犬の肥満細胞腫ってどんな病気?愛犬の体に奇妙な腫れを見付けたら必ず調べて!

犬の肥満細胞腫ってどんな病気?愛犬の体に奇妙な腫れを見付けたら必ず調べて!

「肥満細胞腫...悪く言えば、ガンです。」先生から言われたとき、私は頭の中が真っ白になりました。どんなに健康に気を付けていても、どの犬にも起こりうる皮膚のがん。肥満細胞腫。あなたの愛犬にも、こんな膨らみがないか、一度、調べてみてほしい。少しでも長く一緒に過ごせるように。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

愛犬の体の違和感の正体

我が家の愛犬、かんな。
3月の始めに「肥満細胞腫」と診断され、現在治療中です。(3月10日現在、手術日待ち)

▼愛犬の横腹に出来た肥満細胞腫。赤い部分が少し腫れています。かんなの胸部

ある日、いつものようにかんなのお腹をなでなでしようとすると、3センチほどの膨らみを胸部に発見しました。

触ってみると中も柔らかく、しこりなどは見つかりません。

虫刺されにしては大きすぎる。乳腺腫瘍なのか、または、、。
嫌な予感がし、次の日の朝、かかりつけの病院へ連れていくことにしました。

ですが病院へ行く当日には、すっかり1センチ程の大きさまで、腫れが引いていたのです。

念のため、病院で検査を受ける事にしましたが、今考えると、ここで病院にかかるか、かからないかが、この子のターニングポイントだったと思います。

すがた形を変えて体内に潜む肥満細胞腫

ガン細胞

この病気は犬にも猫にも起こりうる病気で、体の免疫機能のひとつである肥満細胞が「悪性化」して、「腫瘍」に変異したものです。特に犬の場合「悪性」となるケースがほとんどです。

別名「大いなる詐欺師」と呼ばれるほどあらゆる形や大きさで皮下に現れるガン細胞で、イボ状であったり、脂肪の塊のような場合や、皮膚が赤くなって見える場合もあります。

幸い、直ぐに動物病院で診察を受けたため、早い段階でこの病気と判明しましたが、上記のように見た目で判断が付きにくいので、病院で細胞検査を受ける必要があります。

肥満細胞が腫瘍化すると「肥満細胞腫」になる

腫瘍化する前の「肥満細胞」は、病原菌をやっつけてくれる重要な役割を持つ細胞です。

体に異物が入った時に「免疫」に関する物質を分泌し、病原菌などから体を守ります。

その反面、花粉症などの「アレルギー反応」に関わる細胞でもあるため、この細胞が過度に反応すると体の機能に異常が起ります。

(ちなみに肥満細胞という名前は、愛犬の肥満度にはまったく関係がありません。ふっくらとした細胞の形からそう名付けられたものだそうです)

ガン化して「肥満細胞腫」になると、本来体を守るために働く物質である「ヒスタミン」や「ヘパリン」などが、異常分泌されるため、様々な体の異常やアレルギー反応を起こします。

腫瘍になった部分を揉んだり刺激を行うと、腫瘍からそれらの物質が体内に放出されるため 、様々な症状が現れます。

放っておくと、リンパ節、肝臓、脾臓、骨髄などへの転移が起こりやすく重症化する危険性もあります。

肥満細胞腫の症状

  • 傷が治りにくくなる
  • 血を固まりにくくなる
  • アナフィラキシーを誘発する
  • 低血圧になる
  • 胃十二指腸潰瘍になる
  • くしゃみ、鼻水がでる
  • 粘膜の充血がみられる
  • 皮膚のかゆみ
  • 浮腫がみられるようになる
  • 原因不明の嘔吐や下痢がおこる

診断方法と治療の種類

検査

診断方法

肥満細胞腫の診断は、細胞の検査をすることから始まります。まず腫れている部分の細胞を注射器で吸い出し、染色後、顕微鏡で観察します。

細胞の診断結果が出ると、モニターに細胞の画像が写し出されました。獣医の先生から粒々の顆粒などの説明が行われた後、肥満細胞腫であると告げられました。

このように診断結果は当日に出ます。
ですが、その日は腫瘍の進行具合や、転移はないのか?悪性なのか?という所まではまだ分かりません。それが分かるのは、細胞腫の切除手術後となります。

手術と費用

切除手術は、かんなの場合3センチの腫瘍でしたから、その周りのガンの進行の可能性も考え、大きめにごっそりと切除しました。

その後切除した細胞を病理検査に出し、癌のステージ(グレード)が分かるのです。

費用の目安として、

  • 手術前健康診断が「約2万円前後」
  • 手術費用が「5万円~10万円前後」

が、一般的なようです。

治療方法

グレードによって、今後の治療方法が変わります。

また、愛犬の年齢、他臓器の健康具合、飼い主、獣医師の意向によって治療は様々で、切除手術、放射線治療、ステロイド治療、抗ガン剤、食事療法、サプリメント療法などがあり、それらを併用して治療します。

愛犬のために自分に何が出来るのか

愛犬

「これから長い治療となるのは覚悟してください。完治しても、数ヵ月おきに転移がないか検診された方がいいと思います。」

と、獣医師さんもおっしゃっています。

つまり、完全なる「完治」はありません。

入念に細胞腫がないか、いつも触って確かめる。転移の可能性が高い子は、全身毛を刈って確かめる子もいるそうです。愛犬の心の声を代弁できるのは、飼い主である私や、あなただけなのです。

肥満細胞腫と付き合っていく

犬と飼い主

私達とかんなは、この先長い期間「肥満細胞腫」と付き合っていきます。

かんなの好きなことはすべてやります。手術して、回復したら、また、かんなの大好きな海辺を散歩したい!

美味しいごはんをたらふく食べてもらいたい!大好きな、心から大好きな、ボール!たくさんのボールをかんなに投げて大はしゃぎさせたい!

犬、猫、あらゆるペットたちは、命をもって、私たちに、素直に生きればいいと、正直に好きなことをして生きていれば良いんだと教えてくれます。
今回こうして皆さまの元へ、ワンちゃんホンポ様を通じて、かんなの生きる証を伝えることができ、大変感謝致します。

また、同じ症状がある方にいち早く、このような病気があると知って欲しく、記事を書かせていただいております。

この病気が発覚してすぐ、かんなを保護してくださった保護主様へ報告しましたところ、保護主様の方でも、同じ疑いのある子が一頭、病院へかかられました。(その子は幸い、良性の脂肪腫でした。)

愛犬と少しでも長く一緒にいられますように、今一度、「腫れている場所はないか?」「嘔吐や下痢等が続いていないか?」毎日のグルーミングのついでで良いのです。確認していきましょう。

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