犬の腫瘍の種類とその概要
犬の腫瘍には、「良性」と「悪性」の2つの種類に分けられます。
「良性」の場合は、進行度合いがゆっくりで、他臓器などに転移することが少ないため、命をおびやかすことはほとんどありません。
いっぽう「悪性」の場合は、進行度合いがとても早く、他臓器に転移するため、もし診察時期が後れ、既に手遅れの場合は、命を危険にさらす場合もあります。
この両ケースは、病理検査を行う事で詳しく調べて判別する事ができます。
良性腫瘍とは
そもそも、良性腫瘍とは、何らかの理由で、細胞が異常に増え、それがふくらんだり、固まったりする状態の事です。 腫瘍が膜に覆われていることが多く、腫瘍とそうでない組織の境界がはっきりする場合が多いです。
特徴として、このシコリや腫れは急激に大きくなることはなく、ゆっくりと大きくなっていきます。
ほとんどは経過観察になりますが、患部が大きくなり過ぎた場合などには、摘出手術をするケースもあります。
脂肪腫
脂肪が腫瘍化したもので、カラダのどこにでもできる可能性があります。
その多くは楕円形をしていて、やわらかく弾力のあるかたまりが皮下にできます。
太った高齢犬(7~8歳以上)がかかりやすいといわれています。
腺腫
毛や皮膚をなめらかにする皮質を分泌する腺(皮脂腺)が、なんらかの理由でつまったり、化膿することによって発症します。
悪性の“腺癌”と症状が似ています。
肛門周辺、耳の内部、まぶた、指の間などにできやすく、皮膚の表面が盛り上がります。
上皮腫
カラダ全体をおおっている上皮にできる腫瘍のため、カラダのどこにでもできる可能性がありあます。
皮膚の表面がドーム型に盛り上がります。
悪性腫瘍とは
シコリや腫れが急激に大きくなります。
数週間~数か月で見た目(触った感じ)にも大きさの違いが分かるほどです。
ただ、なかには見た目にあまり変化がないケースもありますので、目安の一つとして考えてください。
乳腺腫瘍
乳腺組織にコリコリとしたシコリができます。
50%が良性、50%が悪性なので、病理検査をおこなって判別します。
メス犬だけに発症する腫瘍だと思われがちですが、オス犬も発症します。
肥満細胞腫
体内に異物が侵入すると、アレルギー反応をおこしたり、局所が炎症をおこすことがあります。
これらは肥満細胞の働きによるもので、肥満細胞腫とは、この肥満細胞がガン化したもの。
太った犬がなりやすいということではありません。
良性の場合もありますが、悪性の場合は転移しやすい厄介なガンです。
扁平上皮ガン
扁平上皮細胞がガン化するため、カラダのどこにでもできる可能性はありますが、特に、爪の根本、口腔内、鼻の先端、耳介にできることが多いといわれています。
腺ガン
腺腫が悪性化したものです。
肛門周囲腺腫
肛門の周辺に、硬くなったシコリが発生します。
オス犬は良性であることがほとんどですが、メス犬の場合、悪性である可能性が高いといわれています。
悪性黒色腫(メラノーマ)
皮膚ガンの一種です。
多くが、口腔内や足先に発生します。
進行速度が速く、悪性度が強いガンといわれています。
黒っぽい色をしているのが特徴の一つです。
悪性リンパ腫
カラダの免疫機能をつかさどるリンパ系がガン化する、血液のガンの一種です。
ガン細胞は、特定の臓器に病巣をつくることはなく、増殖をつづけながら血液に流れ込み全身へ広がっていきます。
腫瘍の種類と種類ごとの主な症状
良性腫瘍と悪性腫瘍の症状は似ているケースも多く、その両者を見分けるには、病理検査で詳しく調べる必要があります。
この項目では、主に悪性腫瘍の症状について説明していきならが、良性腫瘍の症状にも触れていきます。
乳腺腫瘍
乳腺組織(10対あるオッパ付近)にシコリができます。
シコリの大きさはまちまちで、硬いものもあれば、あまり硬くないものもあります。
症状は、良性と悪性で違いはありますが、病理検査で詳しく調べてから判別します。
悪性の症状が出ていないからといって安心せず、乳腺組織にシコリを見つけたら、すぐに獣医師に相談してください。
良性の場合、シコリ以外の特徴的な症状はあまり見られません。
痛みを伴わないため、犬が患部を気にすることもありません。
ただ、乳頭孔から膿や血様、乳白色の液が出ることがあります。
リンパ節や他臓器に転移はしません。
悪性の場合、シコリが熱をもつことがあります。
