犬のコクシジウム症とは
犬のコクシジウム症は、コクシジウムと言われる寄生虫に感染することによって起こる感染症です。犬の場合、コクシジウム類の中でもイソスポラという種類の原虫が原因となり、犬の腸管内に寄生し増殖することで、下痢などの症状を引き起こします。健康な成犬の場合、コクシジウムに感染しても症状が出ないことがほとんどです。
しかし、ストレスや病気などで犬の免疫力が下がっている時などに、コクシジウムに感染すると発症することがあるため注意が必要です。また、子犬や幼犬、老犬などは免疫力が低いため、症状が出やすい傾向にあります。
犬のコクシジウム症の原因
犬の腸管内にコクシジウムが寄生すると、オーシストという卵のようなものが犬の糞便の中に排泄されます。その糞便内のオーシストを、犬が口にすることでコクシジウムへの感染が起こります。
主な感染経路
- 母犬の糞便を誤飲した場合
- 他の犬の糞便を誤飲した場合
- ネズミなどを捕食した場合
子犬や幼犬の場合、コクシジウムに感染した母犬の糞便が感染経路になることが多いようです。
また、約13日間の潜伏期間を経て発症するため、ペットショップで一緒に飼育されている犬がコクシジウムに感染していることに気づかず、その犬の糞便から感染したり、散歩中にコクシジウムに感染した犬の糞便を口にしたりすることで感染することもあります。
糞便が口に入った時だけではなく、感染した犬の糞便を踏んだ足を毛づくろいしたり、おしりを舐めたりしただけでも、コクシジウムに感染する危険があるため注意が必要です。
コクシジウムの虫卵は鞭虫に排泄されて一定の時間が経過すると感染能力を持ちますので、便の後片付けは再感染を防ぐために重要です。
その他に、コクシジウムに感染したネズミを犬が食べることで感染することもありますが、犬から猫へ、猫から犬への感染はなく、人間の腸管内にコクシジウムが寄生することもありません。
犬のコクシジウム症の症状
- 下痢
- 粘液便
- 血便
- 脱水症状
- 嘔吐
- 食欲不振
コクシジウムは感染症を起こす能力が低いため、コクシジウム症を発症したとしても、成犬の場合、命に関わるような症状はほとんどありません。咳などの症状はなく、下痢や粘液便などが長期化した場合はコクシジウム症の可能性が考えられます。重症になると血便や脱水症状、嘔吐、食欲不振などを起こします。
他のウイルスとの重複感染があったり、免疫力が低い子犬や幼犬、老犬などは症状が重くなり、最悪の場合は衰弱して死亡することもあるため注意が必要です。
また、コクシジウム類で人間に感染する寄生虫の中に、猫を終宿主としたトキソプラズマがあります。コクシジウム類のトキソプラズマは健康な人が感染しても、特に症状などが出ず自然に治癒してしまうことがほとんどです。
犬のコクシジウム症の治療法
基本は投薬による治療
コクシジウム症の治療には、投薬が必要になります。下痢や嘔吐などの症状が強い場合は、抗菌薬や駆除薬などの薬に加えて下痢止めや吐き止め、輸液などを併用することもあります。
サルファ剤(抗菌薬)の投与
通常1週間ほど、長くて3週間くらいの期間、抗菌薬サルファ剤を投与します。薬でコクシジウムの増殖をとめ、犬の免疫力を上げることでコクシジウムを撲滅します。
サルファ剤の場合、数日間の投与が必要になりますが、1回の投与で効果がある薬として、コクシジウムに感染した犬にトルトラズリル(バイコックス○R)を投与することもあるようです。
プロコックス(駆除剤)の投与
プロコックス○Rは、抗線虫薬(エモデプシド)と抗コクシジウム薬(トルトラズリル)を配合した、国内で承認されている犬用のコクシジウム駆除剤です。犬に1回投薬するだけで、イソスポラ属原虫のコクシジウムだけでなく、犬回虫や犬鉤虫、犬鞭虫などの消化管内線虫類をまとめて駆虫することができます。
苦みを感じない経口懸濁液で、犬に投与しやすいのが特徴です。なお、体重0.4キログラム未満の犬や、2週齢未満の子犬には投与できません。
糞便を適切に処理して再感染を防止する
コクシジウムに感染した場合は、治療と同時に感染した糞の適切な処理を行うことも大切です。
