犬と子供が一緒に生活することで与えてくれる影響
赤ちゃんと犬をいっしょにしておいても大丈夫
私の実家には3頭の雑種犬がいました。
結婚してからも実家から徒歩数分のアパートに住んでいたので、毎日犬に会いに行っていました。
長男の妊娠中も変わらず通って、お散歩したり一緒にお昼寝したり、犬と暮らしてきた私にとって、犬と触れ合う時間が一番心も体もいい状態でいられる時間でした。
妊娠して、感染症などの心配をされる方もいるようですが、私の通っていた病院では、『現代の日本で、妊婦に飼い犬や猫が原因で妊婦や乳児に感染する病気はまずないので心配ない』という指導をしていました。
なにより精神的に安定したゆったりした気分ですごすことが大切なので、犬と暮らしていることは妊婦にとっても良いことなのです。
犬は赤ちゃんがわかる
長男が生れてしばらくは実家で犬と暮らしました。
病院から帰った時、3頭の犬たちはとにかく赤ちゃんの匂いを確認?し、興味津々でしばらくはそばでうろうろしていましたが、ワンワンほえたりすることなく、そーっと順番に匂いを嗅いでいました。
私は長男を母乳で育てたため、布団に寝かせていたのですが、犬たちで長男を囲むようにくっついて一緒に寝てくれていました。
そのうちの出産経験のある母犬は、赤ちゃんがおっぱいの匂いがするからでしょうか、特にぴったりとくっついて、抱えるような格好で寝ていました。
そして、たらいで沐浴させるときも周りに集まって、お風呂上りにぺろぺろ舐めてくれたりしていました。
犬は確実に長男を幼い弱い生物だと認識していたのだと思います。私の匂いとおっぱいの匂いで、『これは赤ちゃんだ』とわかっていて、よりそってくれたのだと思います。
やがてお座りしてハイハイできるようになると、犬の後をくっついてハイハイし、四足で歩いては、鼻を〝フン!〟と鳴らしたり、ワンワン!といっしょに吠えたりと、まねっこが上手でしたので、そういうところも犬たちに受け入れられていたようです。
次男が生れた時も同じように接してくれた実家の犬たちでしたが、その頃はもう老犬で、次男が3歳の時に最後の一匹も天国へ行ってしまいました。
それから4年後、わが家も一軒家に引っ越したので再びワンコとの生活を家族みんなが望み、迎えた犬が今も一緒に暮らしているワンコたちです。
常に身近に犬がいた子育ての中で、私はいろいろと犬に感謝をしています。
身体的にも精神的にも、犬がいたからこそと思える良い影響について書いていきたいと思います。
元気に丈夫に育ったこと
免疫力がつく
身体的な面ではまず、免疫力が強いのか、生後6か月頃母親からの免疫がなくなってくる頃にほとんどの子どもがかかる、突発性発疹にも二人ともかからず、熱を出しても症状がひどくなることがほとんどありませんでした。
うちの子の関してはもともとの体質かもしれませんが、実は一歳までに家畜や動物のフンに含まれる〝エンドキシン〟という成分が空気の中に浮遊している状態におくことで、免疫システムを熟成させる効果があることが科学的に解っているのだそうです。
健康面だけでなく、常に犬が身近にいることで遊びの種類も変わってきます。
散歩で外へ出ることで自然と親しむ心が芽生え、外遊びが多くなります。
規則正しい生活リズムがつきやすい
夏休みだろうが、お正月だろうが、ワンコはお散歩が一番の楽しみですから、自然と子どもたちも規則正しく生活するようになります。
好き嫌いなく良く食べる
食いしん坊のワンコたちがいたからか、好き嫌いなくきれいに食べる子供たちでした。
よく食べるワンコたちも、ワンコとのお散歩も、自然と健康な食欲を促すのでしょう。
夕方も一緒にお散歩するので、よけいな間食をあまりとらないこともいいことですね。
すべての命を愛しく感じる心が育ったこと
生きていることを理解する力
生き物が生きていることがわかる、というのは一見当たり前のことですが実はそうでもないのです。
頭ではもちろん解ってるでしょう、しかし残念ながらここ十数年の子どもたちを見ていると、教育界でも問題になっていますが、あまりに幼いころからのゲームの影響で、現実の世界でも簡単にやり直しができると勘違いして、命を軽く認識している傾向があります。
