やむを得ない事情で愛犬を飼育できなくなってしまったら 命を繋ぐ選択を
災害、病気、事故、離婚など犬を飼えなくなってしまう事情は、それぞれの家庭によって異なります。ペットは飼い主さんがいなければ生き場所を失ってしまいます。
ペットを飼うときには【どんなことがあっても終生適正飼育】できなければ、ペットを飼う資格はありません。
ですが、誰にでも起こりうる万が一のとき、飼い主さんの生活を維持すること、ペットが幸せに暮らしていくことを両立できなくなります。
そんなとき、どうか【命を繋ぐ選択】があることを知っておいてほしいのです。
犬を手放すとき 飼い主さんの選択肢
- 1.知人友人、親類に引き取ってもらう
- 2.里親を探して譲渡する
- 3.愛護団体や動物ボランティアに引き取ってもらう
- 4.購入したブリーダーさんに引き取ってもらう
- 5.有料終生飼育施設、有料ホームなどへ預ける
- 6.各市町村の保健所、愛護センターへ持ち込む
犬が飼えないとなったとき、これらの選択肢があります。大切に育ててきた愛犬が自分のもとを離れた後も幸せに元気で暮らしてほしいと願わない飼い主さんはいません。
ですが、どの選択にしても愛犬の終生の幸せのために注意しなければならないことがあります。
1.知人友人、親類に引き取ってもらう場合
日頃から交流があり、愛犬も懐いているお宅なら安心して愛犬を託せます。たまに様子を知らせてもらえ、会いに行くこともできる関係が継続できれば飼い主さんにとっては一番良い形ではないでしょうか。ですが、先住犬との相性がどうしても合わないと居場所を失うこともあります。新婚家庭、高齢者家庭の場合には家族構成の変化や、万が一のときが遠くない未来に起こるかもしれません。
安心できる場所に託すことができても、また、愛犬の生き場所がなくなってしまう可能性もあります。
愛犬を託す前に、先住犬との相性、家族構成の変化があっても犬を飼育できるか?もし、飼えない場合には協力して愛犬の次の生き場所探しを手伝ってもらえるか?など、慎重にお話を重ねて判断しましょう。
「親戚が飼えなくなったといってかわいそうで引き取ったけど、子供が産まれるから飼えない」
「いつも一緒に遊んでいた友人の犬を引き取ったけど、うちの子がストレスでご飯を食べなくなった」
「近所で飼えなくなった犬を引き取ったけど、何度も脱走して元の家へ帰ってしまう」
「友人が亡くなって犬を引き受けたけど、全くなつかない」
これらは、実際に飼い主さんのやむを得ない事情を知り、かわいそうだからと犬を譲り受けた方が【飼えなくなった、飼いきれないかもしれない】となってしまった事情です。
珍しいことではなく、引き取ってくれた方のもとでうまく行かなくなり、元の飼い主さんとも連絡が取れず、協力もしてもらえない状況になり、保健所や動物保護団体に相談が入ります。
交流があるお宅へ愛犬を託すときにも、愛犬の生き場所が失われないよう飼い主としての責任を持つ必要があります。
2.里親を探して譲渡する場合
インターネットや新聞などで個人の飼い主さんからの里親募集も多く目にするようになってきました。
このとき、注意しなければならない点が5つあります。
A.金銭トラブル
個人間の動物の譲渡には、金銭のトラブルが多くなります。
動物を譲渡する側が譲受け者に対して金銭を要求することはできません。
生体の販売になってしまうため、法律で禁止されていますので無償譲渡になります。
どんなに希少犬種であっても、購入価格が高額であっても、個人間での動物の生体を譲り渡す際に金銭を受け取ることはできません。
また、譲渡後に病気になったとして、医療費を元飼い主さんに請求する里親さんもいますが、譲渡の際にきちんと契約書を書面で交わしていない場合に、トラブルになってしまいます。
個人間で譲渡する場合には、金銭のこと、譲渡後の費用負担ができないこと、返還には応じられないことなど、詳細に明記する必要があります。
安易な譲渡は、愛犬も不幸になってしまいます。
B.里親詐欺
人気犬種や希少犬種、流行のミックス犬などの里親になるふりをして、譲受け後に販売をする里親詐欺も多発しています。
無償譲渡で譲り受け、繁殖犬としてつかう違法繁殖者も多くいます。
