胃ガンのリスクを高めるハイルマニイとは
ピロリ菌陰性でも油断大敵!
2015年6月の日本ヘリコバクター学会にて、北里大学薬学部の中村正彦准教授らのグループの研究を通して発表された内容が、愛犬家に驚きの波紋を広げています。
胃がんの原因としてはピロリ菌が有名ですが、駆除することで胃がんのリスクを軽減できると言われてきました。
しかし、例えピロリ菌に感染していなくても、ヘリコバクター・ハイルマニイ(以下ハイルマニイ)に感染していると胃がんに罹る可能性があるのだとか。
このハイルマニイ、犬の唾液から感染するというのですから、聞き捨てなりません!
胃がんリスクを高めるハイルマニイ
ハイルマニイはピロリ菌の亜種で、胃MALTリンパ腫という胃がんの一種を発症させると考えられており、冒頭の研究チームが行った調査によると、日本全国のピロリ菌陰性患者でリンパ腫を患っている人の6割がハイルマニイに感染していることが判明。
さらに、これに感染していると、この胃MALTリンパ腫が発症する確率が7倍も高まるというデータもあるそうです。
ただ、このハイルマニイも除菌することで治る確率も高いとのこと。
とはいえ、どんな菌であれ病気になる可能性があるものは最初から避けて通りたいものです。ただ、犬を飼っている人にとってハイルマニイは、少々やっかい。
その理由として以下のような点が指摘されています。
- 犬との、ごく日常的なふれあいで感染しやすい
- その動物が感染しているかどうか、見た目で判断できない
- 感染力や毒性も強い
- 感染の診断が難しく、「PCR法」という特別な遺伝子検査ができる医療機関でしか確実な診断が行えない
ここまでくれば、真剣に考えざるを得ません。
それには、まず感染についての正しい知識と予防法を知ることが肝心です。
ハイルマニイの主な感染経路
犬を飼っていることが唯一の危険因子?!
ハイルマニイの感染について、専門家からは「主に犬や猫といった犬を飼っていることが、今現在考えられる唯一の危険因子」とも指摘されています。
犬以外には、豚などの家畜も感染源とされていますが、都市部や一般家庭ではやはりとの接触をメインに考えて予防に努める必要があります。
様々な感染経路
その1 口から
最もダイレクトな感染経路。口の周りを舐められたり口移しで食べ物を与えるなど、特に粘膜と粘膜が触れるほどの接触が、感染率を高めるそうです。
犬が飼い主の口をなめるのは愛情表現のひとつ。飼い主側もつい嬉しくて許してしまいがちですが、その習慣は本気で改める必要がありそう!
その2 食器や食べ物などから間接的に
ハイルマニイは直接犬とキスしなくても、間接的に唾液によって感染することもあるため、
- 犬と同じ食器を使わない
- 食器を洗うスポンジも人間用とは分ける
- 犬にかじられたりなめられたりした食べ物を口にしない
などが大切。
その他、犬とおもちゃで遊んだ後も、おもちゃを触った手を洗う以外に、そのおもちゃ自体もしっかり洗って除菌しましょう。洗う際には水洗いではなく、石けんや洗剤を使ってよく洗うことが大切。
その他、菌に感染した人が他の人とキスすれば、その人も感染するおそれがあるなど、人から人へも感染するおそれがあることも知っておきましょう。
その3 排泄物から
口からの感染に気をつけても、さらに肝心なのが排泄物の処理。これも処理した手で食べ物に触ったり食べたりすることで、口から菌が入る可能性があります。
また、ハイルマニイに感染した犬の排泄物にたかったハエが、食べ物にたかることで菌を運び、さらにそれを人が食べて感染ということも考えられるそうです。
排泄物の始末は、犬を飼っている以上、絶対に避けて通れないこと。日常的なことだけに、以下の点について予防を心がけたいものです。
- 排泄物はできるだけ早く片付ける
- 吐いたものやフンを片付ける時には、素手ではなく手袋をする
- 手は水洗いだけでなく、石けんや除菌ハンドソープでしっかり洗う
- 粗相の跡もしっかり除菌する
環境によってリスクが高まるケースもある
犬と暮らす環境そのものによって、感染リスクが高まるケースもあることを知っておくことも大切です。
特に狭い環境での飼育や何頭も犬を飼っている場合は、それだけ人が犬の唾液に触れたり、周囲のものに付着する可能性も高まります。
- 複数頭の犬を飼っている
- 小さい子どもがいる
- 免疫力の低いお年寄りがいる
- ワンルームなど飼育環境が狭く、人と動物が殆どのスペースを共有している。
以上のようなことが当てはまる場合は、リスクをよく理解した上で、衛生にはさらに気をつける必要があります。
小さい子どもの感染に注意!
