ダックスフンドと椎間板ヘルニア
純血種の犬では、それぞれの犬種が罹りやすい病気があることが注意事項としてよく取り上げられます。
胴長体型のダックスフンドでは、椎間板ヘルニアがその代表的なものです。
ダックスフンドの約5分の1は椎間板ヘルニアの影響を受けるとも言われています。
椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、何らかの原因で突出して脊髄(背骨の中を通っている太い神経)を圧迫することで起こる病気で、痛みや四肢の麻痺などの症状が見られます。
遺伝的な要素が強い疾患なので、繁殖に使う個体は慎重に選ぶことが、疾患を持つ犬の誕生を回避するためにとても重要です。
この度、デンマークのコペンハーゲン大学の研究者が、ダックスフンドの被毛のタイプによる椎間板ヘルニア発生率と、発症リスクを予測する2つの検査方法の精度の比較をリサーチし発表しました。
被毛のタイプで発症率に差はあるか?
2014年に、研究者はダックスフンドの被毛のタイプによって椎間板ヘルニアの発症率に違いがあるかどうかを調査しました。
デンマークのケネルクラブに登録されている、2002〜2004年に生まれたダックスフンドの飼い主のうち、犬の被毛のタイプ別にスムース236人、ロング254人、ワイヤー267人に質問票を送付しました。
質問は椎間板ヘルニアに関するもので、腰痛のサインはあるか、歩行やジャンプに支障はあるか、獣医師から椎間板ヘルニアと診断されているか、などが設定されていました。
回答に基づいて「椎間板ヘルニアの徴候なし」「椎間板ヘルニアと診断済み」「診断はないが徴候がある」の3つに分類されました。
調査の結果、椎間板ヘルニアと診断済みまたは徴候ありの割合は以下の通りでした。
- 全ての被毛タイプ 18%
- スムース 22%
- ロング 17%
- ワイヤー 16%
以上から被毛のタイプによる発症率は有意な違いは見られませんでした。
遺伝のリスクを回避するための検査はレントゲンかDNA検査か
椎間板ヘルニアは、脊椎の骨の間のクッションである椎間板の核の変化と石灰化から始まります。
石灰化が発症する傾向は遺伝性で、石灰化が多いほど椎間板ヘルニアを発症するリスクが高くなります。
椎間板の石灰化は、レントゲン検査で確認してリスクを推定することができます。
石灰化のレベルは数値が設定されており、石灰化レベル5以上の犬は5未満の犬と比較すると、発症リスクが14倍になるため繁殖から除外されます。
現在デンマークでは、ダックスフンドの繁殖に使用する個体を選択する際には、レントゲン撮影で石灰化レベルを検査する方法が最も信頼できるとされています。
繁殖に使用する個体を選ぶ検査と言えば、DNA検査が頭に浮かびます。
先ごろ、椎間板ヘルニアのリスクに関連する遺伝上の突然変異が発見されました。それぞれの個体に、この突然変異があるかどうかを調べるDNA検査が提供されています。
しかし、このDNA検査でわかる突然変異と石灰化のレベル数値の関連は、それほど明白ではありません。ほとんど全てのダックスフンドは、石灰化の有無に関係なく突然変異を持っていたからです。
もし繁殖に使用する個体を選ぶためにDNA検査を利用すると、ほとんどのダックスフンドは繁殖不適格になってしまいます。
したがって、ダックスフンドにおける椎間板ヘルニアの発生については、現時点では、レントゲン検査で石灰化の状態を確認して選択するという方法が最良だと考えられます。
まとめ
デンマークの研究者による調査から、ダックスフンドの繁殖に有効な検査方法は従来の通り、レントゲン検査で椎間板の石灰化のレベルを確認するという方法が、現時点では最も信頼できるという結果が出たことをご紹介しました。
繁殖に使用する個体を選ぶということは、このように様々な方法を検証して慎重に行われるのが本来の姿です。
遺伝病に苦しんだり命を落とす犬を無くしていくためには、遺伝させないことが重要だからです。
これはダックスフンドの椎間板ヘルニアだけでなく、犬種特有と言われる遺伝病全てに言えることです。
パピーミルと呼ばれる乱繁殖は言うまでもなく、遺伝の知識もないままで自家繁殖をしようとすることが、将来生まれる犬の健康にどれほどの悪影響かお分かりいただけると思います。
《参考URL》
https://cgejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40575-020-00096-6