犬にも見られることのある聴覚障害。聴覚は犬にとって大きな役割を担う器官であるため、それがないという事は日常生活での不便を伴います。また聴覚だけの問題ではなく、すぐに治療を必要とする他の大きな病気を抱えている場合も。
しかし聴覚に異常があることに飼い主が気付くのは難しく、発見が遅れることもしばしばあります。早期発見のためには、犬の聴覚障害についての知識を、飼い主が持っていることが必要なのです。ここからは犬の聴覚障害について、症状や原因、対応などの点から詳しくご説明いたします。
聴覚障害とは?
聴覚障害を持つ場合は音が聞こえにくいという状態と全く聞こえない状態とがあります。外から受ける音や声の情報を、大脳に送るための器官に障害がある状態です。
その障害は、耳の最外部の外耳、鼓膜や耳小骨などから成る中耳、半規管や内耳などから成る内耳、聴覚を主に支配する聴神経(内耳神経)のいずれかにあることが多く、中耳以降である可能性が高いです。
犬と聴覚
犬は生後3週間ほどから音を聞けるようになります。犬の聴覚は非常に鋭く、遠くで聞こえる物音でもよく聞こえています。その聴覚は人間の3~4倍はあると言われ、犬の生活の中で大きな役割を果たしています。
また幅広い周波数の音を聴くこともできます。高い音は特に聞こえやすく、犬笛が活用されるのもそのためです。更に音源の察知能力にも優れています。
犬の聴覚障害
症状
犬の聴覚障害は飼い主には気づきにくいものです。症状としては以下のようなものが挙げられます。
- 呼んでも反応しない
- 訳もなく鳴く事が多い
- 眠っている時に大きな音がしても目覚めない
- 背後から触ると驚いたり怒ったりする
上記は一例であり、個体によって差があります。また症状の度合いにも差があり、聞こえにくいケース、全く聞こえないケース、片耳だけが聞こえているケースなどがあります。片耳だけが難聴の場合は、飼い主が更に気づきにくく対応が遅れることが多いのです。
原因
聴覚障害には、先天性のものと後天的なものがあります。
先天的なもの
先天的な聴覚障害は、耳の器官の発達不良や変性によるもので、治療で治すことは困難です。遺伝子的なことが原因とされ、ダルメシアンやブルテリア、シェルティーなど、特定の犬種に比較的多いとされています。
先天的に耳が聞こえない個体は音のない世界しか知らないため、特に不自由を感じていないようではありますが、リスクを管理し、適した対応が必要です。
後天的なもの
後天的な聴覚障害の原因は様々であり、加齢による聴力の衰退、または病気によるものもあります。外耳炎や中耳炎のように直接的な耳の病気での場合もあれば、腫瘍や外傷による脳の異常を発端としている場合もあります。そういった場合は、速やかな根本治療が必要となります。
また徐々に聴覚が失われていく場合、犬自身は今まで得ていた多くの情報が失われ、飼い主の声も聞こえにくくなり、不安やストレスを感じます。そのため飼い主に依存することや、異常行動が見られることもあり、精神面の丁寧なケアやフォローが必須です。
犬への対応
聴覚障害の犬へは適切な対応が必要です。事故や怪我など、耳が聞こえないことによるリスクに注意し、飼い主が守ってあげなければなりません。また躾やコミュニケーションには、アイコンタクトを用います。声や音は聞こえないという事を念頭に、犬の立場になって見やすく理解しやすい指示を出しましょう。
視覚と嗅覚は使うことができるため、大きな身振りやおやつをうまく使用すると良いでしょう。指示を覚えさせるのはかなり難しい部分もありますが、根気強く気長に行いましょう。叱りつけたり放置せずに思いやりをもった対応をしましょう。
思いやりをもった対応
犬の聴覚障害について述べて参りました。上記のように、この障害は治療が難しい場合も多いでしょう。耳が聞こえる犬よりも手がかかるかもしれません。
しかし犬が飼い主を慕う気持ちや楽しい事をしたいという気持ち、褒められると嬉しいという気持ちは同じです。大切な事はとにかく思いやりをもって接する事です。
驚かせず、躾はゆっくり犬のペースで行いましょう。後天的なものならすぐに治療を、先天的なものはその子の個性として受け入れ、共に不自由ない生活をしていきたいですね。