遺伝病(遺伝性疾患)とは?
遺伝病、遺伝性疾患とは、遺伝子に変異が起こることで発症する病気をいいます。また、この変異を起こした遺伝子が引き継がれることで、次の世代でも同じ病気を引き起こします。特に、純血種の場合は同じ品種、同じ犬種の個体で繁殖を繰り返します。結果として、変異した遺伝子が固定されてしまい「その犬種」特定の遺伝病というのが発生してしまうのです。
犬の遺伝病
犬の遺伝病とはいったいどういったものがあるのでしょうか。発症しやすい犬種と共にご紹介します。(その犬種、全ての個体で発症するわけではありません)
遺伝性白内障
目のレンズである水晶体が白濁し、視力が低下、失明する疾患です。遺伝性白内障は加齢による白内障とは違い、遺伝的な要因が元となって発症します。発症時期は犬種によっても生後数ヶ月~数年と様々だといわれています。発症しやすい犬種として、次のような犬種が挙げられています。
トイ・プードル/ボストン・テリア/ブル・テリア/ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア/フレンチ・ブルドッグ/ビーグル/アメリカン・コッカー・スパニエル/キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
進行性網膜萎縮症
徐々に視力が低下し、最終的には失明をしてしまう進行性網膜萎縮症。犬種によっても発症の時期は様々だといわれます。発症しやすい犬種として、次のような犬種が挙げられています。
ミニチュア・ダックスフンド/トイ・プードル/ミニチュア・プードル/シーズー/ミニチュア・シュナウザー/ラブラドール・レトリーバー/パピヨン/ヨークシャー・テリ/アメリカン・コッカー・スパニエル
骨形成不全症
骨形成不全症はコラーゲンの異常が原因で骨密度が低下、骨折しやすくなる疾患です。骨形成不全症となると少しの力でも骨折してしまい、骨折後には骨が変形してしまうこともあります。発症しやすい犬種として次の犬種が挙げられます。
ゴールデン・レトリーバー/ビーグル/ダックスフンド
発作性睡眠(ナルコレプシー)
脳内の神経伝達物質であるオレキシンが変異することで発症する発作性睡眠。ナルコレプシーとも呼ばれます。発作性睡眠を発症すると、突然立ち上がれなくなったり、睡眠状態となったりします。重症の場合、全身に脱力発作が起こってしまいます。非遺伝性の発作性睡眠と遺伝病としての発作性睡眠があるといわれています。発症しやすい犬種として、次の犬種が挙げられます。
ミニチュア・ダックスフンド/ラブラドール・レトリーバー/ドーベルマン
日本は犬の遺伝病が多い?!
犬の遺伝病を知る上で、考えておきたいことがあります。それは日本は世界の中でも犬の遺伝病の発症が多いということです。これは、特定の犬種に人気が集まることや、繁殖業者であるブリーダー、犬を飼育する人の意識が関わっているといわれています。日本の風潮として、一過性のブームによる特定犬種の繁殖、飼育があります。これらの風潮は、見た目だけを優先させ、遺伝性や先天性の疾患のリスクが高まるような繁殖を促進しています。
動物愛護の観点から、少しずつこういった風潮が知られつつありますが、それでも日本はまだまだ動物愛護の後進国です。犬の、命の問題は一過性のブーム、一時的な感情で左右されていいものではありません。遺伝病を知る上で、そういった犬が産まれてしまう背景を我々は知り、見直さなくてはいけないのではないでしょうか。
まとめ
遺伝病を発症しやすい犬種は決まって「人気の犬種」ではないでしょうか。世界では遺伝病を引き継がないための努力もなされていますが、それでも遺伝病の存在は、人間が人気犬種を作ろうと繁殖を繰り返した一つの結果でもあります。
まずは遺伝病の存在を知ることが、不幸な犬を産み出さない一歩でもあります。また、すでに犬を飼育している人は、愛犬に起こり得る可能性のある病気を事前に把握、フォローできる環境を用意することも大切です。「一過性のブーム」が命に適用されることがない世の中を作っていくのは、私たち一人一人の意識なのかもしれません。