消毒では、コクシジウムを死滅させることはできません。コクシジウムに感染した犬の糞便がついた犬の布団などには、煮沸処理が有効です。症状を長引かせたり再感染を起こしたりしないように、しっかりと治療や処理を行いましょう。
治療後は必ず再検査を行いましょう
コクシジウム症は犬の免疫力が低下しているとなかなか治らないこともあります。
治療が終わり症状が回復して完治したと思っても、コクシジウムが完全に排除しきれていないと、再発を繰り返してしまいます。
一通りの治療が終わったら、一度糞便の検査を行いコクシジウムが完全に排除されているかを確認しましょう。
犬のコクシジウム症の予防法
他の犬の糞便に気をつける
コクシジウムは、感染した犬の糞便から経口感染するので、散歩中など犬が他の犬の糞の匂いを嗅いだり舐めたりしないように注意しましょう。 散歩から帰ったら、足や被毛に糞便がついて汚れていないかを確認して、清潔な状態を保つように心がけてください。
糞便はすぐに処理する
コクシジウムに感染した糞便は、排出してすぐには感染力がありません。犬の糞便中に排泄されたオーシストは、時間の経過と伴い感染性のある胞子形成オーシストに変化します。
時間が経つにつれて感染力が高まるので、糞便が出たらすぐに片づけるように心がけましょう。そうすることで、他の犬への感染や、自分の便で再び感染することを防ぐことができます。コクシジウムを予防するためにも、日頃から犬の飼育環境を清潔に保つことを意識すると良いでしょう。
定期的に検便を行う
コクシジウムに感染していても、便に異常がなく症状が出ない場合もあるので、感染していないことを確認するためには必ず糞便の検査をしなくてはいけません。
コクシジウムに感染しているにも関わらず、そのままの状態にしておくと、犬の免疫力が下がった時に発症し、重症化することも考えられます。発症を予防するためにも、毎年のワクチン接種の際に、一緒に糞便の検査をするなど決めておくと安心です。定期的に駆虫することも大切です。
また、犬の妊娠、出産を考えている場合はその前に、コクシジウムに感染していないかの検査を行い、感染が確認され場合は、しっかりと治療を行い子犬への母子感染を防ぎましょう。その他、多頭飼いをしている飼い主さんは、犬への感染が確認されたら、他の犬から隔離した上で、適切な治療を行い二次感染を防ぐように心がけてください。
まとめ
コクシジウムの発症を予防するためには、犬の健康を保ちストレスのかかりすぎない生活を送ることが何よりも大切です。子犬を家に迎えた段階で、コクシジウムに感染していることもよくあります。犬にコクシジウム症の症状が見られた際は、早めに動物病院へ連れて行き、最後までしっかりと治療してください。
コクシジウムの他にも、犬にとって危険な寄生虫はさまざま存在します。定期健診の際に検便を行うことを習慣にし、大切な家族の一員である犬の健康をしっかりと守りましょう。
ユーザーのコメント
20代 女性 すず
自分なりに色々調べたつもりでしたが、この記事を読んでみると知らなかったこともいくつかあって勉強不足だったんだなと自分がこわくなりました。そして改めてコクシジウム症のこわさを痛感しました。
30代 女性 Chappy
どのワンちゃんにもなりうるかもしれないのが、とても怖いですよね。顕微鏡でのコクシジウムの画像を見て、ゾワゾワしました。外でのお散歩中に、他のワンちゃんのうんちの匂いを嗅ぐのでやはり心配になりますね。
20代 女性 ゆり
うんちを食べてしまうのは成犬もやってしまうことなので、普段の行動をきちんと見ておかないといけませんね。今でもうちの愛犬は自分のうんちや、散歩で落ちているうんちを食べようとするので、特に子犬の場合は注意しないといけないなと感じました。
50代以上 女性 輝け命
生後2か月の子なのに凄い量の水を飲みます。
何か変だと引き取った次の日病院へ行き検査して頂いた所
コクシジウム症と診断されました。
この子が里親探しに出ていたのはブリーダーさんのサイト
飼い主さんはこのブリーダーさんのお手伝い? 従業員?
