身近に潜む恐ろしい感染症、犬の破傷風について

身近に潜む恐ろしい感染症、犬の破傷風について

身近な土壌に潜み、痙攣や呼吸困難を引き起こす破傷風。犬にも危険性のある感染症です。破傷風を避けるには、予防について知っておくことが何よりも大切。この記事では、そんな破傷風についてご紹介します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

破傷風という感染症をご存じでしょうか。
耳にしたことはあるものの、過去の病気だと思っている方も多いのではないでしょうか。
確かに昔に比べれば衛生面の向上などにより、破傷風の発症は減りました。
しかし、まだまだ私たちの身近に潜む病気なのです。

この破傷風は犬にも感染し、恐ろしい症状を引き起こします。
死に至るケースもあるため、飼い主さんがその原因や予防策を知っておくことが必要。
ここからは、破傷風についてその原因や予防策も含め、詳しくご説明していきます。

破傷風とは?

破傷風菌

破傷風とは、破傷風菌による感染症のこと。
菌が持つ神経毒素により神経に障害を引き起こしたり、筋肉に痙攣を引き起こしたりします。
最悪の場合は、死に至ることもある感染症です。
この破傷風菌は環境の変化に強く、私たちの身近に潜んでいるのが恐ろしいところ。
人獣共通感染症法という、人にも動物にも共通する病気であるため、当然ペットにも注意が必要となります。

破傷風の原因

犬と一緒にガーデニングを楽しむ女性

破傷風の原因となるのは、土壌に潜む破傷風菌です。
これが人間や動物の傷口から入ることにより、感染します。
人間や動物同士での感染はありません。(口の中に破傷風菌を持っている動物に噛まれた場合は、感染の可能性があります。)
人間の場合は、ガーデニングや砂遊びなどの際に注意が必要ですが、犬の場合は毎日の散歩に危険性が。
直接地面に足をつけて歩く犬にとっては、菌が潜む可能性のある土との接触は避けられないものです。必ず、犬の脚を中心に傷がないか確認してから外出するようにしましょう。
また、確認しても見つけられないような、ごく小さな傷がある場合もあるので、土遊びや泥遊びなどは避けた方が安心でしょう。

破傷風の症状

過敏になって吠える犬

数日から2か月弱の潜伏期間を経て、症状が出始めます。
あらゆる筋肉がこわばるようになるので、口を開けたり物を食べたりするのが困難になったり、全身に痙攣が出たりします。
呼吸器に関連する筋肉に症状が出ると、呼吸困難を引き起こすことも。
これにより死亡するケースが多いとされます。
また、音、光、振動といった外部からの刺激に対して非常に敏感になり、これらの刺激で痙攣や筋肉のこわばりといった症状が悪化する場合があります。

  • 顔や身体のこわばり
  • 痙攣
  • 目の陥没
  • 刺激への過敏反応
  • 呼吸困難

破傷風の治療

獣医師に診察されている犬

投薬により毒素を中和したり、鎮静剤などで痙攣を緩和させたりといった治療があります。
呼吸器官関連の筋肉に症状が出ると死亡のリスクが高まるので、異変を感じたときにはすぐに動物病院へ。早期発見・早期治療が求められます。
すぐに診断、治療をおこない反応すれば、完治までには4週間ほどかかります。ただし、完全に回復するまでにはもっと長くかかる場合も多くあるようです。

破傷風を予防するには

ブラッシングして犬の体をチェックする女性

先述のように、破傷風の原因は傷口からの感染。
擦り傷などのごく小さな傷からでも感染の可能性があります。
犬の身体をよく観察して、傷口や炎症がないか毎日確認しましょう。
傷があった場合は、その部分を保護して地面につかないようにしたり、散歩を休んだりするなど適切に対応してください。

また、術後の散歩の場合は、ガーゼや包帯、ウェアなどで保護しましょう。
帰宅時には、身体を清潔にしてあげることも大切です。
人間は破傷風ワクチンを幼少期に予防接種している方が多いですが、犬用の破傷風ワクチンはありません。日頃からの予防が大切です。

  • 傷口を地面や土に触れさせない
  • 傷口を保護する
  • 身体を清潔に

犬の破傷風についてご説明しました。
小さな傷でも感染の可能性があるので、足の裏を中心に愛犬の身体のチェックを毎日怠らないようにしましょう。
また、犬に噛まれた傷口が土壌と接し、人間が破傷風に感染する例もあるので、飼い主さんも十分な注意が必要です。

まとめ

散歩中に飼い主と見つめ合うビーグル犬

破傷風は死の危険を伴う非常に恐ろしい病気。
愛犬のためにも予防策をきちんと行い、健康な毎日を送ることのできるよう努めましょう。

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