犬と猫の食性の違い
犬の雑食化
犬は、哺乳類の中でも食肉目という分類をされている動物です。
身近にいる動物では猫もこの分類に属します。
犬が家畜化されたのは今から1万年以上前ですが、人間と長く共同生活を送る中で雑食化が進み、肉以外の植物を食べることができるようになりました。
ネズミ捕りを主な業務としていた猫とは、随分と食性が異なっています。
身体構造
この食性の違いは、身体構造を比較するとよくわかります。
犬は猫に比べて奥歯(臼歯)が12本も多いのです。
これは、「すりつぶして食べるもの」を多く摂取しているということを表しています。
また、腸管の長さも体長の割に長く盲腸の容積もあるため、犬が猫より植物性のものを消化する能力があることを示しています。
栄養素の代謝能力
また、食性が異なる犬と猫では、栄養素の代謝能力にも違いがあります。
肉食の猫では、植物の成分であるカロチンを体内でビタミンAに変化させることができません。
肉に多く含まれるタウリンやナイアシンという成分も、体内で合成することはできません。
これらは不足すると、心筋症など重篤な病気にかかわることがあるとても大切な栄養素ですが、猫の場合は、すべて食べ物(動物性たんぱく質)から摂取する必要があります。
しかし、犬は長い雑食生活を送る中で、これらビタミンやアミノ酸を合成することができるようになったため、猫に比べて動物性のたんぱく質の要求量が少ないのです。
さらに、炭水化物の代謝能力も高いのが特徴です。
そのため、犬は甘いもの(炭水化物を含むもの)を好むといわれています。
犬はベジタリアンになれる?
なれるかなれないか、の二択でいうなら「なれる」と言えるでしょう。
先述した通り、犬の食性は雑食に適応しており、炭水化物や植物を代謝し、体内で必要なアミノ酸を合成することができるからです。
家庭で飼育されている犬たちは、人間の食事を見ているせいか、お芋や白菜、ニンジンなども好んで食べますし、甘味に対する執着もあるため果物もよく欲しがります。
我が家の犬たちはキュウリやキノコなども食べます。
苦みに対する感覚も鈍いので、ゴーヤなどの食べにくい野菜を食べる子もいます。
犬はベジタリアン食で十分?
ドッグフードの成分表示を見てみても、原材料には肉類の他に穀物や野菜などが多く含まれているのが分かります。
最近の健康ブームでは犬の食事も手造りで、と飼い主さん自らお野菜やお豆を厳選し、アレルゲンとなりやすい動物性たんぱく質を除いて、調理していることも少なくありません。
しかし、いくら何でも食べるとはいえ、犬の歯の様子や腸管の長さなどからいっても、彼らは肉食傾向の強い雑食です。
本当の雑食生物である人間と比較しても、歯は前歯や犬歯が発達していますし、生肉や骨を砕くための強固な顎も持っています。
また、腸管も草食動物のそれとは比較にならないほど短く、盲腸も小さいのです。
そのため、草食動物や雑食の人間ほどには、多くの野菜の消化には向いていないといえます。
犬のエネルギー要求量
さらに、犬たちのエネルギー要求量にも注目しなければいけません。
体重30キロ程度のゴールデンレトリバーの場合、一日のエネルギー要求量はおよそ1300~1500kcalと言われています。
これに対して、野菜のもつエネルギーは100gあたり数十kcalです。
いくらベジタリアン食とはいえ、野菜だけで計算する必要はありませんが、穀類を入れても一日のエネルギー要求量を満たすには、相当な量の野菜を摂取しなければいけないのです。
まとめ
犬は雑食なので、極端なことをいえばベジタリアン食でも生きていくことができます。
しかし、そもそもの食性が肉食寄りであることや、個体による食べ物の好みの問題もあります。
各個体の消化能力やエネルギー要求量、栄養バランス、アレルギーなどをよく考慮して、食事を考えてあげる必要がありますね。