がんの犬の遺伝子を調べるとはどういうことか?

がんの犬の遺伝子を調べるとはどういうことか?

がんは高齢の犬の死因としてもっとも多く、人と同様、寿命の延長とともに、近年その発生率は増加しています。犬におこるがんは、人と同じようながんもあれば、犬でとくに多いもの、犬でとくに少ないものなど様々です。人のがんでは、遺伝子を用いた検査が使用されることがあり、たとえば女優のアンジェリーナ・ジョリーが、遺伝子検査結果に基づいて乳がんの予防として、乳房切除をしたことが有名です。一方、犬のがんについては、遺伝子検査というものはまだまだ一般的ではなく、もっと多くの情報が必要とされています。

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記事の提供

大学では、附属動物医療センターで内科系診療を担当しながら、犬のがんに関する研究を行なっています。自分の研究から1頭でも多くのがんの犬を救えることを目標に研究を行っています。

遺伝子とは

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体の遺伝情報を司っている物質はDNAですが、DNAは、アデニン(A), シトシン(C), グアニン(G),チミン(T)といった4種類の塩基とよばれる成分が数珠のようにつながって並んだものです。

またこれら生物がもつ遺伝情報全体のことをゲノムといいます。遺伝子というのは、そのなかで遺伝情報が書き込まれた部分のことをいい、その設計図をもとに個々の生物が成り立っています。

遺伝子を調べて何がわかるのか

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人では、現在は自分自身でも体のゲノムDNAの全塩基配列を知ることが可能となりました。すなわち自身の体を形作るゲノムのA, C, G, Tの並びを知ることができます。これらを詳細に解析することにより、ある特定の病気のなりやすさなどを調べることができるようになり、ある特定の遺伝子の異常がある場合、異常がない人と比較してある病気になるリスクがあがることがわかっているような場合もあります。

先述したアンジェリーナ・ジョリーの例は、その典型的な例であり、BRCA1とよばれる遺伝子に乳がんを起こす可能性高い異常がみつかったため将来的に乳がんの発症リスクが通常より87%高いことがわかり、それに対する予防的措置として乳房切除をしたわけです。

1つの遺伝子異常のみでがんが起こりやすくなる、というほど単純ではない場合が多いですが、人ではこのように特定の病気の発生率と特定の遺伝子の異常という組みあわせについて数多くの研究者が調べており、多くの異常が知られています。

犬の遺伝子を調べるということ

ボクサー犬

一方、犬のゲノム解析というのは、人のゲノム計画の終了数年後の2005年にボクサー犬の全ゲノムが明らかとなりました。それ以降、さまざまな犬種、病気において犬のゲノム解析が行われてはきていますが、まだまだその数は十分ではありません。その理由は単純で、犬のがんの研究者が世界的にも数が限られており、また犬のゲノムを解析するということに、国が(とくに日本)大きな予算を割いて来なかったことが大きな原因です。

犬、とくに純血種については、特定の疾患に罹患しやすいなどという特徴もあり、犬の遺伝子を調べるということが、我々が想像する以上に大きな意味をもっている可能性があるため、犬のさまざまな病気でゲノム解析が行われることが重要であるにもかかわらず、資金不足から進まないという問題点があります。

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イヌの乳がん発症メカニズムを解明し、治療に貢献したい!

実施期間

  • 2018年4月18日(木)〜2018年6月28日(木)

目標金額

  • 200万円 (内訳)研究費の一部
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