犬の床ずれ┃症状や原因、予防法やグッズの選び方について

犬の床ずれ┃症状や原因、予防法やグッズの選び方について

犬の床ずれは高齢になるとできやすくなります。筋力の衰えから自力で寝返りがうてなくなってしまい、ベッドや床と長時間接している箇所の血流が悪くなることで床ずれがおこります。特に、痩せて骨が突出した部分や皮膚が弱くなった部分に起こることが多いです。この記事では、老犬の床ずれについて症状や予防について紹介します。

お気に入り登録
SupervisorImage

記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

老犬が寝たきりになると床ずれを起こしやすい

お昼寝をする黒い老犬

床ずれは、犬が長時間同じ姿勢で寝ていることにより起こります。犬が寝たきりになることで、床と接触している皮膚が圧迫され続け血流が悪くなり、皮膚表面の組織が壊死してしまいます。

シニア期になると犬はだんだん筋力が落ちてきます。そのため自力で身体を動かすことが困難なほど筋力が低下して床ずれになりやすくなります。老犬以外でも身体が不自由で寝たきりの犬や、病気で体力が落ち寝たきりになると起こる場合もあります。

床ずれができやすい部位

前足を触られる犬

床ずれができやすいのは、骨が出ていて脂肪が少ない部位です。股関節、前足の肘、肩、腰骨、足首など、これらは横になったときに骨が床に強く当たることによって床ずれを起こしやすくなります。

犬が寝ている姿勢の時に身体の下に手を入れてみて、骨が出っ張っている箇所や体重が強くかかっている部分が注意すべき場所です。

犬の床ずれの症状

足にでき物がある犬

初期症状

犬の床ずれの初期症状は皮膚が赤くなったり、皮膚が薄くなりかゆみや痛みがでたり、水ぶくれ状のできものが破けてジュクジュクしたキズになるなどがあります。

また、圧迫以外にも皮膚の蒸れや汚れ、痩せすぎや皮膚が薄くなる、移動の際の摩擦なども原因になることがあります。犬は被毛で覆われているのでわかりにくいこともありますが、毛が分泌物でジュクジュクしていたら要注意です。皮膚の状態を常に観察して早めに対処してあげましょう。

床ずれが悪化すると

犬の床ずれが悪化し、化膿が起きて皮下組織にまで及ぶと、骨や関節までも壊してしまいます。傷口は深く大きくなり、皮膚に穴があいたように見えてきます。季節によってはウジが湧いてしまう場合もあります。すぐに獣医師の診察を受けましょう。

犬が床ずれを起こした時の対処法

クッションでお昼寝する犬

犬が床ずれを起こしていることに気付いたら早めに獣医師の診察を受けましょう。処方された薬や抗生物質などは適切に使用し、床ずれの発生箇所を清潔に保つために、また治療を行いやすくするために毛刈りをしておいた方が良いでしょう。

同時に、床ずれをした犬に対しては介護が必要になります。清潔でこまめにケアできる場所に移動して、体圧を軽減する床ずれマットやクッションを上手に利用しながら、犬の皮膚の状態を注意深く観察しましょう。

犬の床ずれにおすすめグッズ

赤いサポーターを足に巻く犬

マット

犬が床ずれを起こしたときは、体圧を分散する機能のある通気性の良いマットを用意しましょう。寝たきりになってしまうと食べこぼしや粗相など汚れることも多くなるので、洗えるカバー付きのものやマット本体が洗って乾燥できるものであれば清潔が保ちやすいです。

サポーター

サポーターは犬の床ずれ予防にも再発防止のためにも活用できます。サポーターをすることで、できてしまった床ずれを保護してくれます。また、サポーターを巻いておくことで冷えも防げます。

