犬の前庭とは
犬の耳の奥には『内耳』と呼ばれる部分があります。
カタツムリのような形の「蝸牛」とプレッツェルのような形の「三半規管」が骨のなかに収まっています。
蝸牛は蝸牛神経につながり、音を脳に伝るという働きがあり、また、三半規管は、前庭神経につながり、体の位置情報を脳に伝え、体のバランスを保つ役割を持っています。
そして前庭は、姿勢や体のバランスを保つ平衡感覚を司る働きをする器官です。
したがって、前庭に異常が起こると、頭や体の位置をコントロールできなくなります。
犬の前庭疾患の原因
前庭疾患
耳の中の「前庭」に障害が起きて、様々な症状が起きる病気です。
耳の奥の前庭神経に異常が起こるために発症します。
耳に収まる器官は、音を聞く働きの他、体のバランスを保つ働きをする器官も含まれます。
その中でも前庭は、体のバランスを保つのに重要な器官でのため、前庭疾患になった犬は、足元がふらついたり、体のバランスをとれなくなるのです。
突発性前庭疾患
突発性というのは原因不明という意味で、突然に中~高齢期の犬に起こります。
犬種は問わず、どの犬にでも起こりうる病気です。
発症して24時間以内に症状のピークを迎えて、症状は軽度から重度になるものまで様々みられます。
犬の前庭疾患の症状
めまい、よろめき、旋回運動
めまいやよろめきを起こし、フラフラと歩くようになります。
めまいやよろめきは、治療しなければ3~6週間ほど続きますが、その後は回復する場合と重症化する場合にわかれます。
歩こうとしてもバランスがとれないために、グルグルと回転するように歩く「旋回運動」がみられます。
重度の場合は、歩けなくなり倒れこみます。
頭が傾く「捻転斜頸」
首が片方に傾く「捻転斜頸」をおこします。
回復後も後遺症として、わずかに首が傾いたままになることがあります。
眼球がグルグルと回転する「眼振」がみられます。数日たてば、症状がみられなくなる場合と、改善が見られない場合があります。
視野が回転するので、食欲不振や嘔吐する症状をおこします。
犬の前庭疾患に関する予防と治療法
予防法
突然発症するため、予防ができない病気です。
ただし、遺伝性の場合もあるため、親犬や血統内に発症している犬がいた場合は、気を付けてあげると良いでしょう。
治療法
対症治療として、食欲がなくなった場合には、点滴をして栄養を補給します。
炎症が除外できていない場合には、抗生物質やステロイドを投与して炎症を抑えます。
また、甲状腺ホルモンを内服することで、改善の効果があったとの報告もされています。
前庭疾患の犬を自宅でケアする方法
動物病院での看護よりも、いつも一緒に暮らしている飼い主さんや家族の看護のほうが犬にとっては、治りが早い可能性があります。
治りを早くするためにも、愛犬の周りの環境を整えてあげると良いでしょう。
犬のための住環境を考える
めまい・よろめき予防をする
めまいやよろめきを起こして倒れてしまう場合は、愛犬がぶつかってケガをしないように、愛犬が行動する範囲にイスやテーブルを置かないようにします。
動かせない家具には、やわらかい布などでカバーをします。
狭い所を塞ぐ
愛犬が入りそうな家具と家具の間の隙間を塞ぎます。狭い所に入って抜け出せなくなることを防ぎます。
足腰への負担を減らす対策をする
フローリングなどの滑りやすい床のままではなく、滑り止めのカーペットなどを敷いて、愛犬の立ったり座ったりする動作の負担を減らします。
愛犬が自力で歩こうとする意思があるならば、歩行補助のハーネスを着用させ、歩くトレーニングをします。
歩行補助ハーネスは、飼い主が愛犬を補助する持ち手がついています。
足腰が弱った愛犬が車に乗り下りするときには、スロープを使い足腰に負担がかからないようにします。
また、ソファに上がる愛犬には、小さな階段を用意します。
重症度になってしまったら
前庭疾患の症状が徐々に重くなっていくと要注意です。
脳に異常がある可能性があるため、改善することはむずかしくなる場合もあります。
