8週齢規制について
平成24年に久しぶりに動物愛護法が大幅に改正され、平成25年9月1日より施行されました。
その中で、話題になったのが
【動物の愛護及び管理に関する法律】
第二十二条の五 犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後五十六日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。
つまり
【犬猫の8週齢未満の販売を規制する】
という法律です。
これは、生後8週に満たない犬猫を販売、販売の為の引き渡し、展示をしてはいけないという法律になりますが、何故、8週に満たない犬猫を販売してはいけないのでしょうか?
8週間規制設定の訳
飼い主さんが一生懸命対処しているのに
ちょっとしたことで狂ったように吠える。
とても怖がりで、散歩もしたがらない。
甘噛みがひどく、パピー期を過ぎてもそれがなおらない。
落ち着きがない。
ささいなことにおびえる。
他の犬や人間に攻撃的。
という場合がないでしょうか?
それはもしかして、生後8週齢を待たずに親兄弟から引き離されたことが、原因かもしれません。
残念なことに、吠える、噛む、なつかない、といったことが原因で捨てられ、処分される犬の数が多く、根本から見直さなければならないという声があがってきたことから、この8週間規制が制定されました。
注)もちろん、吠える・噛む・なつかないなどの原因が、すべて、8週齢前に親兄弟から引き離されたことが原因という訳ではありません。
また、たとえ引き離されたとしても、時間はかかりますが、適切な対処で解決できる場合がほとんどです。
8週間規制の重要性
何故、8週齢未満で親兄弟から引き離してはいけないのでしょうか?
身体的発達の重要時期
生まれてから2週間ほどは、子犬は目が見えておらず、耳もほとんど聞こえず、触覚などの感覚しかないと言われています。
母親の乳首を手探りで探す姿が思い浮かべられますよね。
排便・排尿も自分でできない為、母犬がなめて世話をします。
この時期の刺激が、神経、脳、感覚、運動能力などの発達に大きく影響すると言われています。
そしてその後、自分で歩けるようになる3週齢になると、兄弟犬とじゃれあったり、親犬に叱られたりすることで、更に、神経・脳・感覚・運動能力が発達していきます。
犬族として、この時期に親犬や兄弟犬との接触がなく、ひとりぼっちでショーケースに入れられるなどの状態にさらされると、ストレスの問題はもちろんですが、正常な神経・脳・感覚・運動能力の発達に多大な影響を及ぼします。
○社会化の重要時期
個体差はありますが、だいたい4週齢から13週齢位までが、【社会化期】と言われており、特に6週齢から8週齢が【社会化期のピーク】と言われています。
この時期に、子犬は兄弟たちとじゃれあうことで、さまざまなことを学んでいきます。
噛み加減や、他の犬との接し方なども、この時期に学びます。
好奇心と恐怖心、警戒心が芽生え始めるのもこの時期で、自分以外の生き物(人間・犬・他の動物含む)、物(毛布・おもちゃ)などに愛情を持つという感情が出てくる時期になります。
子犬の性格が形成される大事なこの時期に、ひとりぼっちでショーケースに入れられるなどされれば、その後、性格・感情面での問題が出てくることは明白です。
欧米では8週間規制は当たり前
欧州では8週間規制は当たり前で、ドイツなどいくつかの国ではペットショップでの生体販売自体が禁止されている為、8週齢までは親犬や兄弟犬と過ごすことは当たり前となっています。
アメリカでも州によって法律は違っていますが、おおむね、8週間規制をしている州が多くなっています。
8週間規制は最初の一歩
日本も遅ればせながら、やっと8週間規制が制定されましたが、8週間規制は既出の【8週間規制の重要性】でも書いたとおり、
【8週齢まで、親犬、兄弟犬、そして愛情を持って接するブリーダー(人間)との接触が重要】
なのであって、販売こそしないものの、パピーミルのようなところで8週齢まで他の子犬と狭いケージに閉じ込めっぱなしであったり、1頭のみケージに入れっぱなしであるといった状態では、何の意味もありません。
ペットショップでの生体販売が禁止されているドイツなどの欧州と比べると、まだまだ動物をとりまく環境は、日本ではおくれをとっています。
8週間規制は、はじめの一歩。
これを機に動物をとりまく環境が日本でもよくなっていく様、願ってやみません。