※写真はイメージです
おばあさんが拾ってきた「捨て犬」
主人の家にいた、元捨て犬の「チャッピー」のお話です。私の主人が小学生のときですから、約20年前になります。
当時、小学生の主人が「どうしても犬が飼いたい」とずっとねだっていたそうで、そんな孫のためにおばあさんがどこからか拾ってきた犬が、チャッピーでした。
チャッピーが本当の家族になるまで
最初は犬小屋で飼っていたのですが、「ずっと外にいるのはかわいそう」ということで、寝るときだけはリードをつけて家にいれることにしました。
そのあと、今度は「ずっと外でも家でも繋いだままはかわいそう」と、リードも外し、ついに放し飼いに。
でも、外に飛び出しては周りの迷惑になりますので、家の周りをフェンスで囲むようにして、脱走しないようにしていました。結果的に脱走することは一回もなかったそうです。
家族が増えたことで、とても大変でもあり、楽しくもあり、そうやって少しずつ家族になっていきました。
お母さんとチャッピー
お母さんはチャッピーの世話をぜんぶ引き受けていました。チャッピーのことを考えて、毎日工夫を凝らしたごはんを用意していました。「もう一人の息子」のために一生懸命で、主人が家を離れてからはますます愛情を注いでいました。
お父さんもお母さんも仕事をしていたので、いつも家でお留守番をしていたのですが、お母さんが帰ってくる何分か前には帰ってくるのがわかっていて、いつも玄関で待っていました。
お父さんとチャッピー
お父さんは最初、チャッピーを飼うことは反対でした。それはきっと仕事の関係で暗いうちから働くので、お母さんのことを心配して反対していたのだと思いますが、かわいい息子のため渋々飼うことを了承したそうです。
でも、一緒に生活していくうちに、チャッピーの存在がお父さんにとっても「もう一人の息子」となり、そこには愛情が生まれていました。
お母さんが忙しくて散歩に出かけることができないときは、お父さんがピンチヒッターで散歩に出かけていました。
その散歩も最初は近所の周りを回る程度だけだったのですが、最終的には近くにある山に散歩に出かけては一緒に過ごすことが多くなりました。
チャッピーのきもち
チャッピーはとても頭のいい犬で、
- 家の中ではおねしょはしなかった
- 食卓の上に置いてある食べ物は、絶対に食べなかった
- 台所には絶対に入らなかった
台所に入らなったのは、小さいときに「ここには入っちゃだめ」とヒトコト言っただけでそれをずっと守っていました。
チャッピーはいつも家族のことを大切に想ってくれて、育ててくれた恩を忘れてはいませんでした。また、家族以外(お父さん・お母さん・主人)にはあまり懐かなかったチャッピーですが、自分を拾ってくれたおばあさんが来ると、いつも大喜びで飛びついていました。
拾ってくれた恩を忘れず、「拾ってくれてありがとう」と言っているようだったそうです。
チャッピーとのお別れと今思うこと
そんなチャッピーも、10年前に天国に逝ってしまいました。
亡くなった時、1日亡き骸を家に置いたのですが、最後の姿を見ようとたくさんの方が逢いにきてくださいました。その中にはまだ元気だったおじいさん・おばあさんも来てくれました。私たちも東京に住んでいたのですが、すぐに実家に向かって、チャッピーの最後の姿を見ることができました。
亡くなった顔は、とても幸せな時間を過ごせたんだなと思わせる、とっても穏やかな顔でした。
お父さんもお母さんも「もう一人の息子」を亡くした悲しみはいまだに消えておらず、
"チャッピー以上の犬はいない"
といいます。
悲しみに暮れる彼らを見て、私たちが新しく家族を迎えようといっても、決して首を縦にふりません。それだけ「家族」を失った悲しみは大きなものです。
チャッピーを拾ったおばあさんも2年前に亡くなりました。
きっとチャッピーは、天国で大喜びして大きくしっぽをふりながら、おばあさんと幸せな時を刻んでいるのだろうなと思っています。