家庭の子供に対する犬の認知
犬を飼うことが、その家庭の子供の体と心の健康に良い影響を及ぼすという研究は複数発表されています。またそれとは別に、飼い主(大人)に対する犬の認知についても多くの研究が発表されています。
しかし、飼い犬がその家庭の子供をどのように認知しているかについての研究はほとんどないそうです。
犬の存在が子供の社会的発達や情緒面で良い影響があるという一方で、犬の咬傷事故の被害者の多数が子供であることからも、犬の対子供の認知を知ることは重要です。
アメリカのオレゴン州立大学の動物行動学および公衆衛生生物科学の研究者チームが、「犬は飼われている家庭の子供と一緒にいる時に、どの程度子供と同じ行動をするか(行動の同期)」という実験と分析を行い、その結果を発表しました。
犬は子供に注意を払って同じ行動をするだろうか?
実験に参加したのは、8〜17歳の子供30人と、その家庭で飼われている犬のペアです。
実験は、体育館のような広い何もない部屋で行われました。
床にカラーテープで線が引かれており、「子供たちはどの地点で曲がる」又は、「立ち止まる」などの説明を受けています。
子供はオフリードの犬と一緒に歩き、その様子が録画されて観察分析されました。以下の3つの要素が分析のポイントです。
- 犬と子供が同時に動いた、または同時に静止した時間の合計
- 犬と子供が互いに1メートル以内の距離にいた時間の合計
- 犬と子供が同じ方向を向いていた時間の合計
結果は3つの全てにおいて、犬と子供の行動は偶然を超えた数値で一致していました。
具体的には、犬と子供が「動いた及び静止した」行動の平均60%が一致していました。
それぞれの行動では、「同時に動いた」が平均73%、「同時に静止した」が平均41%でした。
また、犬と子供が互いに1メートル以内の距離にいた時間は、平均27%。犬と子供が同じ方向を向いていた時間は、平均33.5%でした。
この結果は、犬は一緒に暮らしている子供に対して多くの注意を払っているということを示しています。
大人の飼い主に対する場合よりも低いのはなぜ?
犬は子供に対して注意を払い、同じように行動するというのは良いことなのですが、過去に他の研究で大人の飼い主が同様の実験をした時に比べると、一致した数値は低いものでした。
大人の場合、「動いた及び静止した」行動は約80%一致しており、互いに1メートル以内の距離にいた時間は、全体の約70%でした。(方向に関してはデータ無し)
この大人の飼い主の場合との数値の差は、何によるものなのか?
また、子供の場合でも個人差があることから、犬が子供を良い形で認知している場合の事例を詳しく分析するために、さらに研究が続けられるということです。
まとめ
オフリードの犬と子供が一緒に歩く実験で、犬の行動がどの程度子供に同期しているかを分析したところ、「偶然の一致よりは高い数値で犬が子供に注意を払っていることが分かるが、大人と同じことをした場合に比べると一致の率が低い」、という結果をご紹介しました。
研究者は、この結果を受けて、子供には犬をトレーニングする能力があり、犬は子供のトレーニングを受け入れるくらいの認知を持っているとしています。
さらに研究を進めて、子供が適切に犬と関わり合う方法を明らかにすることで、咬傷事故を防止し、犬との関係をより良いものにできると期待しています。
《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-020-01454-4