愛犬が先に亡くなるとは限りません
犬の寿命は犬種ごとに異なりますが全体的な平均寿命は14歳程度で、私たち人間よりもずっと短い命です。
犬の寿命を考えるとほとんどの場合、飼い主が愛犬の最期を見送ることになりますが、人生は何が起こるか分かりません。愛犬よりも飼い主さんの方が先に亡くなってしまうこともあります。
日本のみならず海外でも知名度の高い忠犬ハチ公は、毎日朝夕2回渋谷駅へ通い、亡くなった飼い主の帰りを10年もの間待ち続けました。ハチ公のように飼い主を亡くした犬は一体、飼い主の死をどう捉えるのでしょうか?
犬は飼い主の死を理解できるの?
犬が飼い主の死を理解できるのかはまだよく分かっていないようですが、一般的に犬には死の概念がなく、死に対する恐怖もないと考えられているようです。犬に死の概念がないのであれば、飼い主の死を理解することは難しいと考えられます。
ハチ公の飼い主の上野博士は東大農学部の教授で、朝いつも通り渋谷駅でハチ公に見送られたあとに大学で急死してしまいました。しかし、飼い主の死を理解できないハチ公は、「きっと帰って来る。また会える」と信じて、雨の日も風の日も駅で飼い主の帰りを待ち続けたのでしょう。
たとえ犬に飼い主の死が理解できないとしても、大好きな飼い主が自分の前からいなくなってしまったことへの悲しみや寂しさは感じるのではないでしょうか。ハチ公も上野博士が亡くなってから数日間は、博士が最後に身につけていた服が置かれた物置に引きこもり、食べ物も口にしなかったと言われています。
海外の『忠犬ハチ公』たち
亡くなった飼い主の帰りをずっと待ち続けている、もしくは待ち続けたハチ公のような忠犬は、海外にも存在します。3カ国の『忠犬ハチ公』たちをご紹介します。
アルゼンチン:飼い主のお墓に寄り添い続けた犬
アルゼンチンには10年以上もの間、飼い主が眠るお墓に寄り添い続けた犬がいます。その犬の名はキャプテン。キャプテンと飼い主のミゲルさんが共に過ごした期間は1年ほどでしたが、犬と飼い主は深い絆で結ばれていました。
ミゲルさんが亡くなるとキャプテンは姿を消してしまい、家族はキャプテンを探し回りましたが見つけられませんでした。しかし家族はミゲルさんのお墓参りに行ったときに、驚くべき光景を目にします。家から姿を消したキャプテンはどうたどり着いたのか、ミゲルさんのお墓に寄り添うようにして座っていたのです。
家族は何度もキャプテンを家へ連れ帰ろうとしましたが、結局キャプテンはお墓へ戻ってしまったといいます。キャプテンがお墓から離れようとしなかった理由は、キャプテンに聞いてみないと分かりません。でももしかすると、「飼い主のにおいのするここで待っていれば、いつかまた飼い主に会える」と信じて待ち続けたのかもしれません。
キャプテンは墓地の管理人たちに愛され、食事を与えてもらったり、予防接種に連れて行ってもらったりしていたといいます。11年間飼い主のお墓に寄り添い続けたキャプテンは、2018年2月18日にミゲルさんのお墓の横で息を引き取ったそうです。
ブラジル:病院の前で飼い主の帰りを待ち続ける犬
ブラジルのサンパウロ州のとある町では、亡くなった飼い主の帰りを病院の前で待ち続ける犬がいるといいます。犬の飼い主はホームレスの男性で、口論の末に刺されて病院に搬送されましたが、残念なことに亡くなってしまいました。
男性の犬は救急車のあとを追い、2017年10月から何カ月も出入口の前で飼い主が病院から出て来るのを待ち続けています。忠実に飼い主を待ち続ける犬の姿に心を打たれた人々は、犬に食事や毛布を提供しました。そして、一度はシェルターに犬は保護されましたがそこから脱走し、また病院の前へ現れたそうです。
現在は病院の女性スタッフが犬の新しい飼い主になることに名乗りを上げており、あとは犬が病院の前を離れることができる日を待つばかりのようです。
アメリカ:アパートの前で飼い主が乗る車を待ち続けた犬
アメリカにも、帰らぬ人となった飼い主を2週間以上待ち続けた犬がいます。犬の飼い主は勤務先のコンビニで強盗に遭い殺害されてしまいましたが、そのことを知る由もない犬は、飼い主が車に乗って帰って来るのをアパートの前で待ち続けました。
犬は車を見かけるとあとを追い、飼い主の車ではないと分かると足を止め、途方に暮れたような様子を見せていたといいます。
アパートの住民たちは犬に食事や水を与えていましたが、犬は誰にも近づこうとはしませんでした。しかし、SNSでこの犬のことを知ったある女性が自分の犬を連れてアパートへ行き、1時間近くかけてようやく犬の心を開くことができました。
女性は犬を車に乗せ、自宅へ連れ帰って一時的に保護し、その後、亡くなった飼い主の弟が犬を引き取りたいと申し出たそうです。
まとめ
諸説ありますが、犬には死の概念がなく、飼い主の死を理解することはできないという考えが一般的なようです。そして、忠犬ハチ公のように亡くなった飼い主をずっと待ち続けた(待ち続けている)犬が存在することが、そのことを裏付けているようにも思えます。
来る日も来る日も亡くなった飼い主を待ち続けた(待ち続けている)犬たちの姿は、飼い主への愛は永遠であること、そして無償の愛とはどういうものなのかを私たちに教えてくれます。彼らが天国で飼い主さんと再会できることを願ってやみません。