対戦車犬(地雷犬)とは?
犬が好きな人や、愛犬家でもあまり聞いたことがないかもしれない「対戦車犬」という存在。
対戦車犬というのは、第二次世界大戦中に、ロシア・ソ連にかつて存在した軍隊である赤軍が開発、利用した動物兵器のひとつです。
その名の通り、敵軍の戦車攻撃用に訓練された犬で、「戦車犬」「爆弾犬」「地雷犬」などとも呼ばれます。
対戦車犬は、背中に爆薬と起爆スイッチとなるレバーを背負わされ、レバーを垂直に立てた状態で敵軍戦車に向かって走るよう訓練されます。
戦車の下に潜り込んだところでレバーが倒れ、起爆スイッチが作動して爆発し、戦車を破壊するのです。
犬の機動力の高さに着目してつくり出された動物兵器で、実際にソ連側の記録では300もの敵戦車を破壊したという記録が残っています。
しかしながら、その正確性はあまり高いとは言えず、訓練を積んでいる対戦車犬であっても、走行中の戦車には近づくことができなかったり、爆音におびえて逃走、または自陣に戻ってきてしまったりということも、少なくなかったそうです。
対戦車犬(地雷犬)の訓練方法
対戦車犬の訓練には、現在の犬のトレーニングにも頻繁に使用される学習理論である「オペラント条件付け」が用いられました。
条件反射とも言われることがありますが、標的となる戦車の下に犬のえさを置き、空腹状態の犬を放つことで、戦車の下に潜り込むことを教えていきました。
戦車の下に潜り込むことで、空腹が満たされ条件付けがされましたが、訓練の中で自軍の戦車を利用していたため、実践でも自軍の戦車の下に潜り込んでしまい、自爆するという失敗などもあったようです。
そのため、戦車そのものによる条件反射ではなく、敵であったドイツ軍の戦車がエンジンに使用していたガソリンのにおいに反応して、攻撃をしかけるようすり込むを行うようになりました。
対戦車犬(地雷犬)への対抗策
失敗も多く、やや扱いにくい兵器・武器でもあった対戦車犬ですが、その爆破の威力は非常に高く、攻撃対象であったドイツ軍も警戒していました。
サイズが小さく機動力のある犬は、走り込んでくる姿が確認されても、そこから攻撃を防ぐことは容易ではなかったためです。
そんな対戦車犬に対し、ドイツ軍戦車が対抗措置として搭載したのが火炎放射器。
炎や火がついた油を噴射する火炎放射器は、犬がおびえて逃げ戻る、または焼き払うのに十分な威力を持っており、多くの対戦車犬が攻撃に失敗するようになったり、自陣で自爆して被害を及ぼすようになったりしていき、敵軍への攻撃力を失っていきます。
この火炎放射器による攻撃で、大パニックを起こした対戦車犬たちが、ソ連軍に甚大な被害を与えたことがきっかけで、1942年の戦闘を機に姿を消していきました。
対戦車犬(地雷犬)についてのまとめ
戦争時などに開発、利用される動物兵器は、犬以外にも様々なものが見られますが、やはり多くの場合、失敗に終わったり、すぐに対抗策が取られるようになったりして、長い期間使用されることはないようです。
また、人間の特攻隊などと同様に、戦争の被害者であり、悲劇の元ともなるため、それを利用する軍や国は批判の対象にもなるのです。
実際、対戦車犬は第二次世界大戦でソ連赤軍以外にもアメリカ軍が使用しましたが、攻撃はほぼ失敗に終わり、実績はあげられなかったと言われています。
さらに、イラク戦争後に反政府武装勢力が対戦車犬と似た爆弾犬を使用した際には、イスラムの戒律に反する行為として、市民から強い批判が寄せられたそうです。
戦争に関しては、ここで簡単に語ることができるようなものではありませんが、どうか今後、また愛すべき犬たちが人間の手先の武器となり、命を奪われていくようなことがないことを切に願います。