他人や他種族の生物だけでなく、自分自身の命に対しても同じです。
うちの子どもたちを育ててくれた実家のワンコたちは当然年をとり、だんだん動きも遅くなり入院したこともありました。
彼らはずっとそばにいて、いつも触ると毛並みを感じ、体は暖かく、そして静かに上下に動く呼吸を感じる。
顔や手をペロペロ舐めてくれる舌の温度と感触、寄りかかったり、飛びついた時の重さ、そのすべてが死んでしまったらなくなってしまうのです。
この事実を受け止めることが、何よりも深く、命とは、生きていることはどういうことなのかを理解した瞬間だったと思います。
生き物と暮らすとはそういうことなのです。
次男が中学生になったとき、あるクラスメイトが冗談で自分は生きていることがめんどくさいみたいなことを言って、ちょっとクラス内で乱暴な態度をしたらしいのです。
その時ほとんどの生徒は乱暴な態度そのものに腹を立て、止めたり怒ったりした中で息子はその子の〝生きている事がめんどくさい〟という言葉にショックを受けて、家に帰ってきて泣きました。
今の子どもたちの言葉は乱暴で、遊んでいる中でも、倒すぞとか、消えろ、とか、死ねとか、そんな言葉が飛んでいる中で、『そんな楽しくない言葉、使わないほうがいいよね』と思えるのは生きていることが楽しいからだと思うと、これも犬が教えてくれたことだと感謝するのです。
相手の気持ちになって考えるようになる
自分自身を大事にできるようになるとともに、自分以外の生物に対しても同じように大切なものだと思えるようになります。
そして、相手の感情を心でキャッチしようとするアンテナが働くようになります。
これは、犬と暮らしている子どもたちの一番のすごいところではないでしょうか?
傷ついたり、悲しんでいたり、寂しかったりという心の色と、はしゃいだり、うかれたり笑ったりする時の心の色を、犬は実によく理解し、時には一緒にじゃれあい、時にはそっと体をくっつけてただただ、じっとそばにいてくれる・・・。
言葉で話さなくても、相手の気持ちや感情を肌で感じて静かに一緒に過ごしてくれる犬の非言語的コミュニケーションは、子どもたちの人に対する思いやりを育ててくれるのです。
あいさつ上手になる
犬がいると、思った以上に知り合いが増えます。
本来なら知らない人でも、犬を飼っているという共通点でお散歩仲間やドッグラン仲間など、お散歩には人も犬も出会いがたくさん待っています。
犬を連れている人は年齢も立場もさまざま、犬のお散歩に行くことで、目上の人や初対面の人と挨拶することも自然と身に付きます。
落ち着いた子に育つ
元気な犬と一緒にそだって落ち着いた子?と思われるかもしれませんが、本来犬はとても穏やかで落ち着いている動物です。
遊ぶときは遊びますが一日中走っているわけではありません。
お散歩や庭遊びに満足すればたいてい、でれーんと寝ています。
そして大きな声や、音、キンキンした鋭い音は嫌いですので、必要以上に奇声をあげて興奮したり、ヒステリックな鳴き声には犬は必死でなだめてやめさせようとします。
これは大人の怒った声にも同じで、子どもを大きな声で叱ると犬が飛んできて間に割って入り、なだめてくれます。
だから犬のいる家庭ではこどももヒステリックにわがまま言えないし、親も怒鳴りつけたいできないのです。
そしてあまりにも犬が必死なので、両方の気持ちが犬のほうへ向いてしまい、暖かい気持ちで収まってしまうのです。
情緒豊かになる
犬との暮らしは、ほかでは得られないたくさんのエッセンスにあふれていますが、日々のお散歩で得られる、季節の移り変わりの中で情緒豊かな心も育まれていきます。
そしてそんなお散歩中に思わぬ発見をすることもあります。
公園や散歩道の街路樹や、道端の小さな草花、鳥たち、カエルやヘビ、トカゲ、ヤモリ、木の実。空の雲、風の匂い、それらすべての発見を犬と共有し、そしてそれを家族と共有する。
そんな、一つ一つは小さいな出来事ですが、それを大切に思うことで情緒が育ち、それは自分が自分として生きることを嬉しいと思う事に繫がるのだと思います。
犬との暮らしが良いものになるために
犬を迎えるタイミング
