高齢犬は寒さが響きやすい
通常、犬は寒い時には被毛の近くの筋肉を収縮させて毛を立たせることで暖かい空気の層をまとったり、体を震わせることで熱を発生させたりして寒さを防ぎます。
寒さ対策には、実はエネルギーがいるんです。
ところが高齢犬になると体力が衰えるため、寒さ対策に使うエネルギーが十分でなくなってしまいます。ですから若い頃は寒さなんてへっちゃらだった犬も、高齢犬になると外気の温度に適応する機能が衰え、体温が低下しやすくなります。
冬の冷えは関節炎の原因のひとつ
人間でも関節炎はよく知られていますが、犬も関節炎になるのです。
関節炎は関節の軟骨組織接合面がすり減ったり破壊されたりすることで炎症を起こし、痛みを伴いながら次第に悪化していきます。
関節炎の主な原因は肥満、運動不足、過度な運動などですが、実は「冷え」が症状を悪化させ、また「冷え」そのものが関節炎の原因にもなるのです。
冷えによって血行が悪くなった状態で筋肉を動かそうとすると、関節に大きな負担をかけることになるからです。また、冷えによって血流が滞ることで痛みが大きくなります。
関節炎だと診断された場合には、状態に合わせた運動は必要ですが無理は禁物です。滑りやすいフローリングをカーペットに変えてあげたり、過度な運動を控えるようにするなど、上手に付き合っていかなければなりません。
散歩の際は寒さ対策を怠らずに!
高齢犬は体力が衰えるのに伴い、体温調節機能も衰えていきます。つまり犬自身ではもう防寒が十分に出来ないということです。「冷えは万病のもと」と言いますが、これは犬にとっても同じことなのです。体が冷えることで血流が滞り、関節炎をはじめ消化器系の病気にもつながります。
また、もともと心臓病などの内臓疾患がある犬にとって、外に出て体が急激に冷えたり室内に戻って急激に温まったりするのは大きな負担になってしまいます。
ですから、高齢犬のお散歩の時には、飼い主さんがきちんと寒さ対策をしてあげなければなりません。お散歩の時には服を着せてあげましょう。ただし、室内に戻ってきたときには必ず脱がせてあげてくださいね。
また、お散歩に行く時間帯も日中の太陽が出ているときにしたり、お散歩コースも日向の多いところを選んであげましょう。お散歩前に室内で少しだけ歩かせるなどしてウォーミングアップしてあげるのも効果があります。
無理は禁物だが、散歩は認知症対策にもなる
犬にとっての散歩は運動や排泄だけが目的ではありません。散歩は気分転換にもなり、好奇心を満たす効果があるのです。外の世界には刺激がたくさんありますから、高齢犬の認知症対策にもなります。
高齢犬は視力や聴力が低下することで行動に積極性がなくなったり、好奇心が薄れたような反応をすることがありますが、散歩そのものを嫌がっているわけではありません。普段散歩を楽しみにしていた犬は、歳をとってもやはり散歩が好きなのです。高齢を理由に散歩をやめてしまうと、体力だけでなく気力も無くなってしまいます。
かといって、やはり体に負担がかかるのは飼い主としても心配ですし、関節や内臓の病気がある場合は絶対に無理をしてはいけません。
足の筋力が弱っているようであれば胴の部分を吊り上げるタイプのハーネスを使用したり、それでも歩けないようなら犬用のカートに乗せてお散歩コースを回ってくるなど、無理のない範囲で外に連れていってあげましょう。外出が出来ない状態のときには、車や人の往来の見える窓のそばに暖かくして横に寝かせてあげましょう。