犬の血小板減少症とは
血小板減少症は、犬の血液中の血小板数が正常範囲以下に減少している病気で、人間にも発症します。血小板とは、血液を固まらせる役割、血管に損傷があった場合に血小板が集合し、傷口をふさいで止血をします。
通常、血小板は骨髄内で作られてから血液に放出され、体内を巡ります。古い血小板は除去され、新しい血小板が作られることを繰り返しながら一定量を保っていますが、血小板が少なくなることで血が止まらなくなってしまったりする症状を血小板減少症と言います。
犬の中には、血小板減少症になりやすい犬種があり、主に小型犬や短頭種に多いと言われています。ダックスフント、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ボストンテリア、ペキニーズなど、日本でも馴染みある犬にも多く見られる病気です。
犬の血小板減少症の症状
貧血
犬がふらふらしながら歩いていたり、起き上がりの動作が鈍かったりといった様子はないでしょうか?このような場合、貧血を起こしている可能性があります。貧血は病気の初期症状のサインであることが多く、血小板減少が起きている可能性もあるので、安易に貧血程度と放置してはいけません。
出血が止まらない、傷口が塞がらない、内出血が見られる
鼻血や怪我の出血、深爪したときになかなか血が止まらないことがあります。また、ぶつけていないのにアザのような紫斑が出ている場合や、犬の体に点状の出血が見られるときは、すでに血小板減少症が発症している可能性が高いです。
紫斑や点状出血は体のどこに出るかわかりません。皮膚、粘膜、目、耳などさまざまな箇所に現れます。
血便・血尿・下血・吐血・喀血
血小板減少症は、全身性の病気なので皮膚以外に消化管でも出血が起こります。そのため、犬に血便・血尿・下血・吐血・喀血などの症状が出る場合があります。また、既に血小板減少症が進行して、重篤な状態になっている可能性も考えられます。
最悪の場合、これらの症状が出て数時間後に死に至ってしまうこともあります。血小板減少症以外の病気の可能性もありますが、いずれにしても緊急事態と思った方がよいでしょう。
犬の血小板減少症の原因
遺伝や骨髄内の腫瘍
血小板減少症を引き起こしやすい犬種の場合、親犬からこの症状を引き継いでしまっている可能性があります。もともと血小板を作る機能が弱いため、遺伝的に血小板減少を引き起こしやすいのです。
また、骨髄内に発症した腫瘍が血小板の破壊を起こして、血小板の正常値を保てなくなっている場合もあります。
自己免疫性による血小板の破壊
自己免疫とは、本来自分の体内で必要なものを抗体が敵と思い、間違って攻撃してしまうことを言います。この症状を血小板減少に当てはめると、犬の体内で、自分の血小板を敵だと誤認した抗体が血小板を攻撃し、急速に血小板が破壊され減ってしまうことで血小板減少を引き起こします。これを「免疫介在性血小板減少症」と言います。
これに似た病気に「免疫介在性溶血性貧血」というものがあります。免疫介在性血小板減少症が血小板が破壊された症状を指すものに対し、免疫介在性溶血性貧血は、赤血球を破壊することで引き起こされる貧血の病気です。
出血による血小板消費量の増加
犬が事故やケガに遭い大量に出血することもあるでしょう。血小板は、この出血を食い止めようと働き続け大量に消費されます。それにより体内での血小板の生成が追いつかず、正常値数に至らないために、血小板減少症を引き起こしていることも考えられます。
犬の血小板減少症の治療法
プレドニン(プレドニゾロン)の投与
プレドニンはステロイドの一種でさまざまな病気の治療に用いられています。犬の体内の炎症を抑えたり体の免疫力を抑制したりすることができ、犬の血小板減少にもよく処方されます。
プレドニンは、一般的に犬の症状と血小板数値を見ながら、徐々に量を減らす方法を取り、改善が見られない場合は増量していきます。プレドニンは肝臓に負担がかかるなどの副作用が出ることもあるので、その場合は増量せずに別の免疫抑制剤を投与します。
