犬がミミズに体こすりつける理由
犬はミミズの匂いが大好き!
みなさんはこんな経験ありませんか?
長く続いた雨のあと、やっと雨が上がって楽しくお散歩。雨あがりの日差しのせいなのか、道端に1匹のミミズの死骸が。ここまでは、良くある光景かもしれません。
そして何故かミミズに興味津々な愛犬。「興味があるのかな?でもミミズの死骸はばっちいぞ~」……そんなことを思っていたら、突然「ミミズの死骸」に体をスリスリと擦りつけはじめる愛犬!
やめてー!と思いながら、すぐにミミズからすぐに引き離しました。雨上がりの楽しいお散歩がだったはずが、気分は台無しに……
この話は、来院された飼い主さん(わたしは獣医なので)と話したり、愛犬と散歩の途中で他の飼い主さんと談笑した時させにも、同じようなお話をよく聞きます。
そのほかにも、せっかくシャンプーしてきれいでいい匂いになったのに家の外に出た瞬間に地面に体をすりすりしてどろどろになってしまったというお話も多いですね。
犬と匂いの密接な関係
犬の嗅覚は人間の400万倍とも言われていることをご存じですか?何百メートル先の匂いも風にのってくればかぎわけられますし、数日前のにおいも湿り気があれば嗅ぎ取れるんですよ。
このような能力は、犬の祖先であるオオカミから受け継いだものです。オオカミは優れた嗅覚を武器にして、山や森の中に潜む獲物を探し出して暮らしていたんですね。
さらに、オオカミにとっては自分の匂いも大事なポイントです。せっかく追い詰めた獲物に自分の匂いを悟られないように、周囲の匂いと一体化する性質を発達させていったのです。
集団で狩りをするオオカミを飼い慣らし、人の狩りを手伝ってもらうために家畜化したのが犬です。ですから、犬はオオカミもつ「狩りのための特性」を無くさないようにブリーディングされてきました。
そんなワンちゃんたちは、狩りの必要なくなった現代でも優れた嗅覚をもち、自分の匂いを環境にあわせて変えていくことを大事だと考えるのは当たり前のこと。
人間の考える「快適」と、犬の「快適」は少し違っているんだということを知っておきましょう。
どうしてミミズなの?
きれいにシャンプーして飼い主は大満足ですが、実は愛犬にとってはとんでもない状態だということはわかりましたね?
人間に例えて言うなら、お葬式の真っ只中に蛍光ピンクのビキニで登場するようなものです。そこで、犬は体についた目立ちすぎる匂いをなくして、環境に適応させるためにいろいろ工夫をします。
たとえば、雨上がりの路上で息絶えたミミズ。腐葉土を食べて生活するミミズの死体には、地面の匂いが凝縮されているといっても過言ではありません。
「すてきに地面と一体化できる匂い」を体にまとって、目立たなくなりたい一心で犬たちはミミズに体をこすりつけてしまうんですね。
犬に「汚いからやめなさい」は通じない
飼い主から見れば、毎日可愛がってなでてあげたい愛犬が、死んだミミズに体をこすりつけているなんて信じられませんよね。「汚いからやめなさい」と思わず叱ってしまうこともあるでしょう。
でもそれは犬には理解できない理屈です。犬の倫理観には「死んだミミズは汚い」なんて存在しません。それよりも本能が告げる「目立たない匂いにならなければ!」という警告が強く聞こえてしまうのが当たり前。
叱られても叱られても、理解できていないのではなく分かっていても本能がそれを許さないということを人間が理解しておきましょう。
不用意にしかってしまうことで、お散歩が嫌いになってしまったりしてしまうワンちゃんもいるようですよ。
犬がミミズを食べても大丈夫?
動物病院に慌てて飛び込んでこられた飼い主さんがいました。
「散歩中に死んだミミズ(または、死んだセミ…)を食べてしまったんです!体に悪いですからなんとかしてください!」
飼い主さんは大慌てですが、獣医師や動物看護師はニコニコあせらずお話すると思います。
「犬は、オオカミを祖先とする生き物で昔から腐肉や死肉をたべてきました。そのため非常に胃酸の消化能力が高いのでお腹を壊すことはほとんどないと思いますよ。」
そして、念のため整腸剤をお渡しして経過を観察することをおすすめしています。
犬がミミズを食べてしまった時の対処法
上に書いたように、実際にミミズやセミを食べてしまったからといって、胃洗浄したり特殊な薬をのまねばならないということはありません。
しかし、昔ながらの性質とは言え、現代のワンちゃんたちは清潔な家に暮らし、傷んでいないフレッシュなドッグフードを食べて暮らしています。
そのため、土やミミズなどを食べることでお腹がゆるくなってしまう可能性はあると考えておきましょう。
その場合は、下痢がひどくなければ乳酸菌系の整腸剤(人間用でかまわない)を人間の半分くらいあたえてみてください。それで軟便が収まるようであればOKです。
ミミズやセミは、人間からみれば信じられない食材とは言えますが、犬にとってはおやつの類似品。あまり大騒ぎせず、冷静に対処していただけると良いですね。
ミミズに興味を持つ犬にやってはいけないこと
ミミズを食べてしまった、体に擦りつけてしまった。そんなとき大きな声で叱ったり、バツを与えたりしていませんか?
