犬はなぜ「家族を順位付けする」と言われているのか?
つい最近まで犬は家族を順位付けしているという考えが一般的で、今でもそのような見解を持つ人が多くいますがなぜそのように考えられているのでしょうか?それは犬の祖先がオオカミであるということが定説だったことが大きな理由。オオカミは群れ社会を形成し「アルファ」と呼ばれるリーダーをトップに置いて階級社会を築いて生活してきました。そのため犬にもその気質や本能が残っており、家族を群れと考えてその中でアルファ=リーダーを決めてその他家族も順位付けしていると考えられていたのです。
しかし、近年のDNA研究などからオオカミそのものが犬の祖先であったわけではなく、オオカミも犬の祖先とされる動物から共に生まれ、進化、変化をしてきたものであったと考えられるようになってきました。同じ動物をルーツにしている動物にはジャッカルやコヨーテなどもいると考えられており、それぞれさまざまな交配をくり返すことで進化してきたとされています。犬の祖先がオオカミであるという定説に異論が唱えられ、ルーツやイエイヌの行動などから現代の犬は明確な順位付けを行っていないのではないか、と考えられるようになってきているのです。
犬は順位ではなく損得で行動している
「お父さんの言うことはきかないから下に見ている」「子供にはお腹を見せないから服従していない」などということはこれまで多くの飼い主から聞いてきましたし、そう感じる行動を犬が見せることも確かです。
しかし、犬の思考の傾向や行動をよく観察しているとそれらの行動は順位そのものではなく、単純に「状況判断」を行っているだけとも考えられるのです。犬は自分に関係する損得を非常に気にする動物です。人間の間で「損得勘定で行動する」などというと怪訝な目で見られてしまうかもしれませんが、動物にとってそれは全くおかしなことでも軽蔑すべきことでもなくごく自然なことです。犬はとても賢く、状況を正確に判断して誰のそばにいて、どんな振る舞いをすれば自分の望みが叶えられるのかということを理解しているということ。
お父さんの指示に従わないのは従わなくても怒られないしおやつももらえるから、家族の食事時になると子供のそばから離れないのは食べ物が落ちてくることが多いから…。犬にとってはただそれだけの理由なのです。家族の中でお母さんの言うことを聞きやすいのは、お母さんは指示に従うまで絶対にご飯の時「よし!」と言ってくれないから。犬は私たちの行動や意思を思っている以上に把握しています。何をすれば最短で望みが叶うかと考えているので、指示にすぐに従った方がいい人や従わなくても怒らない人、などと区別しているのです。
順位付けだと誤解されていた行動とは?
お腹を見せる
お腹を見せることは服従の姿勢だと考えられ、強制的にお腹を出させて組み伏せそれを受け入れさせることで人間がリーダーであると認めさせるなどと言うしつけも行われていますが、それはややナンセンスだと考える研究者も増えてきました。確かに敵意を持っている相手などにお腹を見せることはあまりありませんが、リーダーと認めていなくても遊びの中でお腹を見せることは多々ありますし、逆に「お腹なでてよ!」という主張のためにお腹を出すこともあります。
先を歩く
お散歩の時にリードを引っ張らせてはいけない、ドアから先に出してはいけない、などいうことも順位付けに関連させて考える人がいますが、これもあまり関係のないことです。確かにリードを引っ張らせるのは犬の体や飼い主への負担からやめさせた方がいいですし、ドアから先に出すことは危険回避のために防いだ方がいいでしょう。
人より高いところに座る・寝る
人と同じベッドで寝ることやソファなどに乗って人より高い位置にいようとすることも自分の方が上の順位だと主張するため、とされてきましたがそれもどうやらあまり関係はなさそうです。もちろんソファやベッドに飼い主が乗ったら犬が怒る、などということになれば問題ですのでトレーニングや関係性づくりを行う必要がありますが、高い位置にいるからといって自分が上だなどと考えている犬はそう多くないはずです。
リーダーではなく頼れるパートナーになろう!
犬は祖先であるオオカミと同じように、家族を群れとして順位付けを行っているという考えは少しずつ変わってきています。もちろんまだまだ分からない部分もあるので、順位付けを行っている犬も中にはいるかもしれません。また、明確な順位付け自体は行わなくても、特定の家族に対して優位性を示す犬や指示に従わない犬というのは数多くいます。
実際、私たち飼い主にとって犬の行動が順位付けであるかどうかということはあまり重要なことではなく、また厳格なリーダーである必要もないと思います。飼い主の言うことをきかない、自分の主張ばかりを通そうとしてくるなど犬の行動に困ったことあればもちろんその修正のためのトレーニングは必要です。また、犬にとって飼い主が頼れる存在であるということもとても大切。全ての指示を有無を言わさず従わせるリーダーではなく、お互い歩み寄り合って気持ちよく生活を共にできるようなパートナー、家族になることが犬にとっても飼い主にとっても幸せなことなのだと思います。
ユーザーのコメント
40代 女性 匿名
多くの愛犬家の皆さんは、人間の自己満足のためにただ命令に従わせる為にワンコと暮らすことを選んだわけではなく、ワンコと共に生き、癒し癒され豊かな生活を送りたいと思っていると思います。
ワンコには、いろいろな説があると思いますが、
一緒に暮らしていると人とかなり似通った感情を持ち合わせていると感じます。
子犬から成長の過程で、ワンコは飼い主さんに一生懸命歩み寄ってくれているのではないでしょうか。