起き上がれなくなり、寝たきりになる場合もあります。
痴呆の症状が併発した場合
痴呆になると、徘徊がみられるようになります。
部屋の中に大きめのサークルを作っておくと、飼い主さんの目が届くところで、自由に歩かせてあげることができます。
移動のサポートをしてあげよう
動けなくなっても、痴呆になったとしても、外の刺激は大切です。
いつも散歩で歩いていた道やちょっと遠くまで行くために介護用ペットカートを活用しましょう。
介護用ペットカートは、お散歩を始め、動物病院への通院、寝たきりの愛犬を運べます。
大きさは、愛犬の大きさに応じてサイズがあります。
床ずれに備えよう
寝たきりになった愛犬には、床ずれを起こしにくい柔らかい素材のベッドや低反発マットを用意してあげてください。
カバーは洗濯のしやすいものを選びます。
寝たきりになってしまったら
動きが鈍くなってきたと思っていたら、寝たきりになる可能性が高くなります 。
愛犬の介護はどのようにしたらよいのでしょうか。
十分なごはんと水を与える
寝たきりになってしまったら、まずは、食餌と水をきちんと摂らせるようにしなければなりません。
食餌をしないことで、体力が低下しますので、1日分の食餌を数回に少しずつ分けて与えます。
口を開けるのを嫌がる場合には、流動食を与えます。
愛犬の口の横からスポイトを使って入れましょう。
スポイトは動物用のものがありますので、愛犬の口のサイズに合ったものを獣医さんと相談して使うようにしてください。
床ずれ対策は必須
床ずれは寝たきりになると、同じ姿勢のまま体を動かすことができなくなるので肩・腰・足首・かかと・頬骨の骨が飛び出して体重のかかる部分にできやすいです。
筋肉や皮下組織の血行障害を起こし、壊死を引き起こして床ずれ部分の皮膚が破れてむき出しになります。
床ずれの予防法は?
床ずれはできてしまうと治すことは難しいです。
寝たきりになったなら、定期的に向きや体位を変えてあげ、愛犬の体を動かすときに、体の様子や皮膚の状態を観察し、ノートに記入しておくと、獣医さんへ詳しく説明ができます。
血行を良くするために、マッサージをしてあげてください。
関節が硬くなると、寝返りを打たせるときに痛がります。
マッサージは愛犬が嫌がらない程度に、リハビリを兼ねて関節を伸ばすように、飼い主さんが優しい声をかけながら撫でるように血行を良くしてあげましょう。
床ずれはどのように進行するの?
圧迫されている部分の毛がすり切れたり、抜け毛がおおくなります。毛が薄くなった部分が赤くなり、痛がったりかゆがります。
赤くなった皮膚の部分が、白っぽく変化し、触るとブヨブヨしてきます。
その後、水ぶくれが破れて皮膚がただれ、体液がでてきます。
皮膚の異常が見られたらすぐに獣医さんに診せるようにし、処置をしてもらいます。また、家庭でも処置が出来るように獣医さんから処置の方法を教えてもらいます。
もし床ずれになったら
重要なことは、愛犬を清潔に保つことです。排泄物をすぐに取り除き、体に付いたものは優しく拭き取ります。
皮膚に負担がかからないように、引きずったり、こすったりしないようにします。
2時間を目安に寝返りを行います。皮膚の状態によって寝返りの時間を調節します。
足の関節はタオルを巻いて、骨どうしが当たらないようにします。床ずれの治療は、皮膚の状態によって処置が変わるので、獣医さんに相談します。
まとめ
いつまでも元気いっぱいの愛犬でいてほしいと思っていても、突然の発症で家庭での看護・介護が必要になる時がやってきます。
寝たきりになると、飼い主さんの体力や気力が必要になってきますが、愛犬に対する愛情は変わることはないはずです。
飼い主さんの気配り、心配りは必ず愛犬に届いています。
厳しい現実といえますが、飼い主さんのもとで長く生活ができるようにしてあげましょう。
ユーザーのコメント
40代 女性 TIKI
記事にあるように寝たきりになってしまうと床ずれなどの問題も出てくるので、いまから対処法を勉強しておかないといけませんね・・・
30代 女性 チョコママ
