【獣医師執筆】犬の包皮炎|原因や症状から治療法まで解説

【獣医師執筆】犬の包皮炎|原因や症状から治療法まで解説

犬の包皮炎とは、細菌によって引き起こされる亀頭表面および包皮腔粘膜の炎症のことを言います。構造的特性上、日常的に見られる身近な疾患と言えます。包皮炎は、性成熟した多くの雄犬に見られます。ここでは、包皮炎の原因、症状、治療法を解説していきます。

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記事の提供

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

犬の包皮炎の原因

座って悲しげな表情でうなだれている子犬

犬の包皮炎は、陰茎を覆う筒状の皮膚組織である包皮の粘膜において、細菌が増殖し、炎症を引き起こすことによって発症します。包皮炎の発症には、解剖学的および環境的要因が関与しています。

常在菌の増殖

健康な犬の包皮腔内には一定の常在菌が存在しています。これらが、何らかの理由で包皮腔内の環境が悪化することで、異常に増殖してしまい炎症を引き起こすことになります。

包皮内異物や腫瘍

散歩中の植物片、砂、抜け毛などの異物が包皮内に迷入することがあります。また、陰茎に腫瘍ができてしまうことがあります。これらが物理的な刺激となり、包皮粘膜を傷つけることで炎症が引き起こされることがあります。

解剖学的構造とセルフグルーミングの影響

犬は構造上、包皮内が湿潤な環境を保ちやすいため、細菌が繁殖しやすくなってしまいます。また、過剰にグルーミングを行うことで、口腔内の雑菌が持ち込まれたり、摩擦による粘膜の損傷が起きたりすることで、包皮炎を悪化させる要因になることがあります。

基礎疾患などによる免疫力低下

何らかの基礎疾患が存在していたり高齢犬の場合、免疫力が低下していることがあります。このような場合は、常在菌が増殖してしまい包皮炎が発症したり、包皮炎が重症化することがあります。

犬の包皮炎の症状

仰向けで寝転んでいる犬

包皮炎で最もよく見られる症状は、包皮の先端および周辺の膿性分泌物の付着です。

膿性分泌物

健康な状態であっても少量の透明な分泌物が認められることはありますが、包皮炎を発症すると、黄色や緑色の膿性分泌物が持続的に、あるいは排尿時に染み出るように確認されます。床、ベッド、飼い主様の衣類などに分泌物が付着して気づかれることも多々あります。

グルーミングの増加

下腹部やペニスの先端をしきりに気にして舐め続ける行動が見られます。この行動により、さらに患部の不快感や痛みを引き起こすことがあります。

患部の発赤、腫脹、痛み

炎症が進行すると、包皮の先端や周辺の皮膚に発赤や軽度の腫れが見られることがあります。重度の場合は熱感、不快感、痛みがあるため、触診を嫌がることがあります。

犬の包皮炎の治療

エリザベスカラーを着けて横になっている犬

包皮炎の症状が軽度であれば、積極的な治療の必要はなく、経過観察でも問題ありません。しかしながら、多量の膿性分泌物が排出されているような場合は治療する必要があります。

包皮内の洗浄

包皮内に溜まった膿性分泌物を洗い流します。異物がある場合は、取り除く必要があります。滅菌された生理食塩水や、刺激の少ない抗菌性の消毒液を包皮内に注入し、包皮腔内を洗浄します。回収液が綺麗になるまでこれを繰り返します。

外用薬の塗布

洗浄と並行して、細菌感染を抑えるために、外用抗菌薬軟膏を患部に塗布します。難治性の包皮炎の場合は、膿性分泌物の細菌培養検査を行い、抗生物質を内服することがあります。

エリザベスカラーによる行動制限

患部に不快感や痛みがある時は舐め続けてしまうため、舐める行為を物理的に遮断する必要があります。エリザベスカラーなどを活用し、粘膜への持続的な刺激を防ぎます。

去勢手術

未去勢の犬で、適切な治療を行っても包皮炎を繰り返す場合は、去勢手術を行うことがあります。去勢手術は、分泌物の減少は期待出来ますが、包皮炎の発生予防にはならないため注意が必要です。

まとめ

獣医師と話す飼い主と台の上で伏せている犬

犬の包皮炎自体は、予後の良好な疾患です。しかしながら、治療の有無にかかわらず再発することが多い疾患でもあります。日頃から愛犬の様子に注意を払い、気になる様子があれば早めに動物病院に相談することをお勧め致します。

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