『犬用療法食』をネットで買うのがNGな理由

『犬用療法食』をネットで買うのがNGな理由

犬が体調を崩した時や持病を抱えている場合など、動物病院で『犬用療法食』をすすめられることがあります。実はネットでも購入することができる『犬用療法食』ですが、ネット購入には大きなリスクがあるため注意しなければなりません。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬用療法食とは?

計量スプーンとドッグフード

健康な犬には「総合栄養食」のドッグフード、または栄養バランスの取れた手作り食などを与えることが基本です。総合栄養食は健康を維持するために必要な栄養素を摂取できるように栄養バランスが整えられたドッグフードで、年齢やライフステージごとの栄養基準に合わせてつくられています。

一方、「療法食」とは特定の病気や健康状態に対応するために栄養バランスが調整されているドッグフードのことで、原則として獣医師の指導のもとで与えられるものです。その種類は多岐にわたり消化器系疾患や腎疾患、心臓疾患、尿路結石、アレルギーなど、様々な症状に細かく対応できるようになっています。

病気の治療には医薬品の投与だけでなく日頃の栄養管理=食事も非常に重要な役割を果たします。特定の栄養素を増やしたり減らしたりすることで病気や健康状態のコントロールが可能になるため、症状別の療法食が開発されたのです。

犬用療法食がネット購入NGの理由

木製ブロックのNETSHOPの文字

犬用療法食は基本的には診療行為の一環として使用することが想定されていますが、法的規制がないことから近年ではインターネットなどでも販売されるようになっています。価格競争が起き動物病院よりも安く購入できるとして注目されていますが、誤使用による健康リスクがあるとして問題視され、日本獣医師会などでも課題として考えられています。

インターネットで犬用療法食を購入することで問題となるのが、医師の診察を受けずに飼い主の自己判断で与えることができてしまうということです。犬用療法食は確かに食事のひとつであり医薬品のような即効性はないため危険はないと考えられがちですが、種類によっては短期間の治療に用いるために極端なバランスでつくられている療法食もあります。

また、長期にわたって特定の栄養素が不足したり過多になったりすることで健康に害を及ぼすことも。犬用療法食は与える期間や量などを、症状や状況に合わせて適宜変える必要があるため、定期的に獣医師の診察・診療を受けなければなりません。犬用療法食を適切に使用するためには自己判断で購入するのではなく、必ず獣医師の指導のもとで与えることが大切です。

犬の療法食によるトラブル事例

ドッグフードの横で伏せている犬

犬用療法食が適正使用されていないという問題は、日本獣医師会でも課題として挙げられており、誤使用に起因する家庭動物の健康被害に関して調査が行われました。

肥満解消のため、エネルギー摂取量を制限することを目的に「体重管理用療法食」を与えることが推奨された犬に、獣医師の指導を受けずに長期間継続的に与え続けたことで重度の削痩や低タンパク血症を引き起こしてしまったケースもあります。医師に勧められたものと同じものでも、与え方や与える期間を誤ると適切な食事管理ができず、健康被害を生んでしまうのです。

また、 尿石再発防止用の療法食を長期間にわたって給与しつづけた結果、腎臓に負担がかかり腎不全の所見が見られた犬もいます。このケースでは尿石再発防止用の療法食を減量して米食でエネルギー補充、その後慢性腎不全管理用の療法食に切り替えるなどして症状が改善しました。尿石用のフードは高タンパクであることが多く、腎臓に負担がかかることがあります。一般的にこのようなことは起こりにくいのですが、何らかの条件が重なると起こる可能性があります。 定期的に獣医師の診察を受けていれば何らかの異常がおこったときに早期に発見することが可能です。犬用療法食を与えていれば問題ないというわけではなく、定期的に診察を受けながら症状・状態に合わせて変化させることも必要になります。

まとめ

首をかしげる茶色い犬

インターネットで気軽にドッグフードが購入できるのは確かにとても便利なことですが、犬用療法食に関しては犬の健康リスクを高める可能性があるため、ネット購入はおすすめできません。

中には病気の診断を受けていないにもかかわらず「お腹の調子が悪いから、前にも同じものをあげたことがあるから」と自己判断で犬用療法食を与えてしまう人も多いようですが、犬用療法食はその時の体の状態に合わせた与え方をしなければ病気を悪化させてしまったり、他の健康被害を引き起こしたりする可能性もあるということを忘れないようにしましょう。

療法食はドッグフードの形状をとった薬に近いものです。 犬用療法食は必ず獣医師の指導に従って与えるようにし、大切な愛犬の健康を守ってあげてくださいね。

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