強く巻きすぎると犬の血流を悪くしてしまうので注意が必要です。ストレッチ素材で巻きやすく、広いマジックテープで微調整が可能なものを選びましょう。

監修獣医師による補足

大型犬でしたら、人間の子供用のハイソックスやレッグウォーマーなども利用できます。 どんなタイプのものを使うにしても、保護された床ずれ自体のケアも重要です。決してサポーターを着けっぱなしにはしないで、最低でも1日1回は床ずれのケアをしてあげて下さい。

獣医師:木下 明紀子

ラップ、軟膏またはワセリン

犬の床ずれの治療法でも述べますが、湿潤療法をラップと軟膏やワセリンなどを使って行う方法もあります。人間でいうキズパワーパッドの要領ですが、傷口から出る浸出液が多い時は、ガーゼやパッドをこまめに取り換える必要があります。傷が化膿していないかどうか、傷から出てくる液体の臭いや色を観察して下さい。化膿していない浸出液にも臭いはありますが、その臭いが変わってきた、液体の色が黄色や緑になってきた、液体がねばねばしてきた、などという変化が見られたら細菌感染を起こし化膿している可能性が大きいですので、必ず診察を受けて下さい。

塗り薬や貼り薬、飲み薬の処方があれば、必ずそれに従ってください。

犬の床ずれの予防法

マットの上で伏せる犬

床ずれの予防には、体の同じ場所を長時間圧迫させないようにすること、また清潔を保つことが大切です。マットやパッド、ドーナツクッションなど犬用介護グッズもいろいろあります。詳しいグッズについては下記のおすすめグッズの項目で紹介します。

1カ所への圧を逃す工夫

体圧を分散するマットやクッションを利用して、床と犬の体圧を軽減する工夫をすることで床ずれの予防や症状緩和もできます。通気性を考慮した作りであれば、ムレ防止にもなります。犬の床ずれの箇所に合わせてクッションや服を手作りするのも良いですね。

また同じ箇所に耐圧がかかりすぎないように、飼い主が犬に寝返りをうたせるなど、2~3時間おきに体位を変えてあげると良いでしょう。 

お尻を汚れにくくする

お尻の毛を短くカットすることで衛生状態が保たれ、床ずれの予防になります。しっぽがふさふさな犬は、しっぽに汚れが付きにくくなるように、しっぽを優しく包帯で巻きます。包帯同士がくっつくテープ式の自着生伸縮包帯だと、巻きやすく取り外しも簡単です。

こまめな手入れ

床ずれ防止には被毛を清潔に保つことも大切です。寝たきりになると食べこぼしや粗相などで被毛が汚れやすいため、そのままにしておくと皮膚病の原因にもなりかねません。汚れたらこまめに拭いてあげましょう。犬の毛の流れに沿って優しくなでるように拭くと、汚れが取れやすいです。

定期的に蒸しタオルやウェットティッシュで犬の全身を拭いてあげて、身体が冷えないよう、仕上げに乾いたタオルで水気を取ってあげると良いでしょう。

どうしても取れない汚れは、部分浴で落としてあげましょう。寝たきりで全身浴は体力的に無理でも、部分浴なら洗う時間も乾かす時間も短縮できるので、犬にも飼い主にも負担が少なくて済みます。

浴室に傾斜をつけてすのこを敷くことや、小型犬ならベッドに厚手のトイレシーツやバスタオルを敷いて、たらいのお湯を手でかけながら洗う方法もあります。ペット用の水なしシャンプーを活用するのも、身体を冷やす心配がないので良いですね。

犬の床ずれの治療方法

包帯を巻かれる犬

 

動物病院での治療 

床ずれができてしまったら、なるべく早く動物病院に連れて行くことが大切です。動物病院での治療は、患部を洗浄し周囲の毛を刈ります。傷口を洗浄し圧迫がかからないように処置することで回復に向かいます。

壊死してしまった部分は取り除き、傷の状態に合わせた軟膏や、ドレッシング材(傷口を湿潤に保つために用いられる被覆材)を使いながら徐々に傷が治っていくのを助けます。細菌などの感染があれば、抗生剤などの外用薬や内服薬が処方されます。

