犬が地震前に見せる異常行動は「宏観異常現象」のひとつ
「地震大国」と呼ばれるほど地震の多い国である日本は、大地震が起こることも少なくありません。そして大地震が起こったあとには、地震発生前に「地震雲を見た」「地鳴りが聞こえた」などという報告が数多く寄せられます。
このように特別な機器などを用いることなく、人間の感覚で感知できる地震の前兆現象を「宏観(こうかん)異常現象」と言います。宏観異常現象と地震の因果関係は科学的には裏付けされていませんが、動物の異常行動も宏観異常現象のひとつです。
実際、1995年1月の阪神・淡路大震災発生後に日本愛玩動物協会が行った調査によると、犬は25%以上、猫は39%以上が地震発生前に異常行動を見せたといいます。
また、2011年3月に発生した東日本大震災後に麻布大学の研究チームが行った調査では、犬の約19%と猫の約16%が地震の前に何らかの異常行動を見せたという調査結果が出ています。
では具体的に、犬は地震が起こる前にどのような異常行動を見せるのでしょうか?犬が地震前に見せる異常行動はさまざまですが、今回はその中から3つご紹介していきます。
犬が地震前に見せる異常行動
①異常に吠える・鳴く
日本愛玩動物協会の調査では、阪神・淡路大震災発生前に「異常に鳴いた」犬は44%に上っています。犬はもともと吠える動物です。しかし、何の理由もなしに吠えることはなく、警戒、興奮、ストレス、不安、恐怖、痛み、要求など必ず吠える理由があります。
ですから、犬が地震の前に異常に吠えたり鳴いたりするのは、地震が起こることを察知して、不安や恐怖を感じるからかもしれません。また、飼い主さんに危険を知らせるために吠えるとも考えられます。
②外に出たがる
「阪神淡路大震災前兆証言1519!」(弘原海清/編著・東京出版)には、阪神・淡路大震災前に見られた宏観異常現象がまとめられており、犬や猫の異常行動についても触れられています。
その中で、室内飼いの犬がやたら散歩をせがむので飼い主が散歩に連れて出たところ大地震が起きたなど、地震発生前に犬が外に出たがった例が複数記録されています。
地震前に犬が外に出たがる理由は定かではありませんが、地震の前兆を察知した犬が飼い主を家から外へ連れ出すための行動ではないかという説もあります。
③言うことを聞かなくなる
いつもはきちんと飼い主の言うことを聞く犬が急に言うことを聞かなくなるというのも、犬が地震前に見せる異常行動のひとつです。飼い主に噛みつくこともあります。
こうした行動を起こすのは、地震が起こることを察知した犬が恐怖や不安、興奮などによって混乱してしまうからではないかと考えられているようです。
普段は飼い主に忠実な愛犬が急に言うことを聞かなくなったり、噛みついたりしたときはもしかすると、これから起こる地震を察知しているのかもしれません。
犬が地震前に異常行動を見せるのはどうして?
犬や猫などの動物たちが地震の前に異常行動を見せる理由については諸説ありますが、地震前に発生する電磁波を感知しているからではないかという説があります。
地震が発生する前は地盤に圧力が加わり、歪みが生じて電磁波が異常発生します。動物たちはこれを感じ取り、それに反応しているのではないかと考えられているのです。
オオカミに近い犬種が電磁波に敏感
東京農業大学農学部の太田光明教授は、犬や猫、イルカ、カラスなどさまざまな動物に電磁波の刺激を与え、その反応を見る実験を行っています。犬は30頭につき1頭の割合で電磁波に反応し、震度5以上の地震の前に吠える、暴れるなどの異常行動を見せるといいます。
そして、飼育状態が野生に近い犬が電磁波に反応しやすく、バセンジー、シベリアン・ハスキー、柴犬などオオカミに近い古い犬種に顕著な反応が見られるそうです。
まとめ
犬は地震の前に異常に吠える、外に出たがる、言うことを聞かなくなるなどの異常行動を見せることがありますが、これらの行動は地震の前にだけ見られるものではなく、日常でも見られる行動です。
そのため、犬や猫などの動物の異常行動を地震の前兆と捉えることに否定的な意見もあります。しかし、地震の前の動物の異常行動を地震予知に役立てようとしている研究者たちが日本にも海外にもます。
いつか、動物による地震予知システムが完成する日がやってくるかもしれませんが、今大切なことは、もしものときに愛犬の命を守れるようにしておくことです。日頃から、大地震などの災害に備えたしつけや健康管理、迷子対策、愛犬用の避難グッズの用意をしておきましょう。