犬の顎の特性とかかり得る病気について

犬の顎の特性とかかり得る病気について

強靭な力を持つ犬の顎。犬達は、私達が手を使うように口を使う為、その顎に人間とは比べものにならない力を持っています。そのように、犬は硬いものを噛んだり砕いたりすることができますが、どんなものでも与えて良いというわけではありません。つくりは人間とは違いますが、日常の不適切な行動により、人間と同じような病気になることも。この記事では、犬の顎についてその構造やかかり得る病気についてご紹介します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬は口をよく使う

犬は人間と違い、日常生活で手よりも口を多く使います。スリッパを咥えて持ってきたり、お気に入りのおもちゃを噛んでみたりと、物を運びたいとき、どんなものか確かめるとき、口を使って動作を行います。

これは、犬の手脚が走ることに特化した進化をしており、物を掴むなどといった繊細な動きができないためです。犬は口を使い、その強い顎の力で固いものを齧ったり、肉を食べたりします。犬にとって口を動かし強力な力を持つ顎の働きは、生きる上で非常に重要なものなのです。

しかし、その重要な顎には病気を発症する可能性もあります。ここからは、犬の顎について、その働きや病気についてご紹介して参ります。

犬の顎

口を開けた犬の顎アップ

顎の力

硬いおもちゃをどんどん齧ってしまうように、犬の顎の力はかなり強靭。その力は、小型犬でも100kg、大型犬では160kg以上にもなると言われています。これは、上顎と下顎をつなぐ関節を支える咬筋という筋肉が働くため。咬筋は、かなり収縮性に富む組織なのです。もともと肉食である犬にとっては、この筋肉の発達は必然であったといえます。

顎の動き

犬は顎の関節を左右に動かすことはできません。人間の顎は左右にもやや動くため、咀嚼するときに上下運動に加え左右の動きを交えて物を噛みます。それにより、私たちは食べた物をより細かくして、体内に飲み込むことができます。しかし犬はそれができないため、物をあまり咀嚼せずに飲み込んでしまうのです。

犬の顎に関する病気

獣医師に口の中を診察されている犬

顎関節症

顎関節に異常が生じ、痛みや口が開かないなどの障害が出る病気。

  • 症状:口が開かない、物を噛まなくなる、物を食べなくなる、口を開けるとパキッと音がする etc.
  • 原因:硬すぎるものを齧るなど、顎関節に負担がかかることが原因

痛みが出るため、動物病院にて治療が必要です。

唾液腺嚢腫

唾液が皮下組織に溜まり、顎や喉、口腔内に腫れが生じる病気。

  • 症状:患部の腫れ、嚥下障害、物を食べないetc.
  • 原因:外傷や炎症、感染症が元となり、唾液腺や唾液管が傷ついたために起こる

根本的治療のためには、外科手術が必要となります。

咀嚼筋炎

物を噛む際に使う咀嚼筋に、痛みや腫れが生じる病気。

  • 症状:物を食べない、よだれを大量に垂らす、口を開けない、発熱、目が窪む etc.
  • 原因:抗体やウイルス感染による咀嚼筋の炎症が主な原因。

咀嚼筋炎の治療は免疫抑制剤で行います。回復するまでは流動食などで栄養を補助します。

まとめ

おやつを噛むボーダーコリー

犬の顎の働きと病気についてご説明しました。上記の病名は一例であり、犬の顎に起こる病気は数多くあります。中には口内環境が原因となるものも。

犬にとって噛むことはストレス解消になるので、硬いおもちゃやおやつを与える飼い主さんも多いでしょう。これらは、犬にとって嬉しいアイテムでもあります。そのときに重要なのは、その犬にとって適したサイズ、硬さのものを選び、噛んで遊ぶ時間を管理しておくこと。硬すぎたり、あまりに長い時間、与えすぎたりすると顎に負担がかかります。

また、引っ張りっこやじゃれ合いで遊んでいる際に、おとなしい犬でも勢い余って人間に噛み付いてしまうこともあります。先述のように犬の顎の力はかなり強いので、常にそのことを頭に置き、特に小さなお子様が遊ぶ場合には注意しておくことも必要です。

犬の体の特性をよく知り、適した対応を行っていきましょう。

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