細菌などの感染があれば、抗生剤などの外用薬や内服薬が処方されます。病院で治療を受けることだけでなく、自宅での手当ての仕方や管理が重要になりますので、獣医師に指示を仰ぎながら自宅でケアしてあげましょう。

自宅でのケア

患部を清潔に保つことが大切です。寝たきりの場合は、排泄物で皮膚が汚れた状態にならないようおむつはこまめに交換する、汚れたら部分はぬるま湯などで洗うなど、常に清潔を保ちましょう。

また、床ずれは傷口が乾燥すると痛みがでるうえ、治るのに時間がかかってしまうため、 病院から処方されたクリームや軟膏を傷口に塗って乾燥させないようにすることが大切です。

まとめ

柴犬の老犬

犬の床ずれは予防が重要で、一度発症すると非常に治りにくく治療も長期化します。犬が寝たきりになってしまったら、体圧を分散させるためにも頻繁に体位を変えることや、マットやクッションなどのグッズを利用することで、床ずれの発症を防ぐこともできます。

また、マッサージやブラッシングなどを通して床ずれができそうな部分を観察するなど、日々のケアで床ずれの予防と早期発見を心がけることも大切です。

犬の介護はとても大変です。介助する飼い主さん自身に大きな負担がかかることがありますが、信頼のおける家族や動物病院、ペットシッターや老犬ホーム、動物介護士など専門家に相談したり、周囲の協力を求めることで、愛犬と良い関係を保っていくことを忘れずにいましょう。

はてな
Pocket

ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 てとめろ

    シニア犬になった我が家の愛犬も床ずれを気にしてあげるようになりました。まだ散歩をする元気はあるものの、やはり寝る時間の方が長くなってきています。また昔は寝返りも多かったですがそれも減りましたね。対策として、我が家の床にはマットをしいたり、寝床にはより厚めの毛布を敷いています。これで少しでも負担が軽くなればいいのですが…(^_^;)
    また痩せることも床ずれの原因なんですね。これからはそういう点にも気にしてあげようと思いました。シニア犬になるとやはり食事量も減ってくるので何とか、ごはんをかえたり、ふりかけをかけたりと食欲を出してもらえるように頑張っています。これからも元気でいてもらえるようにこの記事を参考に頑張ります。
  • 投稿者

    女性 匿名

    愛犬も9才になりました。まだまだ元気ですがいずれ老化が見えてくると思います。床ずれ予防には何が良く、介護用品は何があるのか勉強中です。
    高反発マット、ブレスエアーが体重を分散させて床ずれ予防になるそうです。
    うちの子は大型なので人間用が良さそうです。
    床ずれしやすい所は毛を刈ってあげると良いですね。
    排泄物で汚れたら部分浴が良いようですが、無水シャンプーも利用してみたいです。
    足腰が弱り散歩が難しくなっても、車椅子などを利用して身体を起こした状態で過ごすと、認知機能も胃腸も健康的に保てるようです。
    食ムラがあることが気がかりですが、何とかしなくてはなりません。フードをふやかしたり缶詰め、手作りを利用して食べさせて行きます。
    何かと気遣うことが増えて行くので日々勉強です。
  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    うちのワンコは、17歳の柴犬です。昨年の9月に突然倒れ、仰向けの状態でハーハー言ったまま1晩過ぎました。なんとか回復しましたが、斜頸が残り、足が弱り、左周りにしか歩けなくなりました。左側を下にしてしか寝なくなりました。白内障も進み、耳も遠くなり、寝る時間が増えて来ました…。ある日の朝、左頰が、赤く陥没していたので、何かで怪我でもしたのかと思い病院へ駆け付けましたら、床擦れとの事。毎日薬を付けていますが、頰なので、折角の可愛い顔が痛々しくて、毎日泣いてます。
    一日も早く完治する方法はないものでしょうか?(T ^ T)
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。