失って初めてわかること
我が家の愛犬は、子犬の頃から食欲旺盛ですこぶる健康。それまで12年間、大きな病気にかかったことは一度もありませんでした。病院にかかるといえば皮膚のアレルギー位でしたでしょうか。
もともとの性格がおっとりしていたせいもあり、老犬になっても変わらず可愛いおばあちゃん犬として我が家のアイドルでした。
当時の私は、いつかは天国に行ってしまうことは頭の片隅にありました。亡くなった時のことを考えなくてはと思いながらも、まだ大丈夫かなと呑気に考えていたと思います。
大雪の降ったとある冬の日。突然に大量の嘔吐をし、病院へ着いた時には獣医さんから「覚悟してください」と告げられました。
それから入退院の繰り返しで命をつないでいた愛犬。倒れた日から、あまりにも突然のことで心臓は高鳴り、常に緊張感があって、何も手に付かない状態に。入院している愛犬に思いをはせただけで涙があふれでてくる状態でした。
退院し自宅療養中でも、もう、いつ天国へ行ってしまってもおかしくないという現実に直面し、けれども愛犬の前ではいつも以上に愛情を持って接し、最後の思い出作りをしているような感覚に襲われ、虚しさと儚さでまた涙があふれてくる状態でした。
家族以外に話すことが出来ず、外で見かける元気に散歩している他のワンちゃんを見るのも辛かったです。
最後に入院していた時、病院から容体急変の知らせを受けた途端、手の震えが止まらず、焦燥感に駆られ、急いで病院に駆けつけた時には愛犬は天国へ旅立っていました。
触れてみるとまだ暖かく、眠っているかのよう。
私は、体の力が一気に抜けていき、泣き崩れ、立つのも歩くのもやっとで、翌朝まで何時間も泣いて、食事もろくに喉を通らないまま火葬を終えました。
いま振り返ると、ここからが本当にペットロスの始まりと思います。
いつもいた愛犬が、家中どこを探してもいない。いないけれど、いたるところに愛犬のにおいがあり、お気に入りのおもちゃがあり、おやつがあり、そこにいるだけで悲しみの底に落ちたように涙があふれでてきます。
愛犬がいないと家の中は静まり返り、廊下をトコトコと歩く音や、ドアチャイムに吠える声、おこぼれをもらおうと台所をのぞく姿。これまで当たり前にあった光景が突如消え去り、胸を締め付けていきます。
頭ではわかっていても、愛犬がもういないという状況は受け入れられませんでした。
そして、失ってみてはじめてわかるのは喪失感、そして愛犬の存在感。体をもぎとられるような、精神を奪われるような感覚。
そして、自分の人生の12年分を一緒に築き上げてきてくれた愛犬、また数え切れないほどの楽しい時間と、癒しと、出会いとを与えてくれたかけがえのない愛犬の存在感。
これらは愛犬が天国に行くまで、わからないものだったと思います。
どうやってペットロスを克服したか
愛犬がいたそのままの状況では、涙が流れ続け自分の気力も体力も消耗していくことを実感していました。その時ふと、「悲しいけれど、私がいつまでも悲しんでいたらきっとあの子も悲しんでしまう」と思いました。そこで、自分がペットロスである状態を抜け出そうと行動を始めました。
まずペットロス克服に向け、愛犬の使用していたものはすべて処分しました。もちろんやみくもに捨てるのではなく、一つ一つの品に感謝の気持ちを込めて「ありがとう」と心で唱えてから捨てていきました。
見ると悲しくなってしまうような思い出の品々でしたし、使用していたものをいくら取っておいても、愛犬は戻ってこないからです。
愛犬が元気だったころのように、ひょっこり部屋から顔を出してくれるような淡い期待を抱いてしまう自分を振り切るためにも、この作業は必要なことだったと思います。
唯一とっておくのは、元気だったころの愛犬の写真だけにしました。
日ごろから写真を撮るようにしていましたので、写真を見て愛犬が戻ってくると思うことはなかったですし、写真の中の愛犬は、時が立っても変わらずにいつも自分のそばにいてくれるからです。
写真を見ると自然に涙があふれますが、その時には「ありがとう」と口に出して意識的に感謝の涙だと捉えるようにしていました。
そして、人間と同じように仏壇を作り毎日お線香とお水をあげています。
その時に、天国にいる愛犬に祈ります。感謝の気持ちを伝えることもあれば、「今日は天気がいいからたくさんお散歩できるね」といったり、愛犬の好きだった野菜などを備えて「今日はいっぱい食べてね」と伝えるようにしました。
こうして、天国で愛犬が元気に楽しく暮らしている事を頭の中で想像することを続けました。いつまでも天国で生きている、と自分に言い聞かせ続けたのです。
このようにして前向きにアクションを起こしていくことで、それまでの悲壮感や喪失感を感謝の気持ちに変えていくようにしました。
すると、涙がとまらないということも徐々におさまってきていたと思います。
ある程度感情がコントロールできるまでに回復してきた頃に、私は友人やお世話になったペットショップの方たちに話をするようにしました。愛犬をかわいがってくれたことへのお礼も兼ねていましたが、それ以上に一緒に泣きながら思い出を共有できたことで心の底からまた愛犬への愛情が増していくような感覚にもなっていきました。
「沢山の人に愛されていて良かった、ありがたい」ということも実感でき、幸せな生涯を送らせてあげられたかなと前向きにとらえるようにしました。振り返れば、私にとってはペットロス克服に必要な過程のひとつだったのかなと思います。