抗生物質
抗生物質は、犬の体中の細菌など、微生物の増殖を食い止める働きをします。血小板減少で体力が落ちた犬の感染症を防ぐ役割も果たします。
抗生物質は多数の種類がありますが、共通して守らなければいけない用法は、処方された抗生物質は必ず飲み切るということです。中途半端に抗生物質を飲んだまま途中でやめると、細菌は抗生物質に対し耐性を持ってしまいます。その結果、細菌をより悪質なものに成長させてしまう可能性があるからです。
輸血
犬の貧血症状の悪化状態や、極度の血小板減少数値が見られる緊急の場合には、輸血をすることもあるでしょう。犬自身に血小板を作り出す力が足りない場合や生成が追いつかない場合、輸血によって血小板が一定量作られるまで待つことができます。
しかし、輸血はさらに免疫異常を引き起こしたり、アナフィラキシーショックを起こリスクもあります。医師はそのリスクと犬の現状を精査して判断し、輸血の有無を決めます。
食事療法
血小板減少症を食事だけで治療していくことは出来ません。しかし、犬の食欲が減退していたら、まずは体力や気力を回復させてあげる気持ちで、好きな食べものを少しずつ与えるところから始めましょう。
その次に、積極的に血小板減少の改善を考えた食事療法を取り入れるとよいでしょう。食事療法には即効性はありません。焦らず継続的におこなうことが大切です。
血小板減少症の犬には、貧血改善と同じ食事が効果的です。貧血に良い食べ物の代表にレバーがあります。鶏・豚・牛レバーは、鉄分が多く含まれていて貧血防止に有効です。また、ブロッコリーやほうれん草に含まれているビタミンCは、鉄分の吸収を助けるのでレバーと一緒に摂取するとより効果的です。尿路結石の治療歴のある犬は、ブロッコリーやほうれん草はやめましょう。
しじみなどの貝に含まれているビタミンB12は、血液を作る働きを助けるのでおすすめです。サプリメントもあるので、活用してみるとよいかもしれません。
血小板減少症は完治するのか
血小板減少症は、原因によっては完治します。血小板減少症の治療で大切なことは、初期段階から治療を施すということでしょう。初期に効果が見られない場合は犬の死亡率が上がりますが、早い段階での治療効果が得られると、完治や寛解、長期生存も十分可能です。そのためにも、まずは原因を特定してもらうことが大切です。
自己免疫性血小板減少症が原因の場合、血小板数が減少すると共に残った血小板の止血能力も失います。このため、一般的な治療をしても治療の初期段階ですでに余命が少なく、死亡率は高いと言われています。
一方で、血小板減少症の原因だった病気の治療が終われば改善されるというケースもあります。長期的な投薬などをしていく必要はあるかもしれませんが、日常生活を普通に過ごすことができるところまで回復する場合もあります。
犬の血小板減少症の予防法
犬の血小板減少症は、発症原因が特定できないため、予防することは難しい病気です。ですが、初期の段階で発見し、早い段階で治療を始めることはできるでしょう。
日頃のスキンシップと体のチェック
日頃のスキンシップは、犬の異変に気付く最善策と言えます。あまり動かない、食欲がない、けがをしたら血が止まらないという様子は、日頃一緒にいる飼い主さんが一番気づきやすい症状です。
また、犬の体をよく観察することも大切です。血小板減少症の症状には、体に点状の出血が現れる場合があります。打撲したような紫斑も見つかることがあり、これらをいち早く見つけることが大切です。点状出血や紫斑は、毛色の濃い犬は見つけにくく発見が遅れがちになってしまいますので、特に注意が必要です。犬とスキンシップを取りながら、体をよくチェックしてあげることで初期段階で気づくことが可能です。
定期的な検査
春の健康診断の季節には、年1回の犬のフィラリア検査を行う家庭も多いでしょう。その際、一緒に血液検査をしてもらうことで、血小板の数値を確認することができます。血小板減少症の発見だけでなく、別の病気の早期発見にも役立ちます。他の検査と一緒におこなうことで気軽にチェックが出来るだけでなく、定期的に検査してもらうことで、健康時の血小板数値も把握しておけるなどのメリットがあります。