なのかはハッキリ教えては頂けませんでしたが、免許のコピー
わたしたにも拘らずその日以降から連絡が取れなくなってしまいました。
治療2日目下痢は無く成り・4日目排泄物の匂いもかなり無くなりました
あと3日後にはまた検査します。
菌が減るかなく成ったら良いなぁ
せっかく生まれた命です、ケアーして改善出来る様に今現在も
コクシジウム症と戦っております。
本日生後2か月と21日
* 受け渡し前には検査結果を頂くように気おつけて頂ければと思います。
(私の経験から皆様へ)
女性 ゆうか
20代 女性 さくら
犬の良い便は、後始末するときティッシュで掴んだ際に形崩れせず持ち上げることができ、床に便がこびりついたりしない、これが健康な犬の良い便です。
ペットショップやブリーダーから飼ってきたばかりだと、環境の変化のストレスなどで便が緩くなりがちですが、コクシジウムが寄生しているとさらに便が緩くなってしまいます。
あまり管理がきちんとしていないペットショップやブリーダーから犬を飼ってくると、高確率でコクシジウムが寄生していることが多くありました。
きちんと便検査をして寄生虫はいません、と嘘の証明書を発行しているペットショップも中にはあります。ペットショップは当院に検査にきたと飼い主さんに説明をしていて、実際は来てなんかおらず、お店と飼い主さんが揉めたケースもありました。
ペットショップのかかりつけの動物病院が他県なんていうところは特に怪しいです。犬の健康管理をきちんとしているお店の見極めも大事です。
子犬の下痢はときに命に関わります。
まず新しく犬を迎えたら、飼い主さん自身が愛犬を連れて動物病院へ行き、便検査をしてもらうことをおすすめします。
便はなるべく新鮮なものを持って行って下さい。
ペットシーツと一緒に持って行くと便の水分がペットシーツに取られてしまい、便が乾いてしまいます。ビニール袋に便だけを入れて持って行くと良いでしょう。下痢でも固形の便でもどちらでも検査は可能です。
女性 aoi
コクシジウム症は症状をみる限りよほど重篤化しなければ命に関わるほどの感染症ではなさそうですが、対象が免疫力の弱い子犬というのは気を付けなくてはなりませんね。他にも老犬がかかりやすいとありました。うちの愛犬も散歩に出かけるとよく色んな匂いを嗅いでしまうので、他の犬の排泄物に近づいてしまうことがあります。
感染してしまった場合、下痢や脱水症状は老犬には厳しいです。治療をするにも抗生物質はさすがに負担になってしまいますし、歳が歳なので気を付けなくてはならないと思いました。
20代 女性 ゆず
そして、もし感染が確認された場合には隔離して駆虫する必要があります。駆虫する方法ですが、糞便の焼却、蒸気清浄、煮沸消毒、10%アンモニアを用いることが最も有効な方法とされています。また予防策として、糞便が餌と水に混入しないような清潔な飼育環境をつくるように徹底することを心掛けましょう!
ちなみに、コクシジウム症は人間に感染することはありません。ですが、子犬にとってはとても厄介な症状です。これから、子犬を飼い始めるという人は特にできる限りの予防策をしてあげたいですね。
40代 女性 ココ
環境の変化もあり2日目の朝に脱水症状を起こし夜には噴射の下痢。(写真添付)
下痢がついたままのシートを持って動物病院へ。
すぐに「コクシジウム」だと診断されました。
今は駆除のお薬を投与して4日目。
下痢は治まり普通のうんこをしていますがすぐに脱水症状を起こすので目が離せない。
やはり動物病院の先生も劣悪な環境のブリーダーのみコクシジウムを発生すると。
駆除しないと負の連鎖。
そのままブリーダーに報告したら犬の代金がすぐに返金されました。
口止め料なのだと思いましたが。
私のような辛い思いをする人がいると思えば腹立たしいけど。
こんなブリーダーも無くならないのでしょうね。