犬の肺がんとは
犬の肺がん(肺にできる腫瘍)は原発性肺腫瘍の多くは悪性腫瘍だと言われています。原発性肺腫瘍は肺から発生した癌で、犬の肺がんの罹患総数のうち10%未満程度です。
犬の肺がんの多くは他臓器にできた腫瘍の転移による「転移性肺腫瘍」で、子宮、卵巣、乳腺、気管支、腎臓、骨、口腔内、甲状腺などにできた癌が血液によって運ばれ肺に転移します。
肺以外の臓器に発生した癌の継続治療中に肺への転移が発見されたり、全身に癌が転移したりする時には、肺への転移があるかどうかが、全身状態のステージの判断になることもあります。
扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)などで、肺への転移が認められる場合には短い余命を宣告されるケースが多くあります。
転移性肺腫瘍の場合、多臓器に発生した癌の影響で症状がみられることがありますが、原発性肺腫瘍では全く症状がみられないケースも多く、健康診断のレントゲン検査で偶然発見されたとい例も多くあります。
犬の肺がんの原因
転移性肺腫瘍の原因は多臓器に発生した癌の転移で原因は明らかですが、原発性肺腫瘍の場合は明らかな原因の特定には至っていません。考えられる原因は、人間と同じように下記のような様々な原因が考えられています。
- 受動喫煙
- 発ガン性物質の摂取
- 化学物質の吸引
- 遺伝や体質
また、発ガン性物資の吸引については短頭犬種の方が肺がんの発生率が高いという見解もあり、小型犬種よりも中型犬~大型犬、若齢犬よりも高齢犬の方が肺がんを発生する可能性が高いと言われています。そして、若齢犬での肺がんの発生は進行が早いのが特徴です。
犬の肺がんの症状
原発性肺腫瘍の場合、特に目立った症状がないことも多く偶然の発見が多いようです。多臓器に発生した癌の治療中であれば、肺への転移の有無を定期的に観察していくので、転移した場合の発見は早くなります。
症状が現れるケースでは下記のような一般症状がみられます。
《以下順に早期症状から末期症状》
- 咳、嗚咽
- 原因不明の体重減少
- 元気がなくなる
- 体力の低下、散歩を嫌がる、遊ばなくなる
- 嘔吐
- 発熱
- 食事を嫌がる
など
これらの症状は、肺がんでなくてもみられることがあり症状だけで犬の肺がんを特定することはできません。何らかの症状がある時には、できるだけ早く検査をうけて原因の特定をすることが大切です。
犬の肺がんを早期に発見する方法
犬の肺がんを早期に発見するには、定期的な健康診断が最も早期発見への近道です。特に高齢犬の場合には1年に一度の定期健診でレントゲン検査を受けることをお勧めします。
食欲の低下や、元気がなくなってきた、寝てばかりいるという状態を加齢による変化だと見過ごしてしまいがちですが、実は肺がんの初期症状だったというケースもあります。
また、稀ではありますが、原発性肺腫瘍の症状として手足の骨の異常がみられることがあります。歩きづらそうにしていたり、痛そうに足を持ち上げるしぐさをしたりすることがあります。
捻挫やケガを疑ってレントゲン検査をしてみたら肺がんが発見されたというケースもあります。レントゲン検査は予約がなくても、通常の外来診療でできますので「いつもと違う」と気になる症状がある場合にも、積極的に検査をうけて肺がんの早期発見につなげましょう。
犬の肺がんの治療
まずは、犬が肺がんであることの特定診断を行うためレントゲン検査が行われます。腫瘍が見つかった場合は、肺組織を針吸引して生検をします。
全身転移の状態で転移性肺がんの場合余命は無治療で2か月~半年程度。原発性肺がんの場合、手術で切除できれば2か月~2年程度の余命、化学療法などで半年~2年程度と言われています。癌の発生原因と治療方法によって余命が大きく変わります。
原発性肺がんの治療には手術が選択される
腫瘍の大きさや発生している場所、進行度を十分に精査して、肺腫瘍の切除によって快復を期待します。多発性肺腫瘍(肺のいたるところに腫瘍がある)、大きくなり過ぎて癒着している可能性が高い腫瘍、全身転移によるその他の症状によっては手術選択はできません。
ですが、悪性度の高い肺がんであっても腫瘍を切除した方が生存率は高まり、犬の生活の質の向上につながるケースが多いため、切除できる肺がんであれば外科手術が効果的な治療方法だと考えられています。
