そもそも動物へのエンリッチメントとは?
「犬へのエンリッチメント」とか「環境エンリッチメント」という言葉がよく聞かれるようになり、耳にしたことがあるという方も増えてきたと思います。けれどそもそも「エンリッチメント」って何なのでしょうか?
エンリッチメントは「enrich=強化する、豊かにする」という言葉の名詞形で、動物に関することでエンリッチメントという言葉が使われる時は「動物福祉という観点から、動物が本来あるべき姿に近づけるように飼育環境に変化を与えたり、脳や感覚を刺激するような工夫をすること」を指します。
エンリッチメントを付加することで、飼育される動物の問題行動の減少や、身体と精神面両方の活性化などが期待されます。
ここでは愛犬へのエンリッチメントとしての具体的なヒントをいくつかご紹介します。
1.身体的なエンリッチメント
一番最初に頭に浮かぶのは散歩などの運動だと思いますが、毎日15分ほど近所を歩くだけの散歩では犬の生活を豊かにするためのエンリッチメントとは呼べません。
散歩をしながら、安全な場所では走ったり止まったりを繰り返す、段差や階段のある場所をわざと歩く、障害物を飛び越える、などを可能な範囲で取り入れてみましょう。
可能であれば、アジリティやドッグディスクなどのドッグスポーツのレッスンを受けてみることは身体と脳両方への理想的なエンリッチメントになります。
おもちゃで遊ぶ時も、犬におもちゃを与えっぱなしにするのではなく、おもちゃをツールとして一緒に遊ぶことで、犬にとって身体にも脳にも刺激になります。
もし環境が許せば、犬に「ここなら掘ってもいいよ」という場所を与えて、たまに好きなだけ地面を掘らせてあげるのは、犬にとって最高のアクティビティーになります。
2.脳へのエンリッチメント
頭を使うことなく散歩に出る時以外は一日中昼寝しかすることがない生活を想像してみてください。最悪ですよね?退屈で刺激のない生活は脳の老化を早めたり、問題行動の温床になります。
犬にとっても「問題を解決する」というのは脳にとっての良い刺激になります。パズルタイプのおもちゃで遊んだり、中に隠されたトリーツを取り出す方法を考えることは手軽な脳へのエンリッチメントになります。
伏せた紙コップの中に隠したトリーツを探すなど簡単なことも良い刺激です。いろいろ工夫するのもまた楽しいですね。
3.社会的なエンリッチメント
犬は人間と同様に社会的な生き物です。犬同士の正しい挨拶の仕方、安全な遊び方を身につけることの他にも、飼い主さん以外の人間と触れ合うことも犬にとっては良い社交のひとつです。子犬のうちから『社会化』が大切と言われる理由です。
もちろん犬によっては初めての犬や人と触れ合うことが苦手な場合もあるので、決して無理はさせず、その犬に合ったエンリッチメントを見つけましょう。
4.感覚のエンリッチメント
犬の感覚と言えば最初に頭に浮かぶのは嗅覚ですね。最近人気の高いノーズワークなどは嗅覚と脳への最高のエンリッチメントです。本格的なノーズワークでなくても、家の中でどこかに隠したトリーツの欠片を探すゲームなども効果的です。
留守番中などに落ち着いたクラシック音楽やオーディオブックを流して犬に聴かせることは聴覚への刺激になります。これらの音が犬を落ち着かせ、問題行動を減少させることは過去に多くの研究が発表されています。
音楽などの刺激を与える場合は、四六時中犬に聴かせ続けるのではなく、静かな時間を作ってメリハリを作ることも大切です。
5.食事のエンリッチメント
嗅覚の項目であげたトリーツの欠片を探すゲームをもう少し発展させて、通常の食事の半量くらいををコングなどに仕込んでどこかに隠し犬に探させるゲームは狩猟の代替行為にもなる楽しいアクティビティーです。
また、いつもと違う味や歯触りの食べ物を与えること自体も犬にとっては刺激になります。お腹の調子のこともあるので、最初は少量から始めることが大原則ですが、犬だっていつもと違うものを味わうのは大切なことです。
まとめ
犬へのエンリッチメントについて5つのヒントをご紹介しました。
エンリッチメントなどというと何やら難しい感じがしますが、要は「犬は本来どういう生き物か?」ということをベースに考えると自然と答えが出てきます。
またいつも「これは犬にとって楽しい刺激になるかな?」ということを意識してみると、毎日の散歩や食事で工夫するポイントも見えてくるかと思います。
愛犬の心と身体を元気で若々しく保つためにも、エンリッチメントを意識しておきたいですね。