犬の咬傷事故の被害者は子供が大多数
犬が人を咬んでしまう事故で、被害者の最も大きな層は10歳未満の子供です。全ての咬傷事故が届けを出されたり病院に行ったりするわけではないので、被害者全体の中で子供が正確にどのくらいの割合でいるのかは分かりませんが、この傾向はどこの国でも同じです。
イギリスのスタフォードシャー大学では発達心理学の専門家が、犬による子供の交渉事故を防ぐためのリサーチや研究を行っています。専門家たちは咬傷事故防止策として、まずは幼稚園の子供たちに、犬の感情がどのように表されるかと、犬の側で行動するときのルールを徹底するよう教育しました。しかし、これらの活動にも関わらず子供が犬に咬まれる事故は続き、犬のサインを読み取ることを教えるだけでは何かが足りないことが分かりました。
子供に聞いてみて分かったこと
子供の咬傷事故を防ぐために何が足りないのかを探るため、新しいリサーチとして4歳から6歳までの100人以上の子供たちへの聞き取り調査が行われました。まず子供たちに犬の行動や動作を示すビデオクリップを見せます。ビデオの中の犬は「ハッピー」「怯え」「怒り」の感情を示す行動をしています。
ビデオを見た子供は犬がどんな感情を示しているか3つの中から選びます。次に「この犬を撫でたい?遊びたい?抱きしめたい?ブラッシングしたい?隣に座りたい?それとも近づかない?」と、自分の行動を選んでもらいます。この自分の行動を選んでもらうところにヒントがありました。
ほとんどの子供たちは「怒り」を示している犬には近づかないと答えましたが、「怯え」を示す犬には「ハッピー」な犬に対するのと変わらないくらいに何らかの形で近づいていくことを選んだのです。子供たちは犬が頭を低く下げていたり、尻尾が下がったりして足の間に入っているようなときには、犬が何かを怖がっているということを教えられています。
一方で、自分が何か怖い思いをしたときには、親や大人が肩を抱いたり抱きしめたりしてくれます。また日頃から、お友達が悲しいときや不安なときには近くに寄り添ってあげましょうというふうにも言われています。大勢の子供たちは犬が怖がっているということを分かった上で、怖がっている犬には寄り添ってあげなくてはいけない、そうすることで犬も安心すると考えていたのでした。
改めて、子供への犬の咬傷事故を防ぐために
犬が子供を咬んだ場合の多くは、子供の方から開始した行動が発端になっています。そしてその多くが撫でたりハグをしたりというポジティブな行動です。犬が怯えているときに近づいていくと、犬はそれを脅威として認識し、攻撃に転じることが多いものです。
- 犬が怯えているときにしてほしいことは人間とは違う
- 怯えている犬は人間が近寄ると余計に怖がって、その結果咬みついてしまうこともある
- 怯えている犬には近づいてはいけない
これらのことを子供にしっかりと教えることで、従来よりも効果的に咬傷事故を予防できると考えられます。また子供の咬傷事故は多くの場合が、大人の監督下で、よく知っている犬によって起きています。このリサーチは、怯えている犬に近づく危険性と、それを子供たちに教えることの重要性を親たちにも周知徹底することがさらに重要であることを示唆しています。
まとめ
イギリスでのリサーチから、子供の多くは怯えている犬を見ると、慰めるために近づこうと考えること、咬傷事故を防ぐためには犬のサインを読み取るだけでなく怯えている犬には近づいてはいけないと子供と親の両方に教育することが重要であることがわかったという内容をご紹介しました。犬による咬傷事故を防ぐことは、人間の安全はもちろんのこと、犬の福祉のためにもとても大切なことです。犬を飼っている人も飼っていない人も、一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。
《参考》 https://theconversation.com/children-often-misread-fear-in-dogs-making-a-bite-more-likely-118405