犬の重症筋無力症とは
犬の重症筋無力症とは、横紋筋の神経筋接合部にあるアセチルコリンまたはアセチルコリン受容体が何らかの原因により壊されてしまうことで、神経から筋肉収縮の信号がきちんと伝達されないために起こる筋疾患です。
※アセチルコリン=脳からの指令をアセチルコリン受容体に伝える物質
※アセチルコリン受容体=アセチルコリンからうけた指令を筋肉に伝える物質
犬の重症筋無力症の原因
原因は先天性、後天性に分けられます。一般的に動物ではほとんどが後天性の発症と言われています。
遺伝(先天性)
好発犬種の存在から遺伝での発症が確認されています。生後6~8週齢という非常に早い段階から症状が起きはじめ、主な理由としては神経筋接合部にあるアセチルコリンの欠乏が考えられており、常染色体劣性遺伝として知られています。
先天性における主な好発犬種
- ジャックラッセルテリア
- スプリンガースパニエル
- スムームフォックステリア
免疫異常(後天性)
体内に入ってきた異物を攻撃する免疫システムが、何らかの原因により神経筋接合部にあるアセチルコリンまたはアセチルコリン受容体を攻撃することで発症します。それによって目の筋肉や顔、食道の筋肉が上手く働かなくなります。
後天性においても発症しやすい犬種が存在しています。また、どの年齢においても発症が起き、若い年齢においてはメスに多いとされています。
後天性における主な好発犬種
- 秋田犬
- ゴールデンレトリバー
- ラブラドールレトリーバー
- ダックスフント
- スコティッシュテリア
犬の重症筋無力症の症状
犬の重症筋無力症は全身型、局所型、劇症型の3タイプに分かれます。
全身型
- 運動を嫌がる
- 身体が疲れやすくなる
- 吐出する
最も症状として多いのが全身型です。この症状が進行すると、歩行をしている途中で徐々に力が抜けていき立てなくなることもあります。
局所型
- 目の筋肉が落ちまばたきが出来なくなる
- 食道の筋肉が落ち胃に食べ物を運ぶことが出来なくなる(巨大食道)
- 吐出する
局所型は全身に症状は現れません。また喉の筋肉が落ちることで鳴き声がかすれたりすることもあります。
劇症型
- 麻痺をおこす
- 呼吸困難になる
呼吸系の筋肉が麻痺するので命に関わる部分になり、3タイプの中でも最も重症な筋無力症になります。その場合、直ちに人工呼吸器へつなげる必要があります。
人間が重症筋無力症になると胸腺の腫瘍を伴うことが多いといわれており、犬も人間程ではないですが腫瘍を伴うことがあります。
犬の重症筋無力症の治療法
治療法には主に投薬、食事の管理が行われます。
投薬治療
多くはコリンエステラーぜ阻害薬の投与を行います。また巨大食道などで口から投与出来ない時は注射などで対応します。
食事の管理
巨大食道症などにより栄養をしっかり取れていないことが多いため、食事の管理をしてあげます。チューブによる支持療法や、巨大食道症の場合は重力によって胃に食べ物が入りやすくするためにテーブルの上にごはんを置き、なるべく立った状態で食べさせたりします。
犬の重症筋無力症の治療後
完全には治らなくてもほぼ完治した状態になる例が多いといわれています。もちろん治療をしても、食道筋の運動不全や巨大食道によって食べ物を喉につまらせてしまい、死んでしまうケースもあるので注意が必要です。ですが、それ以上に治癒している例が多いことから、早期発見をすることはとても大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?重症筋無力症は死に至る可能性もあるこわい病気ですが、しっかり治療することで自然寛解する病気です。少しでも愛犬に異変を感じたら医者に連れて行って早期発見を心がけましょう。