犬の「えっ?」という面を明らかにする研究
犬と暮らしている人なら、犬が時々ズルいことをしたり、様々なアピールで人間を思い通りにしようとしてると感じることがありますよね。でも犬は本当にそういう作戦を立てて行動しているのでしょうか?
スイスのチューリッヒ大学の研究チームによって、犬のそんな一面が実験によって明らかになりました。
なんとも興味深いというか、おもしろいというか、とにかく犬への愛が深まるのは間違いない、そんな研究結果をご紹介します。
犬が人間を出し抜こうとする!?
さて、そのおもしろい実験の内容は次のようなものでした。
実験に参加する犬たちの前に、3つのケースが置かれます。ケースの中は以下の通りです。
- 1つは犬が大好きなトリーツ
- 2つめはそれほど好きではないトリーツ
- 3つめは空っぽ
犬たちはどのケースに何が入っているか(または入っていないか)を理解しています。
次に犬たちは、「2人の人間」をそれぞれにトリーツケースの前に連れてくるように指示されます。3つのケースのうち、どれを選ぶかは犬に任されています。
人間のうち1人は「協力者」もう1人は「競争者」の役割が与えられています。
「協力者」は連れてこられたケースの中に入っているトリーツを毎回必ず犬に与えます。「競争者」は連れてこられたケースの中に入っているトリーツをすべて自分のものにします。
実験結果
実験初日、犬たちは明らかに競争者よりも協力者をより多く自分のお気に入りトリーツの前に導いてきました。
実験2日目には、競争者をお気に入りトリーツの前に連れて来る回数がどんどん減っていき、反対にあまり好きでないトリーツや空っぽのケースの前に競争者を導いて来るようになりました。
ケースの中のお気に入りトリーツが競争者に取られてしまわない限りは、自分がそのトリーツを手に入れる可能性が残っていると理解しているようでした。
お気に入りトリーツを手に入れるための戦術
ケースの中に入っているものを与えてくれる協力者はほとんど常にお気に入りトリーツのところに連れて行き、トリーツを奪ってしまう競争者は非お気に入りトリーツか空っぽのケースに連れて行く。
これらの行動は、犬は協力者と競争者をきちんと区別できていて、人間をどこに連れて行くかという柔軟な調整ができており、さらにわざと相手の誤解を生む行動で戦術的に人間を操ることができるということを示しています。
人間を操ると言っても、お気に入りのトリーツを手に入れるため一生懸命考えているんだなあと思うと、なんだか犬が余計に愛おしくなる気がしませんか?
まとめ
チューリッヒ大学の研究者による「犬は人間に対して戦術的な欺瞞を使用することができるか?」という実験の内容をご紹介しました。
犬と暮らしていると、日常生活の中で犬がとても人間的な行動を見せることがよくありますね。けれどもそれは、たまたま表面的な行動が似ているだけで実際には違う意味や感情が込められているという場合も多々有ります。
そういう誤解をひとつひとつ消して正しく犬を理解するために、この研究のように「犬は何が理解できて、どのような行動を取るのか」を知ることがとても大切です。
犬を正しく理解することは犬の福祉の向上のためはもちろんのこと、また同時に犬と人間が安全に共生するためにも必要なことですね。
《参考》
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10071-017-1078-6