また、皮膚表面が壊死したり、リンパ節や肺、その他の臓器に転移します。
腫瘍が大きくなる期間は、数か月~数年とまちまちです。
肥満細胞腫
肥満細胞が腫瘍化したものです。
この細胞は、カラダのあらゆる組織にあるため、どこにでも発症する可能性があります。
皮膚表面に症状が見られる場合は、虫に刺されたあとのように赤く腫れあがり、増殖とともにこぶ状になるものもあれば、潰瘍するものもあります。
また、内臓にできた場合は、発見が遅れがちになり、吐血や嘔吐といった症状が現れます。
悪性度が強く、とくに下半身にできた場合は注意が必要です。
摘出手術後も再発の可能性が高いガンだといわれてもいます。
扁平上皮ガン
扁平上皮細胞がガン化したもので、カラダのどこにでも発症する可能性がありますが、特に爪の根本、口腔内、鼻の先端、耳介にできやすいといわれています。
患部にシコリはみられず、治りにくい傷口のように見えるため、皮膚病と見間違われることが多くあります。
もし、皮膚病の治療を受けているのに、患部がただれていたり、一向に改善が見られない場合にはこの扁平上皮ガンを疑い、獣医師に相談してみるのがいいでしょう。
また口腔内にできた場合は、よだれが多くなったり、口臭がきつくなったり、出血などの症状が見られます。
腺ガン
分泌腺がガン化したものです。
カラダのどこにでも発症する可能性はありますが、特に肛門周辺、耳の内部、まぶた、指の間などにできやすいといわれています。
皮膚表面がなめらかに隆起してきます。
また良性のものを“腺腫”といい症状はとても似ていますが、腺腫に比べて、腫瘍は急激に肥大します。
肛門周囲腺腫
肛門の周辺に硬いシコリができます。
ほとんどがオス犬に見られ、メス犬のおよそ10倍近い発症率です。
しかし、そのほとんどが良性です。
また男性ホルモンが関与しているため、去勢をするとその発症率を下げることが可能だといわれています。
いっぽうメス犬に発症した場合は、悪性である確率が高いとされています。
犬がお尻を気にしてなめていたら、肛門周辺にシコリがないかどうか、チェックしてあげましょう。
また、シコリができたところを犬がなめつづけると、化膿し、出血を起こしたり、患部が破裂することもあります。
症状が進むと、排便が困難になることもあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
皮膚ガンの一種で、主に口腔内や足先に発症します。
特徴としては患部が黒色をしていることです。
また進行が早く、再発や肺に転移しやすい悪性の強いガンです。
鼻先にできることもあり、一見するとホクロのようにも見えます。
この場合は、患部を大きめに切除し病理検査を行い、転移の可能性の有無を確認します。
初期段階では、自覚症状はほとんどありません。
発見が遅れてしまい、犬が痛みを訴えるようになると、末期の状態である可能性が強まります。
さらに、咳や呼吸困難が見られる場合は、肺に転移している可能性も疑われます。
口腔内や足裏に、境目がわかりづらく、また色がまだらなデキモノを発見したら、すぐに獣医師に相談してください。
悪性リンパ腫
リンパ系のどこがガン化するかによって症状は変わりますが、犬の悪性リンパ腫の大半が、「多中心型」と呼ばれるもので、あご、胸、わきの下、あしのつけ根付近のリンパ節にシコリや腫れが見られます。
また、「前縦隔(胸腺)型」の場合は、苦しそうに呼吸をしたり、呼吸困難に陥ったりします。
その他、「消化器型」「皮膚(その他)型」などに分けられていますが、どの型の場合も、食欲不振、嘔吐、下痢、体重の激減、動きたがらないなどといった症状が見られます。
食欲不振のなかには、口に腫瘍ができていることも考えられるので、口腔内のチェックは大切です。
原因
原因はさまざま考えられます。
たとえば、ドッグフードに含まれる添加物(化学物質)です。
人間の食べ物には、食品衛生法などで使用できる添加物の基準が定められています。
ところが犬のドックフードのなかには、粗悪なものが使われていることもあり、それらがガン発症の原因の一つだと考えられています。
その他にも、ホルモン、遺伝、ウィルスなどの関わりも研究されています。
扁平上皮ガンなどは、紫外線による影響も懸念されています。
また人間同様、ストレスは免疫力を低下させるため、ガンの発症を高めてしまうといわれています。
腫瘍ができやすい犬