そして、しばらくは外で散歩する犬を見たり、テレビで動物番組を見たり、ホームセンターなどでペット用品売り場の近くを通ることが辛くて仕方ありませんでしたが、このころには懐かしむことができるようになっていきました。
通りすがりに愛犬にそっくりな子をみかけ、一瞬「辛い」という気持ちがよぎっても、「あぁ、愛犬があの子になって姿を見せてくれたんだな」と思うようにしました。このことで、犬を見ても平気になっていきました。
そして何より、ペットロスを克服したのはある気づきのおかげだと思います。
愛犬を無くした時には喪失感に襲われ、「もう二度とこの経験はしたくない」「一生犬は飼わない」と心に決めていました。しかしペットロスに向け行動を起こしていく中で、愛犬への感謝の気持ちを毎日感じるようにしていたことで、気付いたのです。
「失った時の悲しみはとても大きい。けれど、愛犬が生きている間私に与えてくれた幸福は、その何十倍、何百倍と計り知れないほどにある」
当たり前のことですが、悲しみの最中にいた私は気付いていませんでした。このことに気付いた時、何かがふっと解かれたように気持ちが軽くなり、愛犬を想うと体が暖かくなっていった感覚をいまでも覚えています。
最後に
ペットロスのショックの度合いや受け止め方などは、それぞれのワンちゃんとの暮らしが様々であるように、人それぞれ異なると思います。
私がペットロスを克服できたのは、深い悲しみを愛犬の感謝へ転換できたことが大きいのではないかと、今振り返ってみて思います。
大切な愛犬が天国に行ってしまって悲しい時、ワンちゃんのことを考えてみることが第一歩ではないでしょうか。ワンちゃんもきっと、飼い主さんが悲みに暮れている姿よりも、元気になった姿のほうが、安心して天国で穏やかに暮らしてくれることと思います。
ユーザーのコメント
女性 匿名
涙が止まらないということは
最近なくなりましたが
やはり寂しく胸にぽっかりと
穴が空いたようです。
もう一度あのぬくもりに触れたいし
愛犬が元気だった頃に
戻りたいです。
しかしたくさんの思い出をありがとうとも
思えるようにもなりました。
ペットロス克服を一進一退しながら
生活しています。
50代以上 女性 匿名
ダルマちゃんとかリボンちゃんとか付いていたんですけど。
それから約10年我が家のなくてはならない存在で家族は勿論みんなにかわいがられました。正月は着物着たり節分行ったり、花見に行ったり、潮干狩り、バーベキューにキャンプ海では、一緒にボディーボードもしたね。ビキニやゴーグル沢山服もかったし、お誕生日には人間のより高いケーキ。
一度犬に噛まれて大怪我したね。白内障で目も見えなくなったね。
子宮蓄のう症で手術したけどこの時に慢性白血病が判明したね。それから2年7ヶ月程毎月血液検査。小さな体からの採血は、痛々しかったよ。少しでも良くなればとレバーゆでてエサに混ぜたりしたね。それがこの5月に入って急に血液の数値が悪くなって。いよいよ抗がん剤を使うことに。
それでも数値は良くならず、舌もお腹も真っ白に。水曜日の夜から急激に悪くなって木曜日は何かあったらすぐ携帯にと言って心配で泣きながら運転して会社に。
その日は、一緒に下で寝ました。外でトイレの子だったので連れて行ったり水分とらせたりとあまり寝れなかったよ。プチ子も熟睡できてなかったね。金曜日になるともう立つ事も出来ず何も食べなくなっちゃったね。美味しいアイスクリームを少しなめた位だね。25日の誕生日にあわせて頼んだケーキも早めてもらったけど間に合わなかったよ。ひとなめでもしてほしかったのに。今日届いたけどプチ子にそっくりに可愛く出来てたよ。天国でみんなで食べてね。プチ子がいないのが、まだ信じられない。寂しくて涙が出るよ。
明日会社に行けるかな?うちにいるとプチ子の物一杯あるから辛いよ。
プチ子は今何してるの?まだこっちにいるんでしょ?
最後の2日間は、かなり辛そうだったね。
ちょっと動くと息が上がって脈も早くなって。東京にいる次男を待ってたんだね。帰って来たら1時間足らずで逝っちゃったもの。最後は、かわるがわる抱っこでみんながいる時で良かったよ。
もう苦しくないでしよ?お母さんは、胸が苦しいよ。どうすればいい?夢でもいいから出てきてよ。
旅行に一緒に行くはずだったのに残念だよ。もっと早く行っとけば良かった。
抗がん剤やらないほうが良かったの?
あの時ああすれば良かったこうすれば良かったと後悔ばかり。時間が戻せたらいいのにね。
50代以上 女性 匿名
夜中に少ししんどそうだったので、朝日曜日見て貰える病院チェックしてました。少しうとうとしましたが、チビが死ぬ夢見て飛び起きました
でも まだ死ぬような大変な様子もなく安心してましたが
突然よだれを流し始めたので、でもまだ座り死ぬ等思えない様子で、デモ念のため救急病院に連れて行こうと思って探してたら、突然倒れ、息が止まり、息子を起こして人工呼吸をするとふたたび2度大きく呼吸しましたが、最後に大きな息を吐きなくなりました。あれから毎日後悔が、チビに苦しかっただろうと自分を責めます。この苦しみは無くなるときは永遠に来ない気がします。帰って来てと、ごめんねと毎日泣いています。ご飯も食べれない
どうして克服できるのか、一緒に行ってあげたい
お母さん思いの可愛いちび
50代以上 女性 匿名
自分達が高齢となり、もう犬を飼う事もできないと思う。老人ホームのように老犬ホームがあれば再び犬を飼う事もできるのだけれど。