小さいお子さんは、以下のような点から特に感染しやすいと言われています。
- 免疫がまだ不完全で胃酸も弱いため、細菌に感染しやすい
- 犬や猫を見るとすぐに触りたがる
- 色々なものを口に入れたがるので、動物の唾液がついたものも口に入れるかもしれない
年齢が低いお子さんほど、そばで大人が見守り、顔や口周りをなめられないように気をつけ、その後はきちんと手洗いを見届けるなどして、予防に努めましょう。
まとめ
実は、このニュース、発表された時点で、見出しだけは目にしていたのですが、何となくスルー。様々な研究が進むほど、色々なことが分るのは良いけれど、「ちょっと神経質すぎない?」なんて思ってたのです。
でもこうして記事を書くにあたって調べてみたら・・・冷や汗。
朝の目覚めのハイテンションで、寝ている私の顔に口から突っ込んでくる2匹の愛犬。
許すも許さないも、勢い余って、いきなり口の中に舌を突っ込んでくるなんてしょっちゅうです!
おまけに犬2匹に猫1匹。毎日がトイレの片付けに始まりトイレの片付けに終るという日々。トイレを片付けている間に、うっかりテーブルの上の、私のおやつをなめられる・・・。
うわぁぁぁぁ、ただでさえリスクは3倍なのに!!!
と、ここで記事を書く間中、ある人物のことが頭を占めていた・・・。
それは、かの有名なムツゴロウ氏。テレビの中で、犬やら狼やら、あらゆる動物に口の中までなめられてたお姿が忘れられない。ムツゴロウ氏、ご高齢ですが今もお元気に活躍されてます。
だからと言って、「なーんだ! 大丈夫じゃん!」っていうわけにはいきませんが。
必要以上に怖がる必要はないと言えそうですが、犬と暮らす日常では、ついつい色んなこと、いい加減になっていってしまいがち。
でも、やはり衛生に気をつけることは必要。注意事項を見直すと、考えてみれば当たり前のことばかりです。「犬は家族」と言っても、犬は犬、ヒトはヒト。境界線はしっかり守らないといけないですね。
ユーザーのコメント
10代 女性 にーちぇまま
30代 女性 りお
我が家のわんこは口は舐めないのですが、他の注意点など勉強になりました。
確かにムツゴロウさんは大丈夫そうだ!と納得してしまいましたが(笑)日常でも私も気をつけようと改めて気を引き締めました。
30代 女性 チャッキー
可愛がる方法として、目を見て撫でてあげたり、マッサージしたり、色々とあるので、そういった方法で愛情を表現したいと思います。
20代 女性 さーこ
私も愛犬が可愛くて、よく愛犬の顔に顔を埋めています。病気になるのは怖いですが、口の中に愛犬の舌が入る経験はしたことありませんし、周りの愛犬家の人たちも犬に口の周りを舐められても病気になっている人はいないから、私はそこまで敏感にならなくて良いのかなぁと思います。
もちろん、小さな子どもやお年寄りは注意した方が良いのかもしれませんが、短時間だったら犬の愛情表現として私は受け止めます。
20代 女性 こめこ
愛犬とのキスやペロペロは我が家でも頻繁にあります。そして排泄物の始末はもちろん、愛犬をベッドに上げたりしていることを考えると、ピロリ菌やハイルマニイの感染リスクは高いと言えるでしょう。
ただ、犬を飼ったり、動物のお世話をしている人に胃がんが多い、ということではないはずです。この記事の筆者の方のまとめにもありましたが、もちろん衛生への意識は大事だけれど、この研究結果がすべてではないということだと思います。
女性 ハル
とはいえ、犬は愛情表現で人の顔を舐めたがります。それを大好きな飼い主さんに拒否をされると、犬だって悲しい気持ちになってしまいます。あからさまに拒否をするのではなく、撫でてあげたり優しく接しながらかわしてあげたいです。
胃がんについては初めて知りましたが、犬や猫の口の中にいるカプノサイトファーガ属菌によって、日本でも高齢の方が感染したという例は聞いたことがありました。厚生労働省のHPにも詳しいことが出ていました。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html
やはり、高齢の方がかかりやすいようです。
女性 Kiss