、強く、飼い主さんから叱られてしまうと、今度は飼い主さんの見ていないところで食べるようになります。小さい頃についてしまった「うんちを食べているところを見られると、叱られる」という心理が働き、成犬になっても隠れて食糞をしてしまう。というわけです。
このタイプは飼い主さんの外出中に食べるというパターンが多く、飼い主さんが帰宅すると、トイレシーツの上にうんちの形跡だけがあり、犬の口の匂いを嗅いでみると、うんちの匂いがするといったものです。
2. 注目を浴びたい
飼い主さんからかまってもらいたい、注目されたい、といった心理もあります。飼い主さんの目の前で食べてしまう、という犬はこのタイプが多いです。
犬がウンチを食べるシーンを冷静に見られる人は少ないですから、どうしても「わ~!食べちゃダメ!」「もう~!片づけて、歯ブラシしなきゃ!」といった騒ぎになりがちです。
そうなると、この心理から食糞をした犬にとっては、しめたもの。目的達成という経験を積ませてしまったことになります。ですからこの場合は、騒がずに、注目せずに、淡々と処理をするのがキーです。
3. 母性本能
多頭飼いをしているご家庭に多いのはこのパターンです。母犬は、子犬のおしっこやウンチを舐めて食べ、子犬を清潔にしてあげたいという本能を持っています。ですからどの犬も、子犬時代には母犬に排泄物を食べてもらったという記憶があります。
多頭飼いで、同居犬のウンチを食べるというケースでは、この心理が見て取れます。この場合は、トイレを共有させないほうが良くそれぞれのサークルにトイレを配置します。
ウンチをするためにサークルに入ったら扉をしめ、他の犬が食べる前に、ウンチを片付けてしまうことが得策と言えます。
やめさせる方法
食糞のお悩みに、特効薬はありません。ですが、いくつかの方法がありますのでご紹介します。これらを試してみて、効かなかったら別のやり方を試す。また、一回で効果が見られるわけではありませんから、何度も繰り返して続けてみる。また、組み合わせて行うのもいいでしょう。
≪例≫
- ウンチの時間を毎日何時ごろ、と、定着させる
- 散歩の際に必ずウンチをさせるようにリズムをつくる
(ウンチを食べる確率は、野外のほうが室内に比べて少ないです)
- 運動を取り入れた散歩で、ストレスを発散させる
- たくさん遊び、退屈な時間を減らす
- ウンチをしたら、苦み成分のある専用スプレーを振りかける
- ウンチをしたら、すぐに取る
- ドッグフードを変える
- 手作り食の場合は、消化の良いものにする
- 犬をよく観察する
これらを続け、食べなかったらたくさんほめる。ということを繰り返してください。
まとめ
最後に、食糞の悪影響についてもお伝えします。犬の体内に寄生虫がいる場合は、排出した寄生虫を再び体内に取り込んでしまう可能性があります。ただ、食糞でダメージが大きいのは飼い主さんのメンタルかもしれません。
こう言ってしまうと元も子もない話ですが、ある程度、血統的なものも関係しています。悩みすぎるのは犬も飼い主さんもつらいですから、できる限りの方法を試してみて、少しずつ改善していきましょう。応援しています。