ペットショップの子犬由来の感染症がアメリカで流行中
アメリカの12の州で、チェーン展開のペットショップの子犬に由来すると考えられる感染症の患者が多く出ています。
カンピロバクター属菌による感染症で、55人の罹患が報告され、そのうち13人が入院となっています。
アメリカのこととは言っても、日本の繁殖施設やショップでも十分に起こりうる事態ですので、どうしてこんなことが起こったのか、どんなことに注意しなくてはいけないのかをご紹介いたします。
まず、カンピロバクター属菌って何?
カンピロバクター属菌は、犬を含む家畜や家禽の腸の中に潜む菌です。ヒトでも犬でも感染性腸炎の原因菌のひとつとして知られています。
生や加熱が十分でない食肉を食べたり、感染した動物の排泄物から感染します。カンピロバクター属菌に感染すると2〜5日の潜伏期間の後に症状が現れます。
主な症状は次のようなものです。
- 発熱
- 下痢
- 食欲減退
- リンパ節の腫れ
感染しても必ずしも症状が出るわけではなく、気づかないうちに治っている場合もよくあります。抗生剤の投与、または抗生剤は使わず十分な水分と休養をとることで回復を図ります。
多くの場合あまり重い症状にはならず5日以内に治るのですが、ヒトでも犬でも幼齢または高齢、病中病後などで免疫力が弱くなっている場合には注意が必要です。
なぜペットショップの子犬が原因に?
このように比較的「ありふれた」と言える菌であるカンピロバクターが、わざわざ「流行」と呼ばれニュースにもなっているのはなぜでしょうか?
それは、短期間のうちにある特定のペットショップチェーンの子犬と接触した人々の間で感染性腸炎が多く発症し、疾病管理センターの調査が行われたからです。
罹患した55人のうち35人はそのペットショップチェーンから子犬を購入したばかりだったり、ショップで子犬と触れ合った人たちでした。14人はペットショップチェーンの従業員で、残りはそれらの感染した人と接触した人などでした。
最初に複数の感染者が報告されたのは2017年9月で調査は現在も継続中ですが、何人かの獣医師は「繁殖施設の母犬がカンピロバクター属菌に汚染された食物を与えられ、出産や授乳の過程で子犬に感染した可能性がある。」と推測しています。
またペットショップの店内の消毒や従業員の手洗いについても徹底するよう指導されています。
多くのペットショップの裏にある問題を考えてみると...
ペットショップに流通される子犬の裏にある問題はいろいろな場面で多く語られています。パピーミルと呼ばれる大規模な繁殖施設では清掃や母犬の衛生状態が後回しにされている例がまれに有ります。そのような環境で生まれた子犬が生まれながらに病原菌を保有しているとしても不思議はありません。
幼い子犬にはカンピロバクターのようなありふれた菌でも命取りになることも多いため、流通に乗る前に命を落とす犬も少なくないでしょう。
今回アメリカの複数の場所でたくさんの人が一斉にカンピロバクター症を発症したために、ペットショップの前段階の繁殖施設や流通に改めて注目が集まりましたが、同じようなことは日本でもいつ起こってもおかしくはありません。多くの人に、ペットショップに流通される子犬にまつわる問題を考えてもらうきっかけになってほしいものです。
まとめ
アメリカのペットショップチェーンの子犬を購入した人やショップ従業員にカンピロバクター症が多く発症したことから、ショップの子犬由来で感染症が流行という事態が報道されました。
販売されていた多くの子犬が感染していた背景から推測すると、繁殖施設やショップでの衛生や健康の管理が問われています。これをきっかけに、犬を取り巻く環境が改善されればと願わずにはいられません。
また、ペットショップの犬に限らず、犬を家庭に迎えたらすぐに動物病院での健康チェックは欠かせません。寄生虫や菌の感染などがないか、あった時には適切な対処が必要なことがよくわかる今回の事態でした。
そしてこれもペットショップの動物だけでなく、動物を触った後やフンの処理をした後には石鹸できれいに手を洗うことの徹底も大切ですね。当たり前のことのようですが、おろそかにすると思わぬ大きなことにもなります。気をつけて健康で楽しく犬と暮らしたいですね。
《参考》
https://www.cdc.gov/campylobacter/outbreaks/puppies-9-17/index.html