国外からやって来る犬の伝染病への注意喚起〜イギリスとカナダの例

【獣医師監修】国外からやって来る犬の伝染病への注意喚起〜イギリスとカナダの例

様々なグローバル化の一環で人間はもちろん、犬が国境を超える事例も増えています。その結果、かつてはその地になかった伝染病が見つかっており警告が発せられています。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

イギリスで懸念されているリーシュマニア症

シーズーの前に置かれた注射器と薬剤

2019年4月、イギリスの獣医療専門誌に、犬のリーシュマニア症に関する警告が発表されました。リーシュマニア症は寄生性のリーシュマニア原虫によって起こる伝染病で、人畜共通感染症のひとつです。サシチョウバエというハエ、輸血、繁殖、国外への旅行などが感染の要因として関連付けられていますが、今までイギリス国内では報告されていない病気でした。

しかし、ある3歳のシーズーミックスが従来考えられていた感染の危険因子がなかったにもかかわらず、リーシュマニア症と診断されたことが警告のきっかけとなりました。このシーズーミックスの感染源は、6か月前に亡くなった同居犬であろうと考えられています。その同居犬はリーシュマニア症の多発地域であるスペインから輸入されており、亡くなった原因は重症のリーシュマニア症でした。

また、イギリスの別の地域でも、従来の危険因子を持たない犬がリーシュマニア症の2番目の症例として報告されています。この犬も国外どころか居住地の境を超えて旅行したことがなかったのですが、前年の夏に飼い主がスペインに旅行していました。はっきりとは分かりませんが、感染したハエが衣服や荷物に付いていた可能性が考えられています。

近年イギリスでは、南欧や東欧などイギリス国外で保護した犬の里親募集をする例が増えています。感染した犬が国内に入ってきた場合、犬同士の感染や犬から人への感染が強く懸念されるため、警戒が強まっています。

カナダで見つかったアジア型ジステンパー

ケージの中から外を見つめる子犬

ヨーロッパだけでなく、カナダやアメリカでは中国や韓国から救助された犬を本国に連れて来て里親の募集をしている動物保護団体があります。ワシントンポスト紙の報道によると、このような経緯で昨年カナダに輸入された犬の一匹が、これまで北米では報告されていない非常に伝染性の高いジステンパーウイルスを持っていたことが分かっています。

この犬は昨年10月カナダに到着したときにはすでに重篤な症状で、安楽死をさせなければならない状態でした。その後の検査で、この犬がアジア-1と呼ばれるイヌジステンパーウイルスの変種に感染していたことが分かりました。

検査を行ったコーネル大学のウイルス学研究室の科学者は、この問題を非常に深刻に捉えています。このジステンパーウイルスを持っていたのが、当該の犬1匹だけであったか、他の犬以外の感染の可能性のある動物と一緒に到着したのかが判断できないからです。もしも、この変種のジステンパーウイルスが野生動物に拡がってしまうと、もう打つ手がありません。

国外の犬を迎えるということ

横たわる犬の前足を握る人の手

人間が国境を越え、海を渡って様々な国を行き来するため、人間が未知のウイルスを運んでしまうことはあり得ることです。しかし、犬の場合は法で定められた予防接種も狂犬病に限られている国が多く、自分で症状の説明もできないため、人間よりもウイルスを運んでしまう可能性が高くなります。さらに保護犬の場合は、既往歴や元々の住環境などが不明なことも多く、リスクは増大します。

また保護犬だけでなく、アジアの国からオンライン販売を通じて北米などに輸出されている犬も少なくありません。これらの犬の大半はティーカップサイズと呼ばれる超小型犬で、ブリーダーの身元がはっきりしない場合もあるでしょう。

外国で過酷な環境にいる犬を救いたいと思う気持ちは理解できますし、そのために行動を起こすことは決して悪いことではありません。しかし、生き物を移動させることは常に感染症のリスクを含んでいること、そして犬を自国に持ち込めば、その犬に関する全責任は保護した者にあるということを肝に銘じてほしいと、獣医師や科学者、米国動物保護協会は強く警告しています。

また、国外から犬を迎えようと思う一般の飼い主に対しても、リスクの高さを十分に認識してほしいと訴えています。特に保護犬の場合、新しい家庭が必要な犬は国内にもたくさんいます。国外の犬に手を差し伸べたいなら、募金などの方法を考えるのが一番かもしれません。まして、パピーミルの子犬をオンライン購入するなどは、言うまでもないことですね。

まとめ

見上げる白い犬の顔アップ

イギリスやカナダで、国外から持ち込まれた犬の感染症が強く懸念されているというニュースをご紹介しました。幸い日本ではまだこのような事例は確認されていませんが、外来動物などを介して伝染する感染症は決して他人事ではありません。知識を持っておくこと、ワクチン接種をきちんと行うこと、定期的な健康診断など、基本的なことから確認しておきたいものです。

《参考》 https://www.sciencedaily.com/releases/2019/04/190404214750.htm
https://www.washingtonpost.com/science/2019/03/27/want-rescue-dog-overseas-it-might-carry-new-strain-disease-researchers-say/?utm_term=.6728dc534524

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