アメリカの『職場に犬を連れて行こうデー』
会社で仕事中、行き詰まったり辛いことがあったりしたときに「こんなときそばに犬がいてくれたらなあ」と思うことはありませんか?アメリカでは、毎年父の日の次の週の金曜日が 『全国・職場に犬を連れて行こうデー』と決められています。もちろん国の正式なホリデーではありませんが、多くのメディアが取り上げたり公式に認める企業も増えてきたりして、だんだんと知名度が上がってきています。
『犬を連れて行こうデー』が始まったのは1999年で、愛犬への感謝の気持ちを祝うという名目と保護犬の譲渡率アップを目指すキャンペーンの一環として始まりました。当初は犬のために始まった行事だったのが、従業員の愛犬が職場にいることで同僚や上司との距離が縮まったり、チーム内のコミュニケーションが高まったりという人間にとってのメリットが報告されるようになりました。
職場での人と犬の関係の研究
そのメリットが報告されるようになり、職場に犬を連れて行くことについての研究も行われるようになりました。2012年にはアメリカのバージニア・コモンウェルス大学が、犬が職場にいることで人々のストレスレベルが下がるという研究が発表されています。研究対象となったのは従業員550人の企業で、職場に愛犬を連れて来るように依頼しました。
職場内では近くに犬がいる環境とふだん通り犬のいない環境が作られ、それぞれの環境の従業員の唾液のコルチゾールレベルが計測されました。コルチゾールレベルはストレスレベルの指標として用いられます。結果は、犬のいる環境で働いていた人々のストレスレベルが有意に低下していたとのことでした。
犬がもたらす心理学の面からのメリット
オランダのオープン・ユニバーシティでは、心理学の面から職場での人とペットの関係が研究されています。心理学者は、ストレスレベルの低下だけでなく動物を撫でることで愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されることのメリットを指摘しています。また、業務や人間関係に煮詰まったとき、犬をトイレ散歩に連れ出すだけでも気分がリセットされて、仕事の効率が上がることも説明しています。
一般的に犬や猫を可愛がる人は親切で感じがよく見えます。人は「この人は親切で感じが良い」と認識した人とは、より協力し合いチームでの作業効率がアップすると言われているそうです。また、人は自分と共通する点がある人を好ましく思い親しみを感じるため、自分自身はペットを職場に連れて来なくても、ペットを可愛がっている人との結びつきが強くなるとも言われています。
このような効果は犬に顕著ですが、猫でもほぼ同等の効果があるそうです。しかし職場の環境によっては犬や猫がいることが不可能だったり、アレルギーがあったりする人の問題もあります。そのような場合、もっと小さいハムスターなどでも効果は低くなるものの、やはり良い影響があるそうです。また撫でたりすることはできませんが、水槽の中で泳ぐ魚を見ることにもリラックス効果があるとのことです。
まとめ
職場に愛犬を連れて行くことのメリットについて研究がされていること、どんなメリットがあるのかということをご紹介しました。犬をはじめとして、職場にペットを連れて来ることは働く人のストレスレベルを低下させ、生産性を向上させるという結論が出ています。これらの研究では主に人間側のメリットが取り上げられていますが、犬にとっても長時間のお留守番の代わりに飼い主の側にいられるという点は良いことでしょう。
もちろん実行するためには様々な環境が整わなくては無理な話ですが、職場にペットを連れて行くという形の人と動物の共生の形があるということは知っておきたいと思います。今後は職場にペットを連れて行く際の、ペットの福祉についてもきちんとリサーチが行われて、共通の認識が確立するようになってほしいと思います。
《参考》
https://nationaltoday.com/national-take-dog-work-day/
https://www.emeraldinsight.com/doi/abs/10.1108/17538351211215366
https://www.businessinsider.com/office-cats-and-dogs-reduce-stress-levels-and-boost-productivity-2018-12