犬には「人間の病気」を発見する能力が備わっている?

犬には「人間の病気」を発見する能力が備わっている?

警察犬や災害救助犬、麻薬探知犬など優れた嗅覚を利用して活躍する犬たちが数多く存在します。そして犬の嗅覚はそれだけにとどまらず「人間の病気」の発見にも応用され、さらなる可能性に期待が寄せられていることをご存じでしょうか?

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬の病気発見能力①ガン

ダルメシアンの横顔アップ

人間に比べ、百万倍から一億倍優れていると言われている犬の嗅覚。ただ匂いを強く感じるだけでなく、非常に繊細に、多種多様な匂いをかぎ分ける能力にも優れているのが特徴です。

その能力によって、犯人の足跡を追いかける警察犬や、生き埋めになっている人を探し出す災害救助犬、空港税関で働く麻薬探知犬や、銃探知犬などがいますが、人間の病気を発見することもできるということが近年分かり、様々な研究が進められています。

その中でも、特に今注目を集めているのがガン探知犬の存在。ガン、つまり悪性腫瘍は死に至ることもある非常に恐ろしい病気のひとつで、かつては不治の病とも言われていました。しかし近年では、早期発見・早期治療によって完治する可能性や生存率が高まるとされています。

ガン患者は、VOCという揮発性有機化合物による匂いがガンを持っていない人と異なることが分かっており、ガン探知犬と呼ばれる犬は、その匂いをかぎ分けることで、ガンの存在に気がつくことができると推測されています。

監修獣医師による補足

VOC(Volatile Organic Compounds)とは、常温常圧で容易に揮発する有機化合物の総称で、生体においても様々な代謝の結果として細胞で産生されています。尿や呼気、汗、糞便などから検出することが出来、その構成の変化は代謝の変化を反映しているとされています。

ガンだけではなく病気になると代謝が変化するため、VOCの構成も変わり、それを匂いの変化として犬が検知できるわけです。VOC由来の匂いの変化を検出して病気を検知するために、ガン探知犬だけではなく匂いセンサーも研究されています。

獣医師:木下明紀子

犬の病気発見能力②糖尿病(低血糖)

鼻にピントが合っているビーグル犬

原因はいくつかありますが、糖をうまく代謝することができず、様々な不調を引き起こす糖尿病。インシュリン注射などで糖のコントロールを行いますが、その管理がうまくいかず、血糖が低下しすぎて、低血糖状態になってしまうことがあります。

低血糖発作を起こすと、意識が朦朧としたり失神してしまったりすることなどがあり、危険な状態になりますが、発作を起こす前にそれを嗅ぎ取ることができる、低血糖発作探知犬の存在も話題になっています。

現時点では、オーストラリアで行われた研究によって、低血糖状態時の汗に含まれるアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの成分の匂いを嗅ぎ取って、探知していると考えられています。

この匂いを嗅ぎ取り、低血糖状態を探知した際には、対象者の服のすそを引っ張ったり、その家族を連れてこようとしたり、吠えたり、落ち着かずにうろうろしたりする行動が見られたようです。

監修獣医師による補足

上記の「低血糖状態時の汗に含まれるアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの成分の匂いを嗅ぎ取って、探知している」との研究結果は、2002年9月に開催された欧州糖尿病会議にてオーストラリアの開業医Alan E. Stocks氏によって発表されました。

その他にも、2016年7月には「低血糖時の呼気には、イソプレンという物質が2倍に増える。」という研究結果が発表されています。なぜ低血糖時にはイソプレンが増加するのかは分かっていませんが、犬は人間の呼気中のイソプレンを嗅ぎ取れるため、この物質も犬が低血糖を探知できる原因になっている可能性が考えられます。

獣医師:木下明紀子

犬の病気発見能力③てんかん発作

みつあみの女の子とゴールデンレトリバーの後ろ姿

突然ひきつけや痙攣、意識障害を起こすてんかん発作。
特に、幼児期から学童期に発症しやすい疾患で、正しい治療を行うことで成長に従って治っていく良性のてんかんが比較的多いとされています。

しかしながら、その発作がいつどのようなときに起こるかわからないというのが厄介なところで、特に小さな子供ほど、家族などまわりの人間が常に目を離すことができない状態に陥ってしまいます。

そこで注目を集めているのが、“サービスドッグ”の一種でもある、てんかん発作予知ができる犬の存在です。てんかん患者と24時間生活を共にし、てんかん発作の数十秒から数時間前にそれを探知して、本人や家族に知らせるという行動を取ります。

そうすることで、事前に薬を飲んで発作を抑えたり、倒れてしまわないように座ったり横になったりして休ませる、また大型犬の場合には犬に寄りかからせて倒れるのを防ぐ、などの対処を行うことができるのです。

そして、てんかん発作予知犬の存在は、発作そのものや転倒に伴うケガなどを防ぐだけでなく、「いつ発作が起こるかわからない」という患者の不安やストレスが軽減し、癒し効果で発作の回数が低減するなど、様々なメリットがあるとされています。発作を起こしている時や後にも、犬が周囲に助けを求めたり、毎日の薬を飲むことをリマインドしてくれたりもします。

犬の病気発見能力についてのまとめ

女性の肩に手を乗せて顔を近づける犬

犬の嗅覚は非常に優れており、人間にとってもその能力が様々な場面で役立てられています。。また、人間の「最良の友」である犬は、てんかん発作の前などに見られる人間の行動のささいな変化をも感じとることができます。

現在では、ガンや糖尿病などを匂いによって探知する犬がいますが、その他の病気についても探知することができるか、世界中で研究が進められています。

アメリカでは2004年に設立された「Dogs for Diabetics」などの低血糖探知犬育成機関が数多く設立され、日本でも少数ですが低血糖探知犬が育成されています。また、まだ研究段階ではあるものの、マラリア探知犬の研究なども始まっています。

マラリアに感染するとどのような匂い成分の変化があるのかは分かっていませんが、一日履いた靴下の匂いでマラリア感染の有無を嗅ぎ分けられるそうです。

犬の嗅覚による病気発見能力については、まだまだ歴史は浅いものの、様々な探知犬によって病気を無症状の段階から検出できる可能性と、匂いを利用した病気を検出する機械の開発にも役だつことから、これからさらに注目される分野であることは間違いないでしょう。

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