犬との暮らしが子どもの成長に良い影響を与えるということは述べてきましたが、わが家の場合のように、すでに落ち着いた成犬の状態で赤ちゃんがあとから来たのであれば、先に書いたように犬と人間の信頼関係ができていれば何も心配することはありません。
ただ、赤ちゃんが生れるからと言って犬を急にケージに閉じ込めたり、部屋や生活環境を分けるような不自然なことは犬にとってストレスになるだけですので、絶対に避けてほしいものです。
また、新しく犬を迎えたいと思っているなら、子どもがきちんと話を理解できる年齢になってからにしたほうが無難です。
子どもの素早い動きや急に大きな声をだすなどの行動が犬を育てるには不向きで、犬のほうが落ち着きのない犬になってしまいます。
犬とのコミュニケーションをもとめるなら、落ち着いた大人の犬の知り合いを探して犬と接するマナーをおぼえさせましょう。
そのうえで環境を整えてから犬を迎えると、その後の子どもの成長にもきっと良い影響を与えてくれることでしょう。
成犬を家族に迎える選択
子どものいる家庭で犬を迎える場合、仔犬よりもむしろ成犬を迎えるほうがむいています。
仔犬を育てるのは人間のあかちゃんを育てるのと同じですから、よほど家族の協力と団結がないと、もしうまくいかなかった場合、不幸になるのは犬のほうです。
保健所などに持ち込まれる理由には、『子どもが生まれるから犬を家族に反対された』というのもあるそうですから。
成犬は性質も大きさも決まっていますから、自分の家族の環境に合う犬の大きさや性格をよく考えて、保護施設などから迎えるのが一番良いといえるでしょう。
健康上のチェックや避妊、去勢手術、マイクロチップなども済ませて譲渡となることがほとんどですし、お散歩の練習などもさせてくれるところが多いです。
これから迎える犬を家族の一員として責任を持つという意味でも、お子さんと一緒に保護犬を迎える事は良いことだと思います。
わが家も息子たちが中3、小1の時、実家の犬が亡くなってから4年ぶりくらいに犬を迎えることになった時、今どき捨て犬というものが存在していること自体知りませんでした。
しかしちょっと調べたら、驚くほどの数の捨てられた犬たちがセンターで処分されている事実を知りました。
犬を飼う前に犬を飼うということはどういうことか、たくさん話をしてボランティア団体から迎えました。
まとめ
犬も幸せな生活を送れること
センターにいる犬を捨てた人の中には、子どものために犬を飼ったという人もきっといたことでしょう。
犬は家族を選べません。それなのに愛情を注いでくれる心の美しい動物です。
そして私たち人間よりもずっと我慢強く、礼儀正しいのです。
人は親から離されて不安そうに震えている仔犬を見ても、黄色い声でかわいいーと言って、怖がっているのに上から覗き込んでムギューっとしたりしますが、犬はしょんぼりしている子どもにはいきなり飛びついたりせず、そーっと近寄って慰めてくれます。
自由に歩き回れないのに、楽しそうにお散歩してくれます。
自分の置かれた環境を受け入れて、幸せに暮らそうとする本能みたいなものを感じます。
だからこそ、子どもと犬の関係を考えるとき、犬が子どもと同じように幸せで愛されていることがなにより大事なのです。
- 庭先や玄関につないで自由に動き回れないストレスをあたえないこと。
- 好きな時間に好きな場所でお昼寝できる環境を作ってあげること
- 寝る時も家族と隔離しないこと
- ゲージやクレートに閉じ込めないこと
- 大声でしつけないこと
- 頻繁にシャンプーや爪切りなどをしないこと
つまり、犬はもともと自分で学習できる動物ですから、ちゃんと尊重して接していれば子どもにたいしては良い影響が期待されます。
ですが、犬自体がストレスに満ちた生活をしていると、うまくいかないことが出てくるということです。
お散歩で短くリードをもって、びしっと横に着けて、草の匂いも嗅がせずに歩いているのでは、人も犬も楽しめませんし、季節の変わり目にも感動できませんよね?
のんびりゆったりした、おおらかな気持ちで暮らすことが、犬と子どものより良い関係を築く条件だといえるでしょう。
幸せなワンコライフで育つ子供が、たくさん増えることを願います。