犬のADHD(発達障害)について
ADHDは注意欠如多動性障害と呼ばれる発達障害のひとつです。人間の症状として知られていますが、犬にも同じようにADHDの症状を持つ個体がいます。しかし言葉を話さない犬のことですから、その診断は人間の場合よりも難しく、ただ単にエネルギッシュで活発な犬が適切に訓練されていないだけという例も多いようです。
そういう極めて活発なタイプの犬への対処、ADHDの可能性がある場合の対処など、ご紹介していきます。
犬のADHDを疑う前にチェックすること
ADHDの特徴的な症状は、極端に活発、注意力や集中力が続かない、衝動的な行動などがあります。また刺激や環境変化に対して敏感で、強く反応する傾向があります。けれども「もしかしてうちの犬も?」と考える前に、確認する事柄がいくつかあります。
子犬の時期の社会化はしっかりとできていたか?
生後4ヶ月齢くらいまでの間に、できるだけ多くの犬や人間と接して社会化がしっかりと行われた犬は衝動的な行動が少なく、活発ではあっても落ち着きも見られます。この時期にワクチン接種のタイミングや飼い主の時間の都合などで、社会化が不十分だったと心当たりがあれば、プロのトレーナーに相談するなどして訓練を見直すことで、改善が期待できます。
犬種の特徴は?そしてそのニーズは?
牧羊犬や猟犬などは、その目的のために周囲を警戒し刺激があれば反応をします。また高い運動量に耐えることもできます。これは言い換えれば、適度な刺激や十分な運動を与えられていないと退屈してしまうということです。いざ刺激や体を動かす機会があれば、制御ができないくらいに反応してしまうことも少なくありません。飼い主自身が愛犬の犬種のことをよく理解して、犬のニーズを満たしているかどうかを振り返ってみます。
犬が暮らしている環境は?
犬がゆっくりしたいと思っている時に、落ち着くことのできる場所はあるでしょうか?
大きな甲高い声ではしゃぎながら犬に近づくような子供がそばにいないでしょうか?
小さなケージに閉じ込めていたり、四六時中鎖につながれて、物理的に拘束されているということはないでしょうか?
これらのことは、犬が身体的、精神的に落ち着くためにとても大切なことです。心当たりがあれば、環境を改善してあげましょう。
好きな遊びには集中することができるか?
ドッグトレーナーが犬の集中力をチェックする時に使う手のひとつに、クリッカーとトリーツを使うゲームがあります。クリッカートレーニングの基本でもあるのですが、クリッカーを鳴らして犬が反応すればトリーツを与えるというもので、活発でヤンチャな犬でもトリーツをもらうために集中するゲームです。ADHDの犬は自分が集中したいと思っていても、そうすることができないのです。
犬がADHDの可能性がありそうなら
上記の注意点も含めて、様々な手を尽くしてもコントロールできないようなハイパーさがあったり、好きな遊びに対しても注意力や集中力が続かないという場合は、ADHDの検査をしてみるということになります。この場合は、獣医師の処方する医薬品を投与して反応を観察し診断します。診断の結果によって、投薬をすることもできます。
薬を与えることに抵抗がある場合や、症状が軽い場合は、居住環境や訓練方法をしっかりと管理することで、コントロールがしやすくなることもあります。専門の獣医師やトレーナーと相談することが大切です。
ADHDの犬は基本的な服従訓練などの単純な反復作業は苦手ですが、自分で判断するハーディングなど創造的な作業には優秀さを見せる犬が多いようです。また物理的に拘束されることに対して抵抗が強く、それが攻撃性につながる場合もあります。衝動的な行動で人に飛びついたり、道路に飛び出したりすることも危険です。
投薬や環境の整備、訓練は犬の快適さだけでなく、周囲の人や動物の安全、犬自身の命を守るためでもあります。
まとめ
犬のハイパーな行動が、エネルギーが有り余っていることや犬種の特徴から来ているのか、それともADHDから来ているのか、見極めるのは難しいものです。けれども、まずは飼い主が犬種や犬の行動をきちんと理解して、そのニーズを満たしてやり、適切な環境や運動、訓練を与えてやることはすべての犬にとって必要不可欠なことです。
これらのことが不足すると、どんな犬でもADHDに似た行動を見せることがあります。また実際にADHDと診断が下っても、適切に対応することで症状を最小化することも可能です。投薬をすることで、犬自身も周りの人間も快適になる場合もよくあります。
犬のADHDは人間と共通する点が多く、人間のための医療の研究にも応用されるため、日々研究が進んでいるとのことです。展望は明るいようですね。犬が犬らしく幸せに暮らせるようにすること、ADHD様の行動を防止するためにも、ADHDを悪化させないためにも、大切なことですね。
《参考》
https://www.whole-dog-journal.com/issues/6_10/features/Dealing-With-Hyperactive-Dogs_5576-1.html