見極めはとても難しく、騙されて不幸になってしまう動物が多くいますので、個人間での譲渡の際には必ず避妊去勢を済ませ、譲渡後1年程度は定期的に近況確認をする必要があります。
C.動物虐待
動物虐待を目的とした譲受けをする人が後を絶ちません。
犬に限らず猫や小動物の里親に名乗り出て譲受け後音信不通になり、変わり果てた姿で保護される犬猫が多くいます。
見知らぬ人に命を託すということは、どのような人なのかを慎重に見極めなければ犯罪の被害にあうのは動物たちなのです。
保護された動物たちは不幸中の幸いですが、悪意による里親詐欺で引き取られ、人知れず虐待によって命を落としている動物がたくさんいます。
D.面会、報告トラブル
譲渡契約時に、定期的な近況報告をお願いしている場合。
定期的な面会をお願いしている場合に、年数が経過してくると里親さんからの連絡が途絶えることがあります。
譲渡契約書に書かれている内容であっても、手放した犬に定期的に会わせてほしいという希望には、何年にもわたり対応してくれる里親さんは多くありません。
幸せに暮らしていることが分かり、新しい家族の一員として受け入れてもらえていることがしっかり確認できれば、長期間にわたる面会や報告の強制は現実的ではありません。
譲渡後の報告、確認は1年程度が望ましいと言われています。
里親さんとの、人間関係にもよりますので、できる限り良好な関係を築く必要があります。
E.返還トラブル
一度、里子に出した愛犬を、環境が変わり飼育できるようになったからと言って返還要求する方がいます。譲渡時に契約書を交わし、里子に出した愛犬は2度と戻りません。
一度でも手放してしまえば、家族として戻ってくることはありません。
泣く泣く手放した愛犬への気持ちや、愛情は消えることはないかもしれませんが、譲渡したとき、愛情をもって引き取ってくださった里親さんの気持ちを踏みにじるような返還要求はしてはいけないことです。
3.愛護団体や動物ボランティアに引き取ってもらう
全国の愛護団体、個人の動物ボランティア、どちらも収容動物であふれかえっています。
個人の飼育放棄(愛犬を手放すこと)に対応してくれるところは少ないかもしれません。
- 躾がしっかりできている
- 人懐っこく人間が大好き
- 他動物とも上手に暮らせる
- 病気がない(治療中ではない)
など、里親さん募集をする際に問題となる行動や、病気がない犬であれば、引き取り後に譲渡会やインターネットなどで里親を探し、新しい家族を見つけてもらえることもあります。
引き取りなどはしてもらえない場合でも、譲渡会へ参加させてもらえたり、里親募集の注意点や、見極め方などのアドバイスをもらえたりする場合もあります。
特に譲渡契約書は個人で作成すると、漏れや不備が出てしまうので、アドバイスがあれば個人での里親募集にも役立ちます。
4.購入したブリーダーさんに引き取ってもらう場合
愛犬をシリアスブリーダーから購入した場合、まずブリーダーさんへ相談してみましょう。
ブリーダーさんには、これまで飼い主になった方や、同じ犬種の里親さんになっている方の情報もあります。やむを得ない事情で手放さなければいけない場合でも、信頼できる次の飼い主さんへ託してくださる可能性が高まります。
※シリアスブリーダーとは、犬種の特徴を最大限に引き出し、より良い個体を産み出すために、愛情をもって飼育、繁殖をしている犬舎を指します。無理な繁殖、無計画な繁殖、ペットショップへの卸販売専門ブリーダーは、シリアスブリーダーではありません。
ペットショップで購入した場合でも、出身犬舎が分かる場合があります。
ですが、直接対面販売を行わないブリーダーはシリアスブリーダーではなく、引き取ってもらえたとしても、繁殖に回されたり転売されたり、さらなる不幸を招きかねません。
シリアスブリーダーは、誰にでも犬を販売するわけではなく、飼い主さんと十分なコミュニケーションを取り【任せられる】方にしか販売しません。
対面販売を行わず、ペットショップに託すということは、商品として犬を出荷している業者と同じです。
5.有料終生飼育施設、有料ホームなどへ預ける場合
飼いきれなくなった犬を、有料で引き取ってくれる民間運営の施設があります。
年額、数万円~数十万円や引取り料一律数万円~数十万円など、金額も施設によって大きく異なります。里親募集の代行業者(有料~数十万円)もあります。