転移性肺がんの治療
手術で切除できない肺がんの場合に、効果的な治療法がないと言われてきました。転移性の肺がんの場合、手術ができないケースが多くあります。
また、肺に転移が見られる時点で余命が僅かであると考えられるため「手の施しようがない」と言われた経験がある飼い主さんも多くいます。
ですが、近年では抗がん剤治療や放射線治療、分子標的治療薬などの化学療法による治療で、転移性の肺がんの進行を抑え、余命が長くでき、生活の質の向上などに有効だとされています。
犬の肺がんの治療は設備の整った病院で行う
肺腫瘍の切除、抗がん剤治療などには、犬の経過観察や管理がとても重要です。また、犬の肺がんの状態を正確に詳細に把握するためには、整った設備と専門知識、経験豊富な獣医師が欠かせません。
ホームドクターのもとで肺がんと診断された場合、どの治療を選ぶかによってはセカンドオピニオンの選択や、専門病院の紹介をお願いしましょう。
犬の肺がんの予防法
すべての癌において、完全に予防法が確立されているものはありません。環境、食事、定期健診など、癌の予防として様々な情報があふれています。
環境
ストレスのない環境で生活させるがん予防。ストレスは自己免疫力を低下させ、癌の発生に大きく関係していると言われています。犬にとってのストレスとは大きく4つに分けられます。
- 愛情不足
- 飲み水、食事の不足
- 緊張状態
- 住環境の変化
虐待などで精神的ダメージを負っていたり、孤立していたりする環境は犬にストレスが大きくかかっています。また、常に喉が渇いて空腹の状態が続く生活は、ストレスだけでなく内臓へのダメージも大きくなります。
十分な睡眠もとれずに緊張状態が続きます。外飼育などで、他動物からの侵入や攻撃などに常に警戒しなくてはいけない環境も緊張が解けずに、大きなストレスがかかります。
そして、住環境の変化が多い犬は、全く環境の変化がない犬と比べると短命で病気になる可能性が高いことも分かっています。犬の肺がん予防として確立されているものはありませんが、ストレスをかけない生活をさせることはとても重要です。
食事によるがん予防
犬の体は、食べ物で大きな影響を受けます。人間と同じように、免疫力を高める食材やサプリメントなどを活用してがん予防
をしましょう。
免疫力をUP、がん予防、抗ガン作用が期待できる食材
- まいたけ
- 昆布
- ほうれん草
- アスパラガス
- アボカド
- しいたけ
- ブロッコリー
- ニンジン
- ひよこ豆
- トマト
- クランベリー、ラズベリー
- ハーブ類
がん予防に効果が期待できるサプリメント
- コルディM(冬虫夏草培養物、玄米)動物用の天然ハーブが配合されたサプリ
- ビガープラス(プロポリスエキス、アガリクス)注目が集まるアガリクスが配合されたサプリ
- ダイリンスーパーポリス(ユーカリ原生林のプロポリス使用)がん予防として人気が高い水溶性の高純度のプロポリスのサプリ
など
がん予防に良いと言われる食材を調べてみると気が付きますが、実はドッグフードに配合されている食材が多いのです。特に、スーパーフードやプレミアムフード、がん予防や免疫力UPに特化したフードには、がん予防に良いとされる食材が豊富に含まれています。ドッグフードとサプリメントを上手に活用することで効果が期待できます。
- タンパク質
- 脂肪
- 炭水化物
- ミネラル
- ビタミン
また、上記の5大栄養素と言われる必要栄養素は良質で新鮮な物を与え、バランスが最も重要です。日頃から食事と環境を整えて、定期健診などで体の状態を把握していくことが、癌の予防対策といえます。
まとめ
犬の肺がんは早期発見で多発性肺腫瘍でなければ、切除することが最善の治療方法ですが、大きくなり過ぎた腫瘍は切除ができません。犬の肺がんの治療では、適切な治療を受けさせてあげるためにも早期発見が大切です。
肺がんの症状として決定的なものがなく、様々な病気が疑われる症状の場合、念のためレントゲン検査をしておけば、早期発見につながります。小さな変化や症状を見逃さないように、また、愛犬の肺がん予防のために役立てていただければ幸いです。
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30代 男性 やみす