体力、免疫力が落ち始める高齢犬(7・8歳~)が、一般的にガンを発症しやすいといわれています。
しかし、若いからかかりづらいということはありません。
乳腺腫瘍の場合はメス犬が、また肛門周囲腺腫はオス犬(ボクサー、スコティッシュ・テリア)がかかりやすいといわれています。
また、白毛の犬は紫外線の影響を受けやすいため、扁平上皮ガンのような皮膚ガンにかかりやすいと考えられます。
予防と対策
飼い主さんが「もし自分が犬だったら、どっちがいいだろう…?」と考えたときに出てきた答えが、予防と対策につながります。
たとえば、食事。
自分たちがごはんを食べようと思ったら、化学物質や健康面が心配されるような素材は選びませんよね?もちろん、安全だと確信が持てる素材のほうを選ぶはずです。
ドックフードも同じです。
飼い主さんが一つ一つチェックして、安全性を確認して、厳選してあげることが大切です。
手作りのごはんなら、より安全ですよね。
また水も、自分たちが飲めるものをあげましょう。
ただし、硬水は避けてください。
硬水は尿結石をひきおこす場合があるので、必ず軟水をあげてください。
ストレスについても、人間と同じように考えてあげましょう。
狭いゲージに入れっぱなしにされたり、ひとりぼっちの時間が長かったりしたら、犬にもストレスはたまります。
たまったストレスは、人間と同様、発散することが大切です。
ストレスの蓄積は、免疫力の低下につながるからです。
また、自分で自分のカラダを噛むような自傷行為を起こすケースもありますので、しっかりとストレスを発散させてあげることが大切です。
犬が好きなことといえば、飼い主さんと一緒にいること。
飼い主さんとスキンシップをとること。
飼い主さんと一緒に散歩に行くことなど、飼い主さんの愛情がいちばんのストレス発散になります。
また、ブラッシングや口腔ケアなどは、愛犬のちょっとした異変(シコリや腫れなど)に気づくことができます。
毎日の習慣にしておくと、病気の早期発見につながり、さらには愛犬とのスキンシップがはかれ一石二鳥です。
最後に、信頼のおける獣医師を探し、半年に1回、あるいは1年に1回の健康診断をおすすめします。
そして、少しでも異変を感じたら、すぐに獣医師に相談してください。
治療法
良性腫瘍の場合は、手術や投薬を行わないケースが多いです。
しかし、患部が大きくなり過ぎて生活に支障が出るような場合は、摘出手術をおこなうこともあります。
悪性腫瘍の場合は、腫瘍の種類、浸潤度合、愛犬の年齢などによって、摘出手術をおこなうケースもあれば、見送ることもあります。
あるいは化学療法を用いたり、ステロイド剤による投薬がおこなわれたり、症状によって変わってきます。
獣医師の指示に従い、適切な治療をつづけることが大切です。
しかし最終的には、飼い主さんの判断が重要になります。
手術には全身麻酔が必要になりますので、愛犬のカラダにかかる負担は計り知れません。
腫瘍は摘出できても、健康が取り戻せない場合も考えられます。
信頼できる獣医師と相談しながら、愛犬にとっての最善の治療法を探してあげるといいでしょう。
ユーザーのコメント
40代 女性 momo
腫瘍には悪性・良性があって種類も様々ですが、しっかりとどんなものかを把握して早期に治療や対策を考えれば、決して悪い結果にはつながらないと思います。どうか前向きに進んでほしいと願っています。
40代 女性 こたママ
女性 コロ
ですが、うちの愛犬は再発しやすい体質だったようで高齢になってからもちょこちょこできていました。
30代 女性 匿名
11歳のヨークシャーテリアです。
10ヶ月前に足に腫瘍が見つかり悪性か良性かわからないから摘出手術をし病理検査をしましょうと言われ、良性でした。
今日、首のあたりにしこりがあったので病院に行くと、しこりの液を注射器で抜き顕微鏡で見たら前回と同じで、悪性か良性か分からないから早く摘出した方が良い、と言われました。
先生は切って検査に回さないと腫瘍は悪性か良性か分からない、と仰るのですが、切る前に分からないものなのでしょうか?
心臓が強くないため、全身麻酔は避けた方がいい、と言われていたのですが、すぐに切ろう(全身麻酔かけて)と仰るのでお世話にはなっている先生なのですが、少し不信感をもってしまい経験者の皆さんのお話が利きたく投稿致しました。
30代 女性 匿名
女性 ルーツ