このような施設に預ければ、たくさんの犬たちと終生施設内で暮らしていくことになります。
ですが、一般家庭とは大きく異なり、1頭1頭十分な愛情を注がれて生きていける場所ではありません。
寝るときや決められた時間以外は、それぞれの犬舎に入り一人で過ごします。飼い主さんと一緒に寝転んでテレビを見るような環境ではないことは、知っておかなければいけません。
6.各市町村の保健所、愛護センターへ持ち込む場合
飼い主によるペットの持込み=殺処分依頼は、特別な理由がなければ覆ることはありません。
飼いきれない、引取り先もない、捨てるよりは保健所へと持ち込まれる方が後を絶ちません。
保健所や愛護センターも、収容動物でいっぱいです。
何の罪もない犬を、飼い主の都合で命を絶つなどこれほど非情なことはありません。
保健所は、犬を引き取ってくれる=生かしてくれる行政機関ではないことを理解しましょう。
全国では、飼い主からの持込みであっても、その命を新たな飼い主さんへ繋ぐために、ボランティアの方々が懸命に活動しています。
全国各地で、動物愛護センターが設立され、できる限り殺処分をしない取り組みが進んでいます。
ですが、それでも、収容施設には限りがあり、収容数をオーバーしたり施設内で他犬から感染症などが蔓延したりすれば、高い確率で殺処分になってしまいます。
愛護センターや保健所では、民間の動物愛護ボランティアとの連携が進み、積極的な譲渡活動をしてくれている市町村もあります。
ですが、あくまでも一度持ち込んでしまえば【いつ殺されても良い】というサインをして愛犬を捨てることになります。
持ち込む前に、職員さんへ相談することをお勧めします。
全ての愛護センター、保健所の職員さんが対応してくれるわけではありません。ですが、殺処分や遺棄といった最悪の形ではなく、別の選択肢があることを教えてもらえるチャンスがあります。
かかりつけの動物病院などでも、里親募集の相談ができる場合もあります。
犬を手放すということ
一度は終生適正飼育を約束して、家族に迎え入れた犬を手放すということは【命への責任を放棄する】ということになります。
日本ではペットは【所有物】としての扱いになり飼い主を失うということは【死】に直結します。
やむを得ない事情、万が一のことは誰にでも起こりうることです。
飼い主さんが、適正飼育をできない環境であるにもかかわらず、ペットを手放さず幸せな暮らしをさせてあげられない状況であれば、手放すという苦渋の選択も愛犬にとっては幸せに繋がることもあります。
愛犬にとっても、飼い主さんにとっても別れは訪れてほしくないこと。とても悲しく苦しいことです。ですが、手放す愛犬の命を繋ぐ選択があるということを忘れないでほしいのです。
そして、それは無責任な飼い主ではなく最後まで愛犬に愛情をもって責任を持てる選択だということです。
里親探しや、愛犬の預け先を見つけたり施設へ入れたりと選択肢はあり、どれも選ぶのが難しいことだと思います。慎重に、判断しなければいけません。
そんなときは、どうか一人で抱え込まずに専門知識がある人へ相談してみてください。
保健所や動物保護団体、ボランティア活動者など、なんとか愛犬の幸せを願って託そうとしている飼い主さんに、多くのアドバイスをくれます。
まとめ
愛犬を手放さなければならない【やむを得ない事情】とは、飼い主さん自身が健全な生活ができない切迫した状況や、飼い主さんの死亡、事故。
また、家族構成の変化で愛犬にとって望ましい環境での飼育ができない事態のことを指します。
愛犬の幸せは、まずは飼い主さん自身が犬を適正に飼育できる余裕がある環境にあることが大前提です。
〝病気になったからいらない″〝吠えるからいらない″〝思ってより大変で飼いきれない″など、このような身勝手な理由で飼育放棄することは、許されないことです。
愛情をもって育ててきた飼い主さんだからこそ、手放すという苦渋の決断をしなければならないとき、その先の愛犬の幸せを考えて選択できることがあります。
まずは、命を繋ぐためにはどんな方法があるのか?どんなことに注意したらよいのか?
それを、多くの飼い主さんに知っていただけたら嬉しいです。
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男性 匿名