犬と人間の意外な共通点
腸内微生物が生き物の健康に大きく影響することはよく知られています。
この分野の研究ではヒトおよびマウスが最も広く対象になっているのですが、このたびドイツの生物学研究所によって、イヌの大便サンプルを分析して、ヒト、マウス、ブタと比較し、それぞれの腸内微生物との関連についての研究が発表されました。
便サンプルの分析の結果から、ブタやマウスに比べてヒトとイヌの腸内微生物の分布や反応には共通する点が多いことがわかったのだそうです。
食事と腸内微生物、ヒトとの比較
便サンプルを採取し調査の対象となったのは、32匹のラブラドールと32匹のビーグルでした。それぞれのグループに同じ数の痩せ型の犬と体重過多の犬を含んでいます。
4週間にわたって全員が同じレギュラータイプのドッグフードを食べた後、犬たちは2つのグループに分けられました。1つのグループは高タンパク質低炭水化物の食事を、もう1つのグループは低タンパク質高炭水化物の食事を4週間与えられました。
この間に合計129の便サンプルが収集され、100万個以上のイヌの腸内微生物の遺伝子が解析されました。
比較の対象となるヒト、マウス、ブタの微生物遺伝子は既存のデータが用いられました。
比較の結果、ヒトとイヌの腸内微生物は完全な一致ではないのですが、同じ種類の非常によく似たものであることがわかりました。
また食事の内容に変化があった時、タンパク質と炭水化物のレベルの変化に対するイヌの腸内微生物の反応は、科学者が想定しているヒトの腸内微生物の反応と類似していました。
さらに、体重過多のイヌでは食事の変化に対する微生物の反応がより顕著でした。
腸内微生物の共通点から生まれる可能性
イヌとヒトの腸内微生物に共通点が多いということは、人間の腸内微生物についての様々な研究や、それが栄養とどのように関係しているかなどの研究に、イヌがマウスやブタよりも優れたケーススタディである可能性を示しています。
また食事の変化による腸内微生物の反応が、体重過多の問題解決にどのような役割を果たすのか理解するきっかけにもなるでしょう。
肥満の問題は現代人とペットのイヌに共通する深刻な問題で、その解決策がどちらも同じで、2つが一緒に研究できるなら理想的です。
まとめ
従来、ヒトの腸内微生物の研究にはマウスが用いられることが多かったのですが、このたびのドイツの生物学研究所の研究で、マウスやブタよりもイヌの腸内微生物がよりヒトのそれに似ているということが判りました。
しかし考えてみれば、犬が数万年前に家畜化されて以来、その期間のほとんどを犬たちは人間と食べ物を分け合っていたのですから、イヌとヒトの消化器官が類似の進化を遂げたとしても不思議はないわけです。
イヌとヒトの腸内微生物の類似性も偶然ではなく、犬と人間の長く深い関係の産物だと思うとますます犬への思いが強くなるような研究結果ですね。
今後も腸内微生物については、ラブラドールとビーグル以外の犬種での分析、さまざまな異なる条件での研究などに拡大していくそうです。人間と犬の健康のために期待したいですね。
《参考》
https://microbiomejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40168-018-0450-3