体をぶつけるのは、どんなとき?
この様子は、飼い主さんがソファや座椅子でくつろいでいるとき。また、帰宅時や、預け先に迎えに行ったときなどによく見られる光景です。
3つの気持ち
さて、犬が飼い主に、体をぶつけてくる気持ち、感情にはどんなものがあるのでしょうか。これについて、考えられる理由を3つご紹介します。
1. 嬉しさで興奮が抑えきれない
嬉しくて、嬉しくて、もう自分を抑えきれない!!!という感情の高ぶりから、体をぶつけてくることがあります。大型犬ではよく分かりやすいのですが、体をくねくねとさせ、身をよじり、耳を後方に倒しながら、丸まるようになって、嬉しさを体全体に表しています。
この状態で、飼い主さんの帰宅時や、久しぶりに会った大好きな人に、体をぶつけていきます。本当は飛びつきたいけれども、飛びつくことはマナーとして禁止と教えられているため、それを守って自分自身を抑えている。でも、嬉しい気持ちを隠し切れない。そんな奥ゆかしさを持った、優しい犬によく見られる行動とも言えます。
2. 不安、心細い、恐怖
突然の大きな物音や、苦手なタイプの人や犬が近づいてきた。また、カミナリが鳴りだしたり、地震が起きた時もそうですね。犬は不安、心細さ、恐怖を感じると、飼い主さんに体をもたれかけるようにします。その場合はたいてい、お尻や背中をくっつけてくることが多いでしょう。
この行動は犬が持った本能です。まだ野生だった時代に、群れの仲間同士が互いに背を寄せ合って眠ることで、外敵から身を守るようにしていた習性の名残りとも言えます。不安や心細さに包まれたときに、体をだれかにくっつけていたい、という気持ち。これは私たち人でもよくあることですから、理解できますね。特にお子様に置き換えると、なおさらその気持ちがわかるでしょう。
3. 病気の可能性も?
上記1、2とは別に、犬が病気になってしまったため、という場合もあります。これは、体をぶつけるというよりも、バランスが取りにくいために「体がぶつかってしまう」という言い方が適しているかもしれません。
体の平衡感覚を崩し、うまく歩行ができずにぶつかってしまうケースでは、このような病気が考えられます。
≪例≫
- 関節炎
- 脳腫瘍
- 認知症
- 白内障
などなど
また、加齢やなんらかのアクシデントにより、視力が低下した場合には、人や物との距離感覚がうまくつかめないこともあります。本人としてはドスンと体をぶつけるつもりがないのですから、このような様子が見られたら、叱ったり押しのけたりせずに、体の状態を念入りに見てあげる必要があります。
まとめ
犬が体をぶつけてくる意味、気持ち、感情についてお話してまいりました。この行動について「ストレス」や、「気を引きたいだけ」とおっしゃる方もいます。しかし、わたくしはそうとは思いません。
大型犬はわりと自身の体のサイズについて理解していないこともあり、飼い主さんの前ではいつも子犬のころの気分で、つい寄りかかってしまうようなところがあります。犬が体をぶつける行動。これは、病気以外では、犬からの愛情表現と捉えてもよろしいのではないでしょうか。
頼りがいのある飼い主さんだからこそ、不安や嬉しさといった心の揺れをぶつけてくる。そんな体の表現ができる、素直な犬の行動。ときにわたくしたち人も、犬のように素直な感情表現ができたらいいのに、と思うこともあります。