でも寄る年波には勝てず、お散歩の帰り道がちょっとゆっくりになったように感じています。毎日共にする散歩は、実は人間と犬の双方の健康の元。家族の健康の一端は愛犬にも支えられている事に感謝せずにいられません。
愛犬にもいつまでも元気でいて欲しいですが、万が一「前庭疾患」等を発症した場合でも、人間側の体力と気力の要ることではあるのですが、できるだけ長く我が家でケアできればと思います。
20代 女性 ゆん
突発性のものは安静にしていれば軽度になることが多いですが、その他の原因であれば治療しなければいけないので動物病院にかかりましょう。
慢性的な嘔吐が続いたり寝たきりになったりしてしまうと見てる私達もつらくなりますよね。特に褥瘡は1度なってしまうとほとんど治らないことが多いです。骨盤や肩甲骨付近にはクッションなどをかませてあげると良いです。
40代 女性 匿名
50代以上 女性 りんLOVE
30代 女性 のんたん
朝から飲まず食わず。
旋回してたり眼球が定まってなかったら。
母に伝えると老犬なので病院連れて行くのは可哀想と連れて行こうとしません。
私は病院連れて行かない方が可哀想だと思ってます。
40代 女性 スズキ
まあ、でも犬と人間では前庭疾患が起こる原因自体も違うかもしれませんしね。
厳密にはメニエールと前庭疾患は違うものですが、めまいや吐き気などの症状は似ていると思うので、これを愛犬も味わうと考えたらつらいですね。人間は知識があるので「少し休めば落ち着く」とか「ここで無理して体に負担をかけないようにしよう」などと考えられますが、犬にとってはわけもわからず苦痛がやってくるんですからね。本当にかわいそう。
もしも愛犬が発症してしまったら、飼い主が日常的にうまくコントロールしていかないといけないと考えるとなかなか大変だなと思います。
40代 女性 ブランママ
50代以上 女性 りぼんママ
突然立てなくなりビックリすると思いますが、我が家のように元通り回復する場合もあるので、飼い主さん頑張ってあげてください。
50代以上 男性 まはろ
50代以上 男性 ココア
一点気になることがあります。便通やオシッコは不規則ではなかったのですが、ここ2日間はどちらもしません。体を支えてあげてもしようとしません。このまま様子見で良いのか不安です。したくなったらペットシート以外でしても、漏らしても良いと思っていますが、不安を感じています。したくなったらするものなのか、どなたかご意見いただけると幸いです。
30代 女性 ぴー
一週間ほど前から首が右に曲がって立てなくなり、それでも立とうとしてか眼が回るせいか上半身を持ち上げては倒れてを繰り返しています。
病院では前庭疾患と言われました。
年も年だし良くはなりませんよ、とも。
住んでいる場所が田舎であるため動物病院も設備が乏しく、体調が悪くても大抵が『年ですからねぇ』で済ませられてしまいます。
もし、他の病気だったら、もっと詳しく調べて貰える病院だったらと思うと苦しいです。
20代 女性 ワンさん
30代 女性 ちよ
今日午前中に突然ふらつき、嘔吐失禁、捻転斜頸、眼球の揺れ等があり病院へ。診察の結果前庭障害との診断でした。ただ、下痢(血便)もあり、それは前庭障害の症状とは違うなので一晩様子見。帰宅後も血便、水を飲んでも水も吐く、失禁、目が回るのが続きとても苦しんでいます。投薬など今のところありません。可哀想で可哀想で…励ますことしかできません。
皆さんのように早く収まることを願うだけです。
女性 mmss
女性 匿名
先日前庭疾患の診断を受けました。
1回目はふらつきと首の曲がりがあり
かかりつけ医で処方薬をもらい投薬3日程度で回復しました。
そこから1ヶ月程度経過し再発したようで
2回目は症状が重く、立ちあがるが平衡感覚が無いのですぐ転倒してしまい
立っていられないので酔って嘔吐し食餌給水排泄ができない状態に。
血液検査の異常はなく再度投薬を開始。
現在フルフルしながら立ちあがり水が飲めるまで回復しました。(治療5日目)
