犬のフィラリア症を予防するには その薬と病気について

犬のフィラリア症を予防するには その薬と病気について

犬のフィラリア症とはどのような病気なのでしょうか。事前に病気の初期症状や予防方法を知っておくと、深刻な事態になることを避けられるかもしれません。今回の記事では、フィラリア症の感染経路や症状、予防する方法や予防薬の種類、感染した場合の治療方法についてまとめました。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬のフィラリア症とは

診察を受ける犬

感染経路

犬フィラリア症は「犬糸状虫症(いぬしじょうちゅうしょう)」とも呼ばれ、蚊を感染経路として犬にフィラリア(犬糸状虫)が寄生することで、心臓や肺動脈に深刻な障害が起こる病気です。

まず、蚊がフィラリア症にかかっている犬を吸血することで、蚊の体内にミクロフィラリアと呼ばれるフィラリアの赤ちゃんが移動します。ミクロフィラリアは蚊の体内で感染能力を持った感染幼虫にまで成長し、その蚊が別の犬を吸血するときに犬の体内へ入り込みます。犬に寄生した感染幼虫は成長しながら体内を移動し、最終的に心臓や肺動脈に寄生して成虫となります。

症状

  • 乾いた咳をする
  • 運動を嫌がる
  • むくみが出る
  • 腹水が溜まる
  • 血を吐く
  • 血尿が出る
  • 貧血を起こす
  • 呼吸困難になる
  • 失神する

犬がフィラリア症にかかると、初期症状として咳や元気の消失などの変化が見られます。成虫の寿命が約5~6年と長く、時間をかけて病状が進行するため、感染後数年経ってから症状が現れることも多いようです。

フィラリアの急性症状であるベナキャバ・シンドロームになるとフィラリア成虫が心臓と肺動脈にかけて詰まってしまうことで血液の流れが急激に悪くなり、機能不全による血尿や不整脈、呼吸困難などが起こります。多数の成虫が寄生している場合や病状が急変した場合は死に至ることもある恐ろしい病気であるため、事前に予防することが大切です。

検査の方法

検査は採血によって行い、心臓内にフィラリア成虫がいるかどうか、血液中にミクロフィラリアがいるかどうかを把握します。併せて、超音波などを使って心臓に寄生している成虫の有無や、寄生部位の弁の状態を調べます。感染が確認された場合は、犬の年齢やフィラリアの寄生状況に応じて治療方法を決めていきます。

犬のフィラリア症の予防

薬と犬

予防薬を投薬する

フィラリア症を予防するためには、予防薬の投薬が一番効果的です。フィラリア症の予防薬は駆除薬とも呼ばれており、薬を使って感染幼虫を成虫になる前に駆除することで病気の進行を抑えます。

処方されることが多い経口薬の場合、1カ月に1度の間隔で投薬します。感染幼虫が成虫になるまで約2カ月かかるため、毎月ほぼ決まった日に投薬することで感染幼虫を確実に駆除できると言えるでしょう。フィラリアが成虫となって心臓や肺動脈に入ると予防薬では駆除できないので、定期的に投薬するようにしてください。

一般的に投薬の時期は春から秋とされており、始めるタイミングは蚊が発生し始めて1カ月以内、終える目安は蚊が飛ばなくなってから1ヵ月後と言われています。蚊の発生時期は住んでいる地域やその年の気温によって異なるため、投薬期間も病院と相談して決めるとよいでしょう。

防虫グッズを使う

犬がフィラリアを媒介する蚊に刺されないよう、防虫グッズを利用するのも予防法の1つです。自宅で過ごす際や散歩の際は、蚊取り線香や蚊が嫌がる超音波の出る機械、アロマなどを利用して蚊が寄ってこないようにしましょう。

製品によって効果の程度は様々であり、蚊に刺されることを完全に予防することはできないため、予防薬などと併せて使用することが推奨されます。

感染リスクのある場所を避けて生活する

屋外での生活は蚊に吸血される危険が高まるため、蚊の発生する時期は避ける方が無難です。犬を室内飼いにしたり、散歩では蚊の生息しやすい川沿いや草むらなどを避けたりするとよいでしょう。