親犬の遺伝を確認しておく
小型犬の中には、血小板減少症を発症しやすい犬種がいます。そのような犬は、必然的に飼っている犬の親兄弟が血小板減少症を持っている可能性も高くなるでしょう。親に発症があったか確認し、血小板減少症があると判明したら、かかりつけの獣医師に伝えておきましょう。常に飼い主さんとかかりつけの獣医師で血小板減少症を意識することができ、早い段階で異変に気付くことができます。
感染予防
血小板減少症の発症原因に、犬が何らかの感染症を発症したという場合もあります。一口に感染症と言ってもさまざまですが、予防接種で防げるものも多数あります。飼い主さんとして責任を持ち、摂取すべき予防接種をすべて受けさせることは、最低限の予防策と言えるでしょう。
まとめ
犬の血小板減少症は、原因の特定が難しいため完全な予防策もなく、放置していて自然に治るものではありません。このため、飼い主さんがいかに早く異変に気が付いてあげられるかが重要となります。
また、いざ治療が始まっても、薬の投与や治療方法に疑問や不安を抱えてしまう飼い主さんの方が多いのも現状です。血小板減少症の治療は長くかかる場合もあるので、セカンドオピニオンなども上手く活用し、納得のいく治療法を探りながら愛犬の回復を願いましょう。
ユーザーのコメント
30代 女性 まろんママ
女性 ミント
女性 sora
40代 女性 匿名
初期発見は難しく思います。
気が付いた事は、血尿というよりはオシッコの色が濃かった事です。
血小板が破壊されオシッコに混じると色が濃くなると獣医さんも言ってました。
もっと早く気が付いてあげていたらと胸が締め付けられる思いです。
他のワンちゃんたちが、この難病を発症しない様に…。願うばかりです。
30代 女性 ひまわり
ワクチン注射なんかで血が出る際は1度止血の時間がどのぐらいかかるのか注意してみておくといいかもしれませんね。
50代以上 女性 匿名
愛犬の為ならと頑張りました。先月12月22日歯茎の出血と血便が気になって病院に行きました、恐れていた再発です。貧血がひどくてすぐに lcu 酸素テントに入院です
酸素欠乏症で息をするのもきつくて、すぐに輸血しました。その時はいい方向に行ってたんだけど急変して肺炎か肺出血をおこし、再び輸血と免疫グロブリンを投与しましたが lcuの中で亡くなりました。年末で面会時間が決まってたから会いたくても会えないのが辛かったし、酸素テントが家にあったら最後は家でみとりたかったです。
lcuの小さな窓から顔出して苦しいのに色々アピールしてくるんですよ、きっと淋しくて家に帰りたいと、言ってたと思います。時間が戻せるなら愛犬が元気なうちに脾臓をとれば再発しなかったと思います今は後悔してます。
同じ病気で悩んでる方、脾臓をとって元気になった犬がいるそうです、病院の先生に相談して見て下さい。
40代 男性 まる
20代 女性 パピヨン
50代以上 女性 匿名
50代以上 女性 匿名
受信中も血が止まらず急激に悪化。今はステロイド投与と輸血をしながら詳しい検査結果待ち中ですが貧血でなのか黒い体の色が茶色にまで変わってしまったのには涙が止まりません。サマーカットなので皮膚の色がよくわかります。
14歳と高齢ではありますが、昨日まで普通にご飯食べて動き回っていたのに急にこんなことになるなんて考えられません。輸血した体で鼻血をだしながら面会時も立ち上がりしっかりとした眼で見つめ返してくれたので良い結果を待つばかりです。
40代 女性 匿名
入院当日に、5㎜大の出血斑を腹部に2つ見つけ、直ぐに受診し入院しました。この時、元気や食欲もありました。ステロイドや、免疫抑制剤、輸血、抗がん剤まで試しましたが、一度も改善なく、入院4日目に亡くなりました。あまりに急で、受け入れられずに居ます。
40代 男性 ペコ吉