重症の場合水を手やスポンジやスポイトで飲ませたり
食事を柔らかくして与えたり(気持ち悪くて食べられない場合も)
オムツも必要になり急遽色々買い込みました。
普段お洋服を着たりしない子は嫌がってしまう場合もあるそうで
オムツが脱げないように押さえるサスペンダーやマナーパンツが必要なことも。
うちの子は嫌がらずオムツはいてくれていますが
身体にフィットする使いやすいものを探すのに時間がかかりました…
突然の介護は気が動転しますし体調悪い子を連れて買い物はできないので
老犬を飼っている方は元気な時からペットショップやホームセンターの品揃え(介護用グッズは置いてない場合もある)や
服やオムツのサイズがどのくらいなのか等をチェックしておくのも良いかと思います。
50代以上 男性 じいじ
40代 女性 りん
14歳で突然倒れました。首の右傾きが激しいです。
でも治るかもしれないんですね。
ありがとうございます。
不安で不安で涙が止まりませんでしたが
ちょっとだけ希望が見えました。
50代以上 女性 まゆ
50代以上 女性 匿名
50代以上 女性 アビママ
16歳7ヶ月の姉妹、14歳の男の子
今回、16歳7ヶ月の妹の方が、前提疾患となりました。
姉も、男の子も、姉妹の母親も、前提疾患の経験はあり、軽く済んだので、今回も軽く済むのかなと、思っていたら、今回は、結構眼振が酷く、斜頸も酷く、立っていてもくるくる旋回してしまいます。
ありがたいのは…ご飯は自分で…完食できることです。
なんとか、早く眼振が落ち着いて、前の元気な子に戻って欲しい限りです。
50代以上 女性 ライライ
医者に歩けないでしょと言われ、お腹の具合が悪くて歩かないと思っていたら原因不明の前庭疾患と診断。原因不明の方がまだ安心だからとも付け加えました。それは脳の異常じゃないからだそうです。
症状としてテンポの速い眼振、左に首が曲がったまま、オシッコするも転倒。歩くのもふらつく状態。入院か通院か選択を迫られ迷わず通院を選択しました。結局4日点滴治療で元気になりました。ところが3日経過してまたゆっくりな眼振とふらつき。今回は食欲があるので注射で3日。その後6日経って今朝また眼振とふらつき。最初の発病してからまだ2週間程度。めまいは人間も辛いのでまた病院行ってきます。
50代以上 女性 匿名
昨年11/25に僧帽弁閉鎖不全症から肺気腫ん起こし入院し、その後投薬治療継続しております。その後投薬治療のかいあって無事過ごせておりましたが、昨日より様子がおかしいなぁ〜と、今日の朝から吐きけがあり、いつの頃か朝身支度を整えてあげる時、左の耳の後辺りをブラッシングする際、とても嫌がり、何故かと不思議に思っておりましたが、我が子も前庭疾患かも知れないと感じました。先程病院に行って
また肺気腫の前兆かもしれないと、一連のお話を担当医にお話しして、前庭疾患とはまだ言われておりませんが、2、3日様子見とお薬処方して頂き帰路に着きましたが、皆様の投稿から、推測するに、左側に傾く傾向があること、吐きけが出てきた事、ご飯を食べ無い事、硬い所を好んで寝る事など、前庭疾患の症状に類似しております。
2、3日で治る事を願って、ただ、側で見守る事しか出来ませんが、心を強く持ちたいと思います。たくさんのワンちゃんとご家族様が味方だと思って努力して行こうと思います。ありがとうございます。
50代以上 女性 ララママ
次の日 かかりつけの病院で 検査の結果 耳の内耳炎からの前庭疾患と言われてました。
吐き気が酷く水飲んでも戻す 食事は 全く受け付けず 再度 病院で点滴と吐き気どめの注射して貰ってどうにか吐き戻しは無くなったのですが食事は全く受け付けず 病院食の餌を購入して シリンジで 1日 少量を数回に分けて食べさせました。いつも食べいる餌は お湯で戻して 裏ごししてシリンジで 食べさせて6日目でやっと 少しですが 手作りササミジャキーが 食べれる様になりました。
発症してから 12日目でいつもの食欲に戻りました。
心臓が 悪いので 余り無理はさせれないのですが 元気になりました。