室内飼いをしていても蚊の侵入や吸血を完全に防げる訳ではないので、フィラリア症を完全に予防するためには予防薬の投薬も行ってください。

犬のフィラリア症を予防する薬

スポットタイプの薬を塗布される犬

  • 内服薬(チュアブルタイプ、錠剤タイプ、顆粒タイプ)
  • 塗布薬(スポットタイプ)
  • 注射薬

フィラリア症を予防する薬は、大きく3つの種類に分けられます。内服薬のチュアブルタイプは素材に牛肉を使用しているので、ジャーキーを食べさせる感覚で犬に与えることが可能です。塗布薬は、薬を皮膚に直接塗ることで感染幼虫の駆除と予防を行います。注射薬は1カ月に1度投薬する必要がある内服薬や塗布薬に比べ、有効期間が半年~1年と長いことが特徴です。

予防薬の値段は薬の種類や犬の体重によって差があり、受診する病院によっても異なります。例として、内服薬の1カ月分の料金は約900~2,500円、塗布薬は7回分で約8,500~14,000円、注射薬は1回で約10,000~20,000円程度です。フィラリア症予防以外の成分が含まれている薬を投与する場合はさらに値段が上がります。

フィラリア症を予防する薬は「要指示医薬品」であるため獣医の処方箋がないと手に入れることができませんが、通販サイトでは自宅への往診と投薬がセットになったプランが掲載されていることもあります。以下に予防薬の代表的なものをまとめました。

カルドメック

カルドメックには錠剤タイプとチュアブルタイプがあります。錠剤タイプはフィラリアの感染予防のみの薬で、妊娠中の犬にも投与が可能です。チュアブルタイプにはフィラリアの予防と消化管内線虫の駆除を行う成分が含まれています。

ネクスガード スペクトラ

ネクスガードには「ネクスガード」と「ネクスガード スペクトラ」の2つの種類がありますが、フィラリア症を予防薬する効果があるのは「ネクスガード スペクトラ」のみです。フィラリア症の予防薬とノミやマダニ、犬釣虫などの寄生虫の駆除薬が一緒になったチュアブルタイプの薬なので、一度の投薬で犬の体内外の寄生虫を予防することができます。

パノラミス

パノラミスは錠剤タイプの予防薬です。フィラリアを含む、ノミやマダニ、犬鞭虫などの6種類の寄生虫対策ができます。食事とともに投与することで最大の効果が得られるため、砕いた錠剤を犬のフードに混ぜて与えるとよいようです。

アドボケート

アドボケートはフィラリア症の予防と犬鉤虫などの線虫類やノミを駆除するスポットタイプの薬です。1カ月に1度、皮膚に直接塗布する必要があります。薬が流れて効果が下がらないよう、投薬後90分は水に濡れないようにする、4日ほどシャンプーを避けるなどの注意が必要です。

モキシデック

モキシデックには注射タイプと錠剤タイプの2種類があり、それぞれフィラリア症の予防成分のみが含まれています。注射タイプは1回の注射で予防効果が6カ月持続しますが、接種した部分を犬が痛がることがあるので、運動の内容や散歩の時間などは獣医の指示に従いましょう。

犬のフィラリア症の治療法

治療を受ける犬

フィラリア症に感染した時は、犬の年齢や全身の状態、成虫の数などによって内科的治療か外科的治療かを判断します。犬が手術や駆除薬に対応できないと判断された場合は、咳を抑えたりお腹にたまった水を除去したりするなどの対症療法しか行うことができません。また、心臓や肺に障害が起こった場合は、その後も治療を続ける必要があります。

内科的治療

寄生している成虫の数が少ない場合は、成虫用の駆除薬を用いて内科的治療を行います。死滅したフィラリアが血管に詰まって病状が悪化したり、治療前の肺動脈の状態によっては重度の循環不全に陥って死亡したりすることもあるため、投薬には慎重な判断が必要となります。

犬にフィラリア症の症状があまり見られない場合は、幼虫用の予防薬(駆除薬)を用いて感染幼虫を駆除しながら、成虫の寿命が尽きるのを待つという方法もあります。

外科的治療

検査の結果、フィラリアの成虫が大量に確認された際や緊急を要する場合は、外科的治療によって成虫を摘出します。頸静脈から長い金属の鉗子(かんし)を挿入し、心臓や肺動脈にいる成虫を釣り出す「釣り出し法」と呼ばれる手術が一般的です。犬に体力がある場合にのみ行われ、麻酔のリスクや手技の難しさもあるため、全ての犬に適応される訳ではありません。

まとめ

犬と女医

犬のフィラリア症は臓器に重大な障害をもたらす怖い病気ですが、きちんと予防をすることで防ぐことができます。感染後の治療で成虫を摘出できたとしても傷ついた臓器を元に戻すことはできず、治療においては様々なリスクも伴います。定期的な投薬や防虫グッズなどを用いてフィラリア症への感染を予防することが愛犬を守る一番の手段だと言えるでしょう。

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