犬の肝性脳症(かんせいのうしょう)とは?
聞き慣れない病名かと思いますが、肝性脳症とは肝臓の機能が正常に働かなくなってしまったことが原因となり、脳に障害を与えてしまう病気のことを言います。
私たち人間も同じで、犬の肝臓にはとても多くの役割や働きがあります。その役割や働きは、脳だけではなくカラダ全体に深く関係しており、肝臓の健康はカラダ全体の健康を示とも言われるほどです。
つまり、肝臓が健康でなければカラダ全体が不健康になってしまうのです。
犬の肝性脳症の原因について
肝性脳症とは肝臓の機能が正常に働かなくなってしまったことが原因となり、脳に障害を与えてしまう病気のことを言いますが、肝臓には“分解”という働きがあり、この機能が正常に働かなくなってしまうことが脳に大きなダメージを与えます。
肝臓が持つ働きのひとつに「分解」という働きがあります。血液中の不純物や毒素を分解し、無毒化してからカラダの外に排出するというものです。
しかし、肝臓の機能(分解)が低下してしまうことで有害物質を無毒化(解毒)することができなくなり、毒素が血液を通して全身へとめぐり、脳に大きなダメージと障害を与えてしまうのです。
これらにより、肝性脳症を発症します。
原因①「先天性」
肝性脳症の要因である門脈体循環シャントを発症してしまう原因として、遺伝的な要因が確認されているようです。
門脈体循環シャントは生後4週間から12歳までの小型犬に発症しやすいとされており、ヨークシャーテリア、マルチーズ、ミニチュアシュナウザー、アイリッシュウルフハウンド、オールドイングリッシュシープドッグなどがとくに発症しやすい犬種であるようです。
原因②「肝不全」
肝臓の機能が低下することで発症する肝性脳症ですが、肝臓の機能や働きに悪影響を与える可能性のある疾患として、肝硬変・門脈体循環シャント・肝臓の萎縮などが考えられています。
犬の肝性脳症の症状について
脳はカラダのいろいろな器官に指令を出していますが、肝性脳症を発症してしまった場合、脳が正常に指令を出すことができなくなり、発育不全や虚弱体質になってしまう可能性があります。
“頭部押し付け行動”と呼ばれている、頭部を壁や物に長時間押し付けるという行動がみられることもあるとされています。
いろいろな奇怪行動がみられるとされていますが、脳の奥の方にある大脳や視床下部が血液中の有害な物質によって悪影響を受けたことが原因となり引き起こされるようです。
肝性脳症の初期症状
- 真っ直ぐ歩くことができなくなる
- 食欲が低下する
- 物事に執着しなくなる
- 気が散漫になる
- 嘔吐する
- 大量の水を飲む
- お腹に水がたまる
上記のような症状がみられますが、症状が悪化するにつれて、成長期の子犬の場合は発育不全や虚弱体質などを引き起こし、体重の減少、旋回、頭部押し付け行動などもみられるようになり、四肢の運動機能にも障害が引き起こされる場合や、痙攣・失明・昏睡状態などに陥ってしまうこともあります。
犬の肝性脳症の治療法について
まずは、なぜ肝性脳症を発症してしまったのか、肝臓の機能に悪影響を与えているものは何なのかなど、原因を突き止める必要があります。
原因となっているものを治療し改善されることで、軽症である場合には回復を期待することができますが、重症である場合や著しく脳に損傷を与えてしまっている場合には後遺症の可能性があります。
治療法①「基礎疾患を治療する」
肝性脳症を発症するそもそもの原因である、肝機能が低下した理由を調べて治療を行います。また、門脈体循環シャントが原因である場合には、血液の流れを回復させるための外科手術が用いられる可能性があります。
また、脳へのダメージと損傷を軽減させるため、血液中の有害な物質を取り除く、内科的な治療がおこなわれる場合もあります。
治療法②「投薬」
肝臓の機能である“分解”が正常に機能していないと、有害物質のアンモニアを正常に排出することが出来なくなります。
本来分解されるはずのアンモニアが、血液中に流れると体に悪影響を与えるため、アンモニアの生成を抑制するための内服薬を投薬することもあります。
治療法③「食事療法」
健康を保つために毎日休むことなく肝臓は働いています。食事から摂取した栄養素を代謝したり分解したりするのも肝臓の役割です。そのため、肝臓への負担を軽減させるために食事療法をおこなう場合がありあす。
まとめ
肝性脳症を発症しないためには、肝臓の機能と健康を正常に保つことが必要です。肝臓の健康状態を知るためには定期的な健康診断を受ける必要があります。血液検査のみでも良いですので、愛犬の肝臓の数値をチェックしてあげましょう。