メス犬は要注意!最も多いがん『乳がん』の基礎知識

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メス犬は要注意!最も多いがん『乳がん』の基礎知識

犬の乳がん(乳腺腫瘍)は、雌犬において最も一般的に見られるがんです。良性のものから悪性のものまでさまざまですが、いずれにせよ早期発見・早期治療が重要です。また、犬の乳がんは他の多くのがんと違い、早期に避妊手術をすることで予防が可能ながんです。今回は犬の乳がんについて簡単に解説したいと思います。

犬の乳腺腫瘍

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人間の女性でも最も発生の多いがんは乳がんですが、犬の場合も類似しており、雌では乳腺腫瘍が最も発生の多いがんです。(獣医領域の教科書では、犬にできる乳がんのことは「乳腺腫瘍」と呼んでいます。聞きなれない言葉かと思いますが、以後は乳腺腫瘍と書きます。)

犬の乳腺は多くの場合左右5対で、たくさんの子犬に同時に授乳することができます。この乳腺ががん化したものが乳腺腫瘍です。乳腺腫瘍は雌犬で最も多く発生するがんで、雌犬に発生するがんの約半数は乳腺腫瘍であるとされています。10〜11歳程度で最も多く発生しますが、もっと若い犬で発生することもあります。

犬の乳腺腫瘍に関してよく言われていることとして、50%は良性、残り50%は悪性、また、悪性の中の約半分(全体の25%)は、すでに転移を起こしている、ということがあります。しかし、小型犬では悪性の割合はもう少し低いとされています。また、良性か悪性かは実際に診断・治療してみないとわかりません。ご自宅で犬の乳腺にしこりを見つけたら、早めの受診を心がけましょう。

また、冒頭でも触れたとおり、早期(初回発情以前)に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生を効果的に予防することができますので、動物病院で相談されて下さい。

診断

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未避妊の雌犬の乳腺付近にしこりがあれば、乳腺腫瘍の可能性があります。しかし、乳腺付近にできたそれ以外のがんであることもあり得ますし、転移の有無によっては治療方針が大きく変わりますので、いくつかの検査が推奨されます。

最初の段階として視診・触診があります。具体的には左右の何番目の乳腺にしこりがあるのか、内出血や皮膚の破綻がないか等を観察し、しこりの硬さ・周囲との固着を調べます。同時に、腋窩(腋の下)や鼠径(内股の部分)にあるリンパ節が腫れていないかチェックします。

また、犬の乳腺腫瘍が転移しやすい場所として肺があることや、一部の症例ではお腹のリンパ節にも転移していることがあり、胸部および腹部のレントゲン検査がお奨めされます。

さらに、がんになる年齢の犬は他の病気にもかかっていることがありますので、血液検査をしてもらうことをお奨めします。結果次第では乳腺腫瘍よりも重い病気がみつかり、治療の優先順位が変わることがあります。

近年行われることが増えているのは、CT検査です。レントゲンでは見つからない小さな転移病変を見つけることができます。また、同時に存在するそれ以外の病気を検出することができることもあります。  

治療

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転移があるかどうかで治療法が大きく変わります。

明らかな転移の見られない犬の乳腺腫瘍の治療の第一選択は、手術による切除です。早期に行えば、完全に治る可能性のある唯一の治療法です。手術の方法は、しこりだけを取る方法から片側の乳腺を切除する方法や両側の乳腺を切除する方法まで様々です。

小さな範囲を切除することのメリットは動物への負担が少ないことですが、同時に、取り残しのリスクが増えることになります。反対に、余裕をもって大きく切り取ると、動物への負担が増える反面、根治の可能性が高まります。

現在、特に悪性が疑われる場合に最も推奨されることの多いのは、片側の乳腺を一括で取ってしまう手術方法です。追加で推奨されるのは、卵巣子宮全摘術です。これを行うことで再発までの時間は延長することが知られています。しかしこれら手術の方法のどれを選択するかは、動物の状態によっても変わりますので、詳しくは動物病院で相談されて下さい。

転移がある場合の治療は、基本的には抗がん剤となります。残念ながらこの場合、がんを根本的に治してしまう方法はありません。進行を遅らせる目的で抗がん剤、生活の質を維持するためにその他の対症療法などを行うこととなります。人間で行われているようなホルモン療法や分子標的治療は、動物の乳腺腫瘍では効果が立証されておらず、現在使用されていません。

まとめ

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以上、犬の乳腺腫瘍 (乳がん) について簡単に解説しました。

犬の乳腺腫瘍は発生頻度の高いがんですが、早期であれば有効な治療法のある病気です。犬の体にしこりを見つけたらお近くの動物病院で相談されて下さい。

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研究者紹介

現在、進行したがんに対する有効な治療法はありません。その現状を変えるには、どうしてがんが発生するのか、なぜ悪性化・転移するのかを解明し、それに基づいて新しい治療法を開発するしか方法がありません。

私が所属する研究グループ山口大学研究推進体TRACは、現在クラウドファンディングサイト”アカデミスト”にて、研究費用の支援してくださるサポーターの募集を行っています。支援者には、支援額に応じた様々な特典を用意しています。

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イヌの乳がん発症メカニズムを解明し、治療に貢献したい!

実施期間

  • 2018年4月18日(木)〜2018年6月28日(木)

目標金額

  • 200万円 (内訳)研究費の一部

記事の提供

  • 西川 晋平
  • (【山口大学研究推進体TRA】 山口大学共同獣医学部・助教)

山口大学附属動物医療センターにて外科系診療を担当しながら、犬のがんに関する研究を行なっています。

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