気持ちはしぐさに現れる
「目は口ほどにものを言う」。これは、相手のことを思っていれば口には出さなくても眼差しだけで思いは伝わる。 また、あからさまに言わなくても目には感情が表れる。といった意味の慣用句です。
この例え、実は人だけではなく犬にも共通した表現でもあるようです。犬はしゃべれませんから特に感情がしぐさに出やすいとされています。さて、今回のテーマである「犬が叱られている最中に上目遣いをしてくる理由」について、ここからは犬の心理の具体例をいっしょに見ていきたいと思います。
1.緊張
ズバリ、犬が緊張している心理状態です。犬は初めて会う人や、初めて見るものに対して、上目遣いをすることが多いのです。これは緊張しているため、相手をじっと見つめることでよく観察しようとしているからなのです。
また、犬同士の世界では下位の犬が上位の犬に対してとるしぐさのひとつと言われ、犬にとって絶対的な存在に対して上目遣いをすることがあります。このことから、犬は叱られているとき、相手に対して緊張している心理状態から上目遣いになるというのが分かりますね。
2.不安
叱る飼主さんの様子を前に、犬はどんな気持ちで飼主さんを見ているのでしょうか。犬は人の話す言葉の持つ意味や内容までは理解できませんが、人の発する感情の揺らぎや空気を読む力に長けていると言われています。
叱る理由は何にせよ、飼主さんの怒りをはらんだ感情に対し犬は不安を覚えます。それもそのはず。大好きで信頼している飼主さんがただならぬ気配を醸し出しているのですから、不安になるのは当然ですね。
犬は不安を感じると体全体が強張ってしまいますから、目だけが相手をみるような表情になり、結果として上目遣いになってしまうといったわけです。他にも、他人が突然なでようとしたり、嫌なこと(シャンプーや爪切りなど)が起こると感じた場合にも、不安な気持ちから上目遣いをするケースが見られます。
体の構造からの上目遣い
時に人は、犬を擬人化してしまいがちです。例えばアニメなどで良く見かける人の感情表現として、小さな子供が親に叱られている場面では子供がグッと顎を引き、半べそをかきながら上目遣いで親の機嫌を伺う、といったシーンがしばしばあるかと思います。
私たち愛犬家は、こうした人の子のしぐさを犬にも当てはめて考えてしまう傾向にあるようです。でも、犬の場合は体の構造上から上目遣いになる場合も。と、いうのは、イングリッシュコッカースパニエルやブルドッグ、バセットハウンドなどに代表されるような、もともと目が垂れているようにな造作を持った犬種によく見られるのですが、目の付き方により、あたかも上目遣いをしているかのように見えてしまうのです。
また、眼球が突出気味な作りを持つパグやアメリカンコッカースパニエル、シーズーなども、そうした上目遣いをしているように見えますから、いつもの愛犬の表情を把握しておき、変化を見極められるようにしましょう。
まとめ
冒頭の「目は口ほどにモノを言う」という慣用句の解説には、実は続きがまだあります。それは、「言葉で偽りごまかしていても、目を見ればその真偽がわかるということ」。犬は人のようにしゃべれませんから、嘘で体裁を取り繕うようなことや、忖度もしません。
だからこそ止む負えず犬をしかるときは、一方的に感情の赴くまま犬に怒りをぶつける叱り方ではなく、心の目でしっかりと理由や気持ちに思いをはせる必要があるのではないでしょうか。必要以上に不安や緊張を与えてしまうような叱り方は避け、感情を酌み交わしながら信頼関係を築いていきたいですね。