「R.E.A.D.」プログラムとは?
子どもたちが犬に本を読み聞かせる動物介在読書プログラムは、通称「R.E.A.D.」プログラムとして、アメリカで始まりました。「R.E.A.D.」とは、「Reading Education Assistant Dog」の頭文字をとったもので、直訳すると「読書介助犬」となります。「介助犬」という言葉からもわかる通り、このプログラムはいわゆるアニマルセラピーの一種です。
小中学生の頃、クラスメイトの前で教科書を音読させられた経験は、誰にでもありますよね。スラスラと読める人にとっては他愛のないことかもしれませんが、音読が苦手な人にとっては、「間違えたらどうしよう」と緊張したり、「上手く読めなくて笑われたら恥ずかしい」と苦痛を感じたりしたはずです。中には、それがきっかけで読書そのものが嫌いになってしまったという人もいるかもしれません。「R.E.A.D.」プログラムは、そういった経験から読書に後ろ向きになってしまった子どもたちの心を癒し、前向きになれるようサポートするために考え出されたのです。
読書が好きになるだけじゃない!驚きの効果6つ
1.識字能力が向上する
子どもたちが読書や音読を苦手と感じる理由は、文字の読み書きが苦手で文章の中身をすぐに理解することができないから、すなわち、識字能力が低いからです。識字能力を高めるには、より多くの文章を読むことが不可欠ですが、「読書が苦手、嫌い」と感じてしまった子どもは読書から遠ざかってしまう傾向があります。しかし、「R.E.A.D.」プログラムを通して犬に読み聞かせをした子どもたちは、読書への抵抗感がなくなり、識字能力が向上したという研究結果が報告されています。
2.読書量が増える
識字能力が高まり、いろいろな文章が理解できるようになると、今度は「いろいろな本を読んでみたい」という気持ちが湧いてくるものです。これにより、子どもたちの読書量は自然と増えていきます。読書から得ることはたくさんあります。世の中の仕組みを理解したり、現実には体験できないことを追体験できたり、想像力が鍛えられたり、読書量が増えれば増えるほど、知識や考える力が蓄積されていくのです。
3.自信がつく
人前で音読することに苦手意識のある子どもたちは、そもそも、「自分は下手だから」「笑われたり、バカにされるから」という劣等感があります。ですが、犬への読み聞かせをくり返すことで音読が上手にできるようになると、「自分にもできる!」という自信がつきます。
4.物事に積極的に取り組むようになる
「R.E.A.D.」プログラムで得た自信は、読書そのものへの自信だけには留まりません。自分の学習能力や理解力に自信が持てるようになったことで、授業中に積極的に発言できるようになったり、学校の欠席率が下がったり、さまざまなことに積極的に取り組めるようになったという結果が報告されています。
5.コミュニケーションスキルが上がる
音読を苦手にしていた子どもたちの中には、お話しが上手にできなかったり、吃音をコンプレックスに感じていたという子もいます。そのため、人前での音読や発言だけでなく、誰かと会話をすること自体に抵抗を感じていたという子も少なくありません。そんな子どもたちも、「R.E.A.D.」プログラムを通して自信を得ることで、進んで人に話しかけられるようになり、コミュニケーションスキルがアップするのです。
6.衛生状態が向上する
また、副次的な効果として、子どもたちの衛生状態が向上したという報告もあります。これは、プログラムに参加しているセラピードッグたちがいつもキレイな姿をしているのを見て、「わんこたちもキレイにしているんだから、自分たちもキレイにしなきゃ!」と思うからです。その結果、着替えやお風呂、歯みがきなどを嫌がっていた子どもたちが、自ら進んで取り組むようになるのです。
なぜ?わんこの読み聞かせに効果がある理由
では、なぜ、犬に読み聞かせをするとこのようなたくさんの効果が得られるのでしょうか?その答えは、「犬がただ黙って聞いていてくれるから」なのです。子どもたちが音読を嫌いになったり、苦手意識を持ってしまう大きな理由に、「間違ったときに指摘されたり怒られたりするのが怖い」「失敗して笑われるのがイヤ」というものがあります。その点、犬の場合には、ただ黙って寄り添って聞いてくれ、間違いや失敗があっても指摘したりバカにすることは絶対にありません。そのため、子どもたちは思いのままに読書をすることができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?とても魅力的に思える「R.E.A.D.」プログラムですが、日本では過去に取り入れられたものの、メリットよりもリスクを心配する声が多く、広く普及するには至っていません。ですが、子どもがいて犬を飼っている家庭であれば個人レベルでも取り組める活動ですし、試してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。そして、将来的には、日本でも「R.E.A.D.」プログラムの素晴らしさが認められたら素敵ですよね。