思うように外出できない自粛生活で犬を迎える家族が増えている
外出自粛やテレワーク化などで在宅時間が増えている中、「前から興味があったし犬でも飼ってみようかな」という気持ちで初めての犬を迎え入れるご家庭が増えているといいます。
犬と一緒の暮らしにはメリットもたくさんあり、きっと幸せな暮らしが送れるでしょうと言いたいのですが、少し事情が異なります。初めての犬を迎え入れるタイミングが、本当に今で良いのでしょうか。
通常の暮らしとは異なる状況の時に犬を迎え入れるリスクについて考えてみましょう。
普段と異なる状況の時期に犬を迎えるリスク
ご家庭に迎えられた子犬や保護犬は、その家の環境や生活に慣れていき、自分たちの生活を作っていきます。在宅時間が多い時期に迎え入れられた子たちは『飼い主さんはほとんど毎日一緒に家で過ごす存在なのだ』と認識します。
しかし以前のような日常が戻ったらどうでしょう。ご家族の不在時間が急増し、留守番の毎日に変わります。事情を理解できない犬は、ご家族の愛情が薄れたと辛い思いをするでしょう。
そのストレスは、やがて問題行動を起こさせます。留守中の室内は荒らされ、部屋中に糞尿が撒き散らされるかもしれません。結局手に負えなくなってしまい、愛犬を手放すことになる可能性も少なくないでしょう。手放された犬の運命はどうなるのでしょうか…。
厳しいようですが、犬と一緒に暮らすなら、必要なことをきちんと把握して終生飼養の可否を見極め、覚悟を決めてから始めるべきです。現在の状態だけを考えて気軽に始めるのは危険です。
犬と一緒に暮らすために必要なこと3つ
1.お金
当然ですが、犬と一緒の暮らしにはお金が必要です。もしかすると、想像以上の金額かもしれません。
畜犬登録費用や住居環境の整備等の初期費用や、毎日の食事、ペットシーツ等の消耗品だけではありません。去勢・避妊手術、定期的なワクチン接種、ノミ、ダニ、フィラリアの予防も必要です。犬種によっては定期的なトリミングも必要でしょう。
定期的な健康診断も必要ですし、予測できない医療費もバカになりません。動物病院の待合室で病名を尋ねると、糖尿病、心臓病、がんなど、長期的な治療が必要な病気の子も少なくありません。
1年で100万円以上の医療費になる病気もあります。経済的に余裕のないご家庭では、受けさせられる医療レベルに限界がある等、厳しい面があることも知っておく必要があります。
2.時間と体力
犬との生活上、しつけは必須です。根気よくしつけをするのは楽なことではありません。また歯磨き、ブラッシング、爪切り等のケアや食事や健康の管理、散歩など、犬のために必要な時間と体力は相当なものです。
大型犬の場合は、特に体力が必要です。健康な時もそうですが、病気や怪我の看病では、体を起こすのにも苦労します。ご自身の体力をよく考慮して犬種を決めるべきでしょう。
3.覚悟
犬がいると、ご近所付き合いでのトラブルも起きやすくなるため、ご近所への配慮が欠かせません。また、継続的に犬に関する知識を学習し、愛犬と良好な絆を築く努力が必要です。
愛犬が病気になった時の看病や、老犬になり目が見えなくなったり歩けなくなったりした時の介護も必要です。そして、必ず愛犬の最期を看取る覚悟が必要です。
犬と一緒に暮らすことのメリット
いろいろと厳しいことを書きましたが、人が犬と一緒に暮らすことのメリットについても触れておきましょう。
人が犬や猫などの伴侶動物と一緒に暮らすことにより、生活に張り合いが出、不安が減り、やる気が出るという心理的なメリットが分かっています。犬と一緒に暮らすことで、責任感や必要とされているという自己肯定感を持て、精神的に安定しやすくなるのです。
人とのコミュニケーションが増えることも分かっています。散歩で出会う犬仲間、動物病院で知り合った方等と自然に会話が生まれるのです。特に一人暮らしの方には大きなメリットです。
そして、健康面にも大きなメリットがあります。血圧が安定し、心臓病発作が減少する等、医療費が減り寿命が延びるという研究結果が報告されています。
まとめ
犬との暮らしには、多くのメリットがあります。飼い主さんと愛犬の間には信頼と愛情の絆が生まれ、お互いに充実した幸せな暮らしが送れるでしょう。
しかし、そのためには努力や覚悟も必要です。たまたま今は在宅時間が長いからという理由だけで犬との暮らしを始めてしまわないでください。
通常の暮らしに戻っても犬との暮らしに適した環境が準備できるという覚悟ができた時点で迎え入れても、決して遅くはありません。途中で愛犬を手放すようなことにならないよう、迎えるタイミングも含めてよく検討してください。