はじめに
本題に入る前にお伝えしたいお話があります。それは、ある程度成犬になると、子犬時代のキャッキャとしたじゃれつきは、さほど見られなくなるということ。これには個体差があり、体も精神も早く落ち着く犬と、いつまでも子犬のような無邪気さを持つ犬がいます。
今回のテーマは「飼い主を避ける理由」についてですが、避けられているのではなく、もしかすると、必要以上にべたべたしないという、その犬にとってのベストな距離を取っているだけかもしれません。
愛犬が飼い主を避ける3つの理由
この問題に対する捉え方を踏まえた上で、ここからは、実際の例と理由を見ていきましょう。
1. 呼んでも来ない
「〇〇ちゃん、おいで~♪」と言っても、なかなか来なくて、ひどいときには逃げます!という飼い主さんがいます。そうした方は、例えば「おいで」のあとに、苦手な爪切りをする。ケージに入れられてお留守番。などの、犬にとって嫌なことをしていないでしょうか。
犬は、学習する生きものですから、「おいで」と呼ばれて駈け寄ったら嫌なことがあった。というパターンを繰り返すうちに、それを察知して、おいでの後には、嫌なことが待っている、という気持ちがすりこまれていきます。
対処法としては、このパターンが犬の脳に深く刻まれてしまう前に、「おいで」のリセットトレーニングを集中して行います。リセットというのは、記憶の上書きにあたる行為ですが、おいで、の後には必ずいいことがあるよ。ご褒美やほめてもらえるよ。と、教え直すことで、修正ができます。
2. 反応が薄い
おすわり、まて、お手…。前はできていたのに、最近はそう命令しても、反応が薄く、スーッと避けるように自分のベッドに帰ってしまいます。無視されているみたいで悩んでいます。という飼い主さんもいます。
犬は、人からの指示と、自分への報酬を関連付けて覚えていきます。教え始めの時期を思い出してみるとよく分かるように、最初におすわり、を教えたときには、できたらほめる、というやり方をしていませんでしたか。
でも、それができるようになり、いつのまにか指示に従っても、ほめてくれることが少なくなってはいないでしょうか。犬にとっては、報酬がない状態ですから、指示に従ううまみ、面白さ、手ごたえがありません。要するに、つまらないのです。
人によってはこうした状態を「犬の反抗期」と呼びますが、わたくしはそうは思いません。単に、飼い主さんの「もうできるのだから今更ほめなくても、当たり前でしょう」といった態度が、指示に対する反応を薄くさせます。
この対処法については、基本に返ることが第一。指示に従ったらほめる。ニコッとする。オヤツをあげる。こんな報酬と指示の関係を、もう一度思い出させる必要があります。また、ややマンネリ化しているという場合には、新しいトリック(芸)を教えるのも良い手です。
例えば「前足クロス」なども教えやすくかわいいですし、「ベルチン」などは、ホテルのフロントにあるようなベルを、犬が前足で押すことによって、チンと音を出させるようなトリックがあります。
3. 調子が悪い
それまでとても元気のよかった犬が、突然飼い主さんを避けたり、ふさぎ込むような状態であるなら、健康上の理由も視野に入れて考えましょう。まだ若い犬でも、遺伝性の病気や、飼い主さんの知らないところで起きたケガ、神経へのダメージなど、なにかが犬の体内で起きていることがあります。
若いからといって過信は禁物。いつも以上に犬の様子を見てください。食欲、便、皮膚、触られていたがるところはないか。一過性のものであれば良いのですが、実は長引く持病の初期症状だった、ということもあります。
まとめ
愛犬が飼い主を避ける、3つの理由と対処法についてお送りしてきました。避けている、と感じるのは人だけで、犬には犬側の別の理由が存在することも、忘れずに暮らしていきたいですね。