人獣共通感染症(ズーノーシス)とは?
人獣共通感染症とは犬や猫、鳥、人間など、人間と動物の両方に感染する病気の総称です。
犬に関係する人獣共通感染症には狂犬病、結核、エキノコックス症、レプトスピラ症などがあり、犬を飼う中でこれらの病名を耳にしたことのある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
近年、東南アジアを中心に感染が広がったSARS(重症呼吸器症候群)や鳥インフルエンザも、人獣共通感染症のひとつとされています。
人獣共通感染症は種類も多いうえに、病原体が変異して新たな感染症になることもあります。命に係わる危険な感染症もありますので、正しい知識を身に付けて、犬も飼い主も感染を防ぐ対策をとることが大切です。
犬に関係する人獣共通感染症の種類と症状
狂犬病
狂犬病は感染から発症までに約2週間~2カ月程の潜伏期間があります。潜伏期に幅がありますが、噛まれた部位がどこかに左右されるといわれています。 初期症状としては、むやみに歩き回る、ものに噛み付く、穴を掘る、遠吠えなどの異常行動が見られます。その後、足などの末端から麻痺が始まり、全身に麻痺が至ります。最終的には昏睡状態になり、感染した犬は100%死亡するという怖い病気です。
狂犬病は人間にも感染する恐れのある人獣共通感染症です。人間へ感染した場合、症状は犬とほぼ同じですが、幻覚やけいれん、恐水症などの経緯をたどり死に至ります。
サルモネラ症
サルモネラ症は、サルモネラ菌を経口摂取することにより感染する病気です。人間以外の動物が感染しても無症状のことが多いとされています。犬の場合は3%~10%が保菌しており、免疫力が低下している時に軽い下痢に見舞われる程度の症状です。人に感染すると、約8~48時間以内に腹痛や下痢、発熱が起こり、重症になると死に至る場合もあります。
河川や土壌などの自然環境に多く分布しているため、特に菌の繁殖しやすい7月~9月は、散歩など外へ出かける際には注意できるとよさそうです。
レプトスピラ症
レプトスピラ症は、ネズミなど野生動物の腎臓で保菌されているレプトスピラという細菌が、何らかの理由で犬や人の体内に入ることで感染する病気です。保菌動物の尿によって汚染された水を飲んだり、土壌に触れたりすることで感染します。菌の血清型によって、さまざまな型があることも特徴です。
感染から3日~14日間程の潜伏期間があり、発熱、頭痛を伴う風邪のような症状が特徴です。軽症の場合はそのまま治ることもありますが、重症の場合は肝障害や出血、黄疸、腎障害を起こし、死に至ることもあります。人に感染した場合も同じ症状が見られます。人と犬それぞれに対してワクチンは作られていますが、血清型によってはワクチンがないものもあります。
犬に関係する代表的な人獣共通感染症を取り上げましたが、これらはほんの一例にすぎません。結核、寄生虫、ジフテリア、コレラ、マラリアなども人獣共通感染症です。
犬が人獣共通感染症になった時の治療法
隔離と消毒
人獣共通感染症の可能性がある場合、その原因が特定できるまでは隔離と消毒が重要となります。隔離を行う目的は、他の動物や人への二次感染を予防することです。特に感染力の強い感染症の場合速やかな隔離を行う必要があります。合わせて徹底した消毒を行うことにより被害を最小限に抑えます。
抗菌薬の投与
人獣共通感染症に感染した場合、まずは感染源である菌を死滅させなければなりません。感染症の種類により投薬する薬はさまざまですが、抗生物質、駆虫薬、抗菌薬などが獣医師の判断により処方されます。
犬が元気になると投薬を忘れがちですが、処方された薬はしっかりと飲み切るよう管理しましょう。薬を嫌がる場合は投薬補助食品を利用してみたり、犬が好きなおやつに混ぜてみたりして、工夫してあげましょう。
対症療法
人獣共通感染症に感染した場合、原因を特定できない、原因の特定に時間がかかる、治療薬がないなどで、適切な処置ができない場合があります。そのような時は症状を軽くするための対症療法の処置がとられます。嘔吐や下痢により脱水症状や栄養不足に陥ってしまったときは点滴などを行い様子をみます。
対症療法は感染症の根本的な治療にはならず、長期化する場合もあります。飼い主さんにとっては、体力的にも経済的にも負担になりますが、根気よく寄り添い励ましてあげましょう。
犬の人獣共通感染症の予防法
ワクチン、予防接種
犬を飼う上で基本となるワクチン接種は、あらゆる人獣共通感染症の予防になります。特に免疫力の弱い子犬には効果があります。犬を飼い始めたら、まずはワクチンや予防接種の計画を動物病院で相談し、確実に接種しましょう。
足を洗う
人獣共通感染症はいつどこで感染するかわかりません。特に散歩やドッグランなど、不特定多数の犬や人が集まる場所では感染の可能性が高まるので、十分に気をつける必要があります。外から帰ってきたら、石鹸で足を洗ってあげましょう。
経口摂取により感染してしまう可能性もあります。除菌用ウェットシートなどで口の周りや口腔内を拭いてあげるのもいいでしょう。犬の体調に変化が見られた場合は速やかに動物病院を受診してください。
衛生的でない場所には近づかない
人獣共通感染症の予防対策として、衛生的に問題がありそうな場所や物には近づかないようにしましょう。散歩の途中に動物の死骸などがあると、臭いが強いため、犬も反応しやすくなります。散歩中は飼い主さんが周りの状況をよく見て、犬をリードしてあげましょう。
万が一接触してしまった場合は、石鹸などで体をよく洗うようにします。その後体調の変化がみられるようなら動物病院を受診しましょう。
まとめ
今回は、ごく一部の人獣共通感染症をご紹介しました。ウイルスや菌は日々変異を繰り返しており、未知の感染症も存在すると言われています。犬にも人にも感染する人獣共通感染症を予防するためには、飼い主さんが日頃から情報を集め、知識を深めることが重要です。
北海道大学の「人と動物に共通する感染症の研究・教育機関」では、人獣共通感染症の研究がされており、新しい情報が発信されています。また東京都福祉保健局のホームページでは「人と動物との共通感染症一覧」を掲載し注意喚起を促しています。愛犬と自身を守るため、しっかりと知識を蓄え、予防と対策を行いましょう。
ユーザーのコメント
40代 女性 pon
どんなに手入れをよくしている犬でも、お散歩に出れば何か菌やウイルスを持ち込んでいるかもしれませんし。特に小さなお子さんがいらっしゃるようなご家庭だったら、お子さんが自分の手を口に持っていくまえに手を洗う習慣が必要かもしれません。
ここ最近は狂犬病なんて日本にはなくなったと思われていますが、海外で犬に噛まれて狂犬病を日本に帰国後発症された方が数年前にニュースになっていました。空路、海路、日本にいつ狂犬病ウイルスが侵入し蔓延するかもわかりません。危機意識だけは忘れず持っていた方がよいと思います。
30代 女性 まろんママ