犬がミミズを食べたり、体につけるのは本能が教える大事な行動です。人間で例えていうなら、体がかゆいときに思わずポリポリとかいてしまいますよね?そんな感覚だとおもってください。
虫にさされてかゆいな、と思ったとき大好きな飼い主さんが大きな声で怒ったりする……。痒いのがいけないのかな?と愛犬は思ってしまうことでしょう。
犬は人間とは全く違う性質をもった生き物です。それはいくら一緒に暮らしても、躾をしても変えられない事実です。人が言葉を話し、服を着るように犬は自分の匂いを環境に適応させ、その時に応じたものを食べて生きているとご理解いただけるとうれしいですね。
犬がミミズを食べたりこすったりするのをやめさせる方法
いくら本能だからといって、腐ったミミズの香りの愛犬はちょっとうれしくないのは当然のことですよね?そこで、どんな風にしてミミズ被害?を避ければ良いのかを考えてみましょう。
ミミズの習性を知っておこう
ミミズは土のなかで腐葉土を食べて生活しています。長雨が続くと、土の中に雨が浸透することでミミズが溺れた状態になってしまうんですね。そうなると、苦しくなったミミズたちは地面の外にはいでてきます。
鳥につつかれたり、アリに噛まれたり、土のなかに戻れず道路で行き倒れてしまうミミズが現れるのは長雨のあとが多いということも知っておきましょう。
さらに、ふかふかの腐葉土が多いような公園の立木のそばの道路などにはミミズがはいでやすい状況がそろっています。雨上がりのお散歩はアスファルト中心の住宅街コースにすれば、ミミズの被害を避けることが可能だと思います。
リードの持ち方で改善することも
ミミズ被害にあう飼い主さんは、たいていロングリードや伸縮リードをお使いの方が多いように思います。散歩の際、リードの持ち方を考えることで落ちているものを拾って食べてしまう誤食も防げることをしっておきましょう。
まず、おすすめのリードの持ち方は愛犬がお座りしたときに口が地面に届かない長さです。この長さでもつことによって、地面に口をつけるためにはリードを引っ張るか飼い主さんの近くに寄って余裕を作る必要ができます。
引っ張れば、飼い主さんは気をつけてあげられます。近寄ってくれば、脚や手で誤食をブロックすることができますね。
ロングリードは自由で楽しく散歩できるメリットもありますが、愛犬が危険に近づいても飼い主がコントロールしてあげられません。上手なリード使いで、危険のないお散歩が出来ると良いですね。
口輪を活用する
口輪というと、噛み付く犬が使うこわーい道具だと思っていませんか?最近はアヒルの口になれるかわいい口輪や、おしゃれな布製の口輪など誤食を防ぐために使える口輪がたくさん販売されています。
「ミミズを食べて欲しくない」と思うなら「ミミズに興味を示さないようになるまで」口輪で誤食を防ぐことをおすすめします。
ミミズをみても、無視できるように習慣づければたとえ本能が告げてもぐっと我慢してくれるようになれますよ。
気をつけたい愛犬の匂い
意外と多いのが、シャンプー直後のミミズ被害です。シャンプーの香りは「鼻の鈍感な人間」にとっては非常にすてきな香り。でも、その匂いが400万倍自分についているところを想像してみてください。
きっと、香水を頭から足先まで浸したような強烈な匂いであろうと想像できますよね。ですから、雨続きでちょっと汚れていても雨上がりのシャンプーはおすすめしません。
そんな時は、蒸しタオルなどでしっかり体を拭いて、あとはブラッシングでしのいで、ミミズの出ないときに香りのすくないシャンプーを試しましょう。
犬の嗅覚をしっかり理解して、対策するだけで愛犬も飼い主もびっくりせずにお散歩できますね。
まとめ
犬がオオカミの子孫である、たったこの一つのことだけで、人間と犬は大きく違った好みや考え方をもっています。でも、一緒に暮らすのはとても楽しくうれしい経験ですよね?
愛犬は毎日飼い主の生活をみて、一生懸命犬の考え方で理解しようとつとめています。だからこそ、飼い主は人間の知恵をフル活用して愛犬の犬らしさをつぶさず楽しく一緒に暮らせる工夫をしていきたいものです。
梅雨に秋雨、春の長雨……雨が多く自然豊かな日本に暮らす私たちだからこそたのしめる雨上がりの散歩があるということですね。
ユーザーのコメント
30代 女性 まろんママ
20代 男性 ますお
しかし、よくよく考えればシャンプー後の犬って使い古した自分のマットに体を擦り付ける仕草をよく見るような気がしますが、そう言う事だったんですね。何をしているんだろうなと家族全員疑問でしたね!
30代 女性 チャッキー
20代 女性 ひゅうがなつ
でも、いくら人間にとって気持ちの悪い事でもわんちゃんにとっては意味のある事なのならパクパクと食べない限り我慢して見守っていこうと思います。
50代以上 女性 ろちゃん
うちの子達は野生児ですので毎日草原や田んぼのあぜを走り回って、体の臭いは普段から土の臭いです。
汚いものを口に入れることもあるでしょうが、私も野生人なのであまり気にしません。
ここ、フィリピンではミミズが路上で死んでいるのはあまり見たことがないですが、土を掘ると小さなミミズが出てくることもあります。
愛犬たちに見せるとどんな行動をとるのか、ちょっと実験してみたくなりました。
女性 ナルト
20代 女性 visel
体すりすり~もしますし、くわえていることもあってこちらとしては「ギャーーー!」という感じです。食べはしないけどくわえてるんです(+o+)
雨上がりの土の公園はかなり警戒して歩いてます。
女性